第32話 立志
ベイルとユリウス、ミリアは西門に足を運んでいた。
ユリウスの目論見通り、ここには兵の姿は比較的少なかった。
ユリウスは馬を借りてしばらく旅に出るとだけその兵たちに言っていた。
兵たちはまだ伝令が来ていなかったのか、拍子抜けするほど容易く通行を許していた。
三人が共に門を通り過ぎた瞬間に、三人は胸の奥から息を吐いていた。
「何とか間に合いましたね」
ユリウスはそう笑みを浮かべて呟いていた。
ベイルもまたそれに呼応したものの、顔は浮かばれない様子であった。
「…知り合いですか、先ほどの人は?」
ミリアがベイルを宥めるかのようにそう答えていた。
ベイルはその気遣いに感謝しながらも、いいえとそっけなく答えるしかなかった。
それ以来、ベイルは落ち着きフリオス将軍の元へ参上しようという提案に行き着いていた。
森を通り、街を通る中でベイルは人の世の悲しみについて考えていた。
ベイル自身にとって、大切なものは何か?
それは、かつて共に戦ったが今では離れ離れとなってしまった友のことを指していた。
ベイルは近いうちにでも自身の翼とも呼べる友と再会を果たそうと考えていた。
しかし、それはまだ先の話であった。
数日の時を経て、ベイルらはフリオス将軍の元へ帰還を果たしていた。
「アステッド殿、ご無事で何よりだ」
フォーレはベイルの肩を叩きながらそう言っていた。
「このように無事に帰れたのも、全て彼のお陰です」
ベイルはそうすると、後ろに控えていた男に対してそう促していた。
男はフォーレに軽く一礼した。
「初めてお目にかかります。私はユリウス•メイスと言う者です」
そう聞くとフォーレは思わず息を呑んだ。
「策謀の達人と聞いていたが…まさかこのような形で出会えるとは、私にとっても過分なほどの喜びだ」
フォーレはそう言うと、ユリウスの手を取っていた。
「あの、ユリウスが叛徒に混ざっただと!?」
キシルヴァにとって、それは大きな誤算だった。
まさしくも策謀の能力が大幅にうち減らされてしまったのである。
その状況を好ましく思わなかったのか、ディアスは,思わずため息を漏らしていた。
「閣下、ここはもう一戦交えましょう。まずは勝たねば」
ディアスの意見に対して、キシルヴァも了承の意図を表していた。
他の臣下たちも、それ以外に叛徒軍の勢いを止められないと思いそれに賛同していた。
キシルヴァはディアスに対してどこを戦場とするか決めかねていた。
「戦いは、リオスタニア州とペイロー州の間にある…グレゴット草原です」
後に第一次グレゴット草原の戦いと呼ばれるこの戦いは、後の戦いにおいても使われた場所である。
北西部にカイザー州、北部にスペリア州、北東部にアーレイ州、南東部にルールック州、南部にケイオス州、南西部にはヒューリ州。そして、その真ん中に位置するのが、リオスタニアとペイローである。ここを抑えれば、どの方角にも進軍できるという良点があった。
「よし、この際は戦いだ。皆のもの、心してかかれ」
ディアスの進言を聞いて、キシルヴァはそう号令を発布した。
つまり、大規模な勢力闘争が幕を開けると言うことと同等であった。
その戦いの最中には、アリアスらの姿も見られていた。
「また、戦いに駆り出されるのか…」
アリアスは戦いへの準備をしていたが、ふとそう呟いていた。
「どうした、アリアス?浮かない顔して」
パーシヴァルがそう心配してそう声をかけてくれていた。
「いや、やっぱりな…俺はベイルと合流したいと思ってな…」
「どうも、しまらねぇなアリアスは」
ディンはそう言って肩を叩いていた。
「俺たちはアンタとベイルの兄貴についていくと決めたんだ。今更くよくよしてちゃ、手に入れられるものでも手に入らなくなっちまうぜ?」
ディンの一言でアリアスはハッとしていた。
全てを成すためには、ベイルが必要と思っていた。
しかし、それは間違っていた。
今、目の前にいるパーシヴァルやディンがいてこその自分たちであると再確認していた。
アリアスはそうすると、ディンの額をコツンと叩いていた。
「ありがとうな、これで俺はまた前に進める」
アリアスはそう答えると席を立っていた。
ベイル、今俺たちはいくからな。
英傑たちは一同に集まろうとしていた。




