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ヴァルタニア戦記  作者: sk
叛徒討伐編 ヴァルタニア歴325~326年
4/22

第4話 喪失

ベイルの進む道とは

翌日、目が覚めたベイルは起きてすぐに剣を、ヴェイル•カサターンを手に取っていた。

外に出てさやから剣を抜いて思うままに振りかざし始めていた。

昨日の話を聞いたからなのかはわからなかったものの、自身にしっくりくる感触がありどんなものでも切れそうな感触があった。

何十合か素振りしていたが、流石に体力が限界に近づき思わず家の前で寝っ転がっていた。

ベイルは、寝転がりながらヴェイル•カサターンをまじまじと眺めていた。

ヴァルタニアの血が俺に流れているのか。

そう思うと、得体の知れない高揚感が占めていくがそれと同時に意気消沈してしまう気持ちもあった。

ヴァルタニアの末裔がこの体たらくときたら、先祖たちも落胆しているに違いない。

そう思うと、ベイルは思わず苦笑を浮かべていた。

だとしても、剣一つあったところでなにも変わることはない。

王族の血を引いていたとしても、俺はこのまま肉体労働をして死んでいくだけなんだ。

なんだか、とても暗い気持ちになってしまい昼に母と二人で街に降りようと考えていた。


ベイルとその母は山奥から下に降りて少し歩いたところにある街である、ラピドールに足を運んでいた。


「いつ来ても繁盛しているな」


ベイルは人混みの中でそう呟いていた。


「おお、ベイル!前は店の手伝いしてくれてありがとな」


「あら、ベイル。こないだ、買い物に付き合ってくれてありがとね」


いたる店に訪れるたびに、ベイルは感謝の意を浴びせられて思わず顔を赤くしていた。


「本当に、いい子に育ったものね」


母も思わず笑みを浮かべていた。


「俺はこれくらいしかできないから…」


ベイルは素直にそう答えていた。

そうして、二人は店を行ったり来たりして食品や着物などを買って帰路に着こうとしていた。

辺りはすでに暗がりを見せつつあった。


「お母さん、先に帰っておいてくれ。俺、手伝わなきゃいけないんだよ」


ベイルはそう答えていた。


「そうかい、じゃあ無理せずにね」


母は優しくそう言ってくれていた。

そうして二人は別れていた。


「それにしても、ベイル。お母さんが大事なのは美徳だが、この街から出たいっていう気持ちはないのか?」


店を手伝う中で、ベイルはそんな質問を不意に受けていた。


「出たいという気持ちもなくはないですよ、ただ、母が心配なんですよ。たった一人の家族を一人にしていけるほど自分の心が強くないのは知ってますから」


ベイルはそう答えていた。


すると、辺り一面にドッドッドと揺れ始めていた。

何事かと思い外を見ると、街の通り門の奥になにやら蠢く影が見えた。

旗には赤日隊と描かれていた!


「赤日隊が来た!赤日隊が来た!」


その叫びに釣られて、辺り一面悲鳴の嵐になっていた。

そして、先程まで楽しく談笑していた人々は無慈悲にも斬りつけられ、命を失い街並みは平穏さを失っていた。

ベイルは、物陰に隠れて歯を食いしばっていた。

しかし、腰を触れてみると前とは違ってそこにはヴェイル•カサターンを携えていた。

牙を向けるのは貴様たちだけではない、貴様らにむける牙もあるのだ!

ベイルは、投げれて重い石を取り繕ってそれなりの騎馬が来るまで隠れていた。

そして、好機を見計らって後ろから赤日隊の一人の頭に石をぶつけて落馬させていた。

その瞬間にベイルは、走り出し馬の元へと跨った。

最初は暴れていたものの、ものの数秒ですぐに落ち着いていた。


「我は、ベイル•アステッド!悪鬼ども、覚悟せよ」


そう威勢よく叫ぶと、ベイルは馬を走らせ赤日隊に斬り込んでいた。

相手は剣を振るうものの、迫り来る速さとヴェイル•カサターンの活躍によって瞬く間に数人が屍と化して行った。

しかし、その攻撃も一人の暴徒によって阻止されてしまった。


「やるな、青二才!」


そう叫ぶと大ぶりな剣を、ベイルに向かって斬り掛かっていた。

しかし、ベイルは剣を滑り込ませるようにして軌道を逸らして、相手の隙を作らせた。


「!?」


驚く間も無く、暴徒も斬られ落馬していた。

赤日隊は、たった一人の貧民によって足止められていた。


「貴様、ただでは済まさんぞ!」


そう言い残して赤日隊は、兵を引き上げていった。

引き上げていった後にベイルは、街の人々から称賛の声を浴びせられていた。

そんな声を聞きながらベイルは、母のを案じて人々を跳ね除けて一目散に向かっていった。

馬に跨って、山奥へと駆け抜けていく。

お母さん…!

はやとちりしそうな感情が込み上げてくるが、それをなんとか抑えつつも足を速めていた。

しかし、希望は打ち砕かれた。

先ほどまでは暮らしていた家は荒らされており、半壊している。

そこには、赤日隊のはちまきが散乱していた。

その状態を見て、ベイルは母の身を案じて馬から素早く飛び降りていた。


「お母さん!」


ベイルはそう大声を挙げていた。

家に入ってあたりを見回していた。

しかし、人の気配は見当たらなかった。

そこで、ベイルは裏口へと向かっていた。


「嘘だろ…」


ベイルは、そう静かに呟くしかなかった。

母は体を失い、首だけになっていた。

髪は剃られて、生気のない瞳も相まって人形のようにしか見えなかった。

これが、お母さんなのか?

これが、これが、これが…

ベイルは、その首を持って抱きしめていた。

そして、一人慟哭した。

こうして、ベイルは家族を全て失った。

ラピドール

ベイル•アステッドの出身地。ヴァルタニア全50群に別れる地域においても北方に位置する。中でも商売が多く盛んであり、商業の中心的な群の一つである。

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