第7話 初陣
攻防は今だに続いていた。しかし、度量は明らかに相手の方が格上なために、ベイルは徐々に精彩を欠き始めていた。
「よく持たせたな、青二才!だが、俺の方が一枚上手のようだ!」
男はそう言って、ベイルに鋭い一撃を喰らわせていた。
ベイルはヴェイル•カサターンで、攻撃を防ごうとしたが力が入り切らずそのまま弾き返されてしまった。
「しまっ!」
ベイルは思わず、そう呟いていた。
男はここを勝機と見たのか、先を見計らって一撃を喰らわせようとしていた。
しかし,その攻撃は乱入者によって阻止された。
「誰だ、貴様は!?」
突然の乱入に男もベイルも驚きを禁じ得なかった。
それはアリアスだった。アリアスのもつ双剣を重ねてなんとか攻撃を防いでいた。
「うちらの大将をやらせてたまるかって話だ」
アリアスはそう言ってその攻撃を弾いた。
そして、ベイルもまた体制を立て直し攻撃を開始していた。
三者が斬り合う中でその大将である、フリオスはその光景を眺めていた。
「よろしいのですか?このまま加勢せずに?」
兵たちはフリオスに向かってそう提言を重ねていたが、フリオスは聞き入れなかった。
「これからは若者の時代だ。二人の勇姿をとくと目に焼き付けようではないか」
激しい攻防戦は衰える素振りを見せなかった。
男が大鎌を振るい、アリアスがその攻撃を防ぎその隙にベイルが一撃を喰らわせようとしていた。
しかし、男は衰えるどころか尚も戦意を高揚させており持久戦となっていた。
「はっはっは、私に素直に斬られよ!」
しかし、男も人間であるために少しばかりは注意力が散漫になっていた。
そこで、ベイルとアリアスは最後の悪あがきで猛攻に走っていた。
「うお!」
その攻撃に対して男も流石に全てを捌ききれなくなっていた。
徐々に馬から落馬しそうなほどに、男の体は後ろのメリになりつつあった。
そして、ベイルはヴェイル•カサターンをここぞとばかりに鋭い一撃を喰らわせていた。
大鎌の刃が二つに割れたかと思った矢先に男も、地面へと落馬した。
悔しがる様子を見ながら、アリアスが双剣を持って首筋に剣を当てていた。
その瞬間、仲間たちは叫喚の嵐に巻き込まれていた。
強者を制したことで下がり気味だった士気は回復の兆しを見せ始めていた。
ベイルとアリアスの最初に手にした戦果だった。
ベイルは、縛られたその男に近付いていた。今すぐにでも殺されるような状況に陥っていても、男は鼻歌を歌っていた。
「おぉ、さっきの坊やじゃねぇか。敗軍の将になんの要か?」
男はいまだに挑発した態度を取っていた。
その態度に対してもベイルは好印象を受けていた。
「お前、悪いやつじゃなさそうだな」
ベイルはそう答えていた。
「はぁ?俺は人斬りだ、赤日隊だぜ?とんだ、坊やだな」
男はそう呆れていた。しかし、突き返す様子もなかった。
「ベイル!そいつに何の用があるんだ?」
アリアスも合流していた。
「俺は、こいつを仲間にしたい。どうだろう?」
ベイルは本心を吐露していた。
アリアスはその言葉に耳を疑っていた。
「何言ってんだよ?あいつは敗軍の将だ。それに獰猛だ。飼いこなせるわけないだろ?」
アリアスの言っていることは正気そのものだった。
しかしベイルも引こうとはしなかった。
「賭けてみようじゃないか、俺たちはただでさえ旅路の最中さ、心強い味方は欲しいだろ?」
ベイルはそう答えていた。
するとその会話を聞いていただろう男は高らかに笑い始めていた。
「賊軍の俺を起用するとは…お前ら頭いかれてんだろ」
そう言っていた。
しかし、ベイルはその笑いには乗らなかった。
「俺はお前を信じたい」
ベイルの言っていることは全て、普遍的なもので構成されているが、必死な表情も相まってそれは心にくるものがあった。
「何だよ、神経質な顔しやがって」
男もそれに気付いてしまった為に何も言い返せないでいた。
「お前はお前の信じる道を行け、明日だ。明日、俺たちと行くなら俺たちの元に来い。待ってるぞ」
ベイルはそう告げてその場を後にしようとした。
「おい!」
男がベイルを呼び止めていた。
「何だ?」
ベイルはそう質問していた。
「お前、名前は?」
男はそう聞いていた。
「ベイル•アステッド、年は23だ」
「俺はディン、ディン•バーレイル。年は22だ」
ディンはそう答えていた。
ベイルはそれを,聞くと思わず笑ってしまった。
「その風貌で、俺よりも年下か…」
ベイルはその唐突とした事実に対して、笑いが込み上げていた。
「まじか!」
ディンはそう言って笑っていた。
ベイルもまた、その声に釣られて笑みを浮かべていた。
「分かった、ベイル。お前みたいな気持ちのいい奴に俺は使えるべきだった。今からでも遅くねぇか?」
その答えに対して、ベイルは微笑みを浮かべていた。
「俺もお前のことが気に入った。共に叛徒を潰してやろうぜ」
その姿はディンにとって迫力のある様子に見えていた。
「そうだな…兄貴」
ディンは自然と、ベイルをそう呼んでいた。




