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ヴァルタニア戦記  作者: sk
叛徒討伐編 ヴァルタニア歴325~326年
5/15

第5話 義勇軍

失意に満ちた男たちは戦場へ向かう

ベイルは、翌日母の遺体を家の庭に埋めていた。

涙はすでに枯れて、残ったものは虚無感しかなかった。

簡易的な墓しかできなかったが、そこでベイルは座り込んで手を合わせていた。


「お母さん…遅くなったけど、決心がついたよ。俺は赤日隊の暴挙を許さない。俺は、平和な世の中を作るために乱世に飛び込むよ。どうか、父さんたちと一緒に見守ってくれ」


そう告げて、ベイルは家を後にしていた。

ベイルはラピドールに降りて、人々はベイルの様子がただ事ではないことは承知していた。


「ベイル…何かあったのか?」


街の人々からそんな声が多く聞こえてきた。


「俺の母が、先日赤日隊に殺されました…」


その事実を聞いてあたりの空気が急速に冷え切っていった。

ベイルは続けていた。


「俺は、義勇軍を作りたい。俺は、もうこんな思いを誰にもさせたくないんです」


そのベイルの言葉に共感する男が声をあげた。


「お前もわかったか?この憎しみがこの憎悪が」


その声の方向に視線を移すと、そこにはアリアスの姿があった。


「アリアス…」


妙に懐かしくさえ、ベイルは感じ始めていた。

アリアスはその姿を見て、同情するような仕草を見せていた。


「そうだよな、ベイル。もう、赤日隊には懲り懲りだよな」


アリアスはふっと笑みをこぼしていた。

すると、大声で町中の人々に語りかけていた。


「我らは今、乱世に生まれている。飢饉があり、叛徒共が利益を貪りゆく世界に我らは生を受けた。だが、そんなことで落ち込むな!戦士たちよ、戦う準備のある誇り高き戦士たちよ!我らと共に、義勇軍に入り叛徒共を根絶やしにしようではないか!」


アリアスは、人々を先導するのが上手かった。

そして、ベイルもそれに続いた。


「我はベイル•アステッド!この剣を持つ限り、我らは打ち勝つ!混沌とした世界に光の刃を放とう!」


そして、ベイルは天性の人徳者であった。

すると、辺りから仲間になりたいという若者たちが続々と声をあげていった。

徐々にその数は多くなっていき、数は1500にまで膨れ上がっていった。

その人々に対して、ベイルは涙ぐんでいた。

人々はまだ、希望を捨ててはいない。

人々はどんなに辛い境遇にあっても、生き抜き立ち上がることができるんだということに!


すると、街の人々も忙しくなっていった。

ベイルは何事かと思い、人へ人へついていった。

そこでは、馬を貸し出してくれる人もおり、剣や弓を提供してくれる人々もいた。

その好意に感謝しながらも、なぜベイルは自分のような若者にここまでしてくれるのかを質問していた。


「いつも、ベイルには助けられっぱなしだった。その恩返しだよ」


人々は口を揃えてそう答えていた。

その自身に対する恩威に深い感謝を申し上げて、ベイルは出陣の機会を伺っていた。


「ベイル、お前が隊長だ。俺は副隊長をやる」


出陣前夜、アリアスは唐突にそう口を開いた。


「なんだよ、俺が俺がとあんなに言ってたじゃないか」


ベイルはそう反論していた。


「いや、最近のお前を見ているとお前は人の下についているべき人間じゃない。俺たちを、人々を統べる人間のような感じがしてきたんだ」


アリアスはいたって真剣だった。

その視線にベイルは軽い恐怖を覚えていた。

しかし、ベイルは隊長の任を引き受けていた。


その翌日、ラピドールの街並みはベイル率いる義勇軍の出陣祝っていた。


「必ず叛徒たちを撲滅して、必ず戻って参ります。絶対に恩に報います!」


ベイルは、出陣する前に陣頭でそう高らかに宣言していた。


「俺たちに、もう怖いものはありませんよ!どうかご心配なさらずに」


そんな下手な冗談をアリアスが、挟み辺り一体の空気は少しばかり和やかになっていた。

そして、出陣の時。

郷里に残す家族たちの別れを惜しむものたちや、恋人は別れを告げる人々が辺り一面に殺到していた。

その進む中で、ベイルはその中に母がいるような気がしていた。

ハッとして、そこを振り返ってみるがそこには当然、いるわけもなかった。

お母さん、先祖の名に恥じぬようベイルは頑張ります。

そして、ベイルは腰に携えていたヴェイル•カサターンを引き抜き掲げていた。

その刀身の輝きによって、群衆や義勇軍は活気に満ち溢れていた。


「我ら、義勇軍!見た目はつぎはぎなれど、心は常に正義を貫く!」


ベイルは、そう声をあげてラピドールから旅立った。


青年たちは乱世に飛び込み始めていた。

ヴァルタニア歴325年、10月のことである。

「王都炎上事件」

本作2話であった赤日隊への義勇軍結成を呼びかけるきっかけになった事件。王都の三分の一が焼け落ちてしまい復興に時間がかかるようになってしまっていた。

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