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ヴァルタニア戦記  作者: sk
傀儡愚弄編 ヴァルタニア歴330~335年
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第31話 逃走

ユリウスはそう言うとベイルの手錠を外していた。


「…良いのか?お前は一時的に叛徒の汚名を着るかもしれん。それでもいいのか?」


ベイルはそう危惧していたが、ユリウスはその発言を快く承諾していた。


「さ、さここは危ないですよ。まずは戻らないと」


ユリウスはそう言って裏口からの脱出を促していた。

ベイルはそこまでの恩義に感謝しながら、その方へと足を運ばせていた。

ベイルとユリウスは暗闇の街並みを人目を気にしながら歩いていた。

人々は皆、活気に沸いていた。

それを横目にしながら、ベイルは思わず呟いていた。


「いくら納める者が暴君でも、人の営みは変わらないな」


ベイルの発言に対してユリウスは、全くですとうなづいていた。

そして、ユリウスは最後にベイルにしばしの休息を告げて一目散に自宅へと駆け始めていた。

ドンっと大きな音を立てた為に、ミリアは目を見開いていたがすぐにユリウスだと分かると安堵したかのような表情を見せていた。


「お帰りなさい、随分と急いで来たのね」


ミリアはそう答えていた。


「ミリア…残念だけどしばらく会えなくなった」


その言葉にミリアは雷鳴が走ったかのように目を見開いていた。


「会えないって…仕事の話?」


「いや、違う…俺はアステッドさんにつく」


「アステッドって…エルドレイを落としたあの人に?」


「やっと会えたんだ。俺のことをわかってくれる人に、やっと会えたんだよ」


ユリウスはそう興奮していて半ば捲し立てていたが、彼女の冷めた顔を見て平常心を取り戻していた。


「…わかるよ、俺が無茶言ってるってことくらい。叛徒になることくらい…」


ミリアはその発言を聞いてユリウスの頰を叩いていた。

ユリウスが途方に暮れる中で、ミリアは話していた。


「私のことを置いていかないで…私はあなたについていくわ。それが、どんな道でもね…」


ミリアはそう涙ぐんでいた。


「ミリア…ごめん、俺の考えが悪かったよ」


そうして、ユリウスとミリアは抱きしめ合っていた。


「うまくいったんだな。よかったよかった」


ベイルは戸の前で監視を続けながらも、二人の様子を見て酷く落ち着いていた。


「改めて私はベイル•アステッドです。メイス夫人、以降お見知りを気を」


ベイルはそう一礼してユリウス、ミリアと共に暗い街並みに紛れていた。


「やけに兵の数が多いな…バレたのか?」


ベイルはそう吐露せざるを得なかった。


「そうでしょうね…ここは危ない、西門から逃げましょう」


ベイルはその意見に賛同してついて行った。

その最中で、思わず目を向けるほどに豪華な並びが目に入ってきていた。


「あれは?」


「あぁ…先日結婚した皇帝陛下とその妃様の凱旋ですよ。皇帝陛下がやりたがってたらしくて」


「そうなのか、相手は誰なんだ?もう陛下も御老体だ。嫁ぐのは一体?」


「確か…アレフシアという名前だったような気がします」


ユリウスの何と無くで言った言葉に対してベイルは思わず歩みを止めていた。


「アレフシアだと?」


「知り合いですか?」


「いや…」


ベイルはそう口を濁していた。

まさかとはいえ、彼女が嫁いでいたとは。

ベイルはその環境にあって胸が痛むのを感じていた。

ユリウスは口を開いていた。


「だとしても、キシルヴァの勢力がまた強くなる。彼女とは姻戚関係ですからね」


その言葉を聞いたベイルは思わず激昂した。

彼女の思いを踏み躙ることが、堪らなく自分にとって不快極まりなかった為であった。


「アステッドさん!」


ユリウスの静止を振り切ってベイルはその凱旋に近付いていた。

ベイルもまた既に29である。大人としてのわきまえを知っていたものの、まだ心は少年のものに違わなかった。

ベイルは見つかることを承知の上でも、たった一目だけでも彼女を見ていきたいという思いに駆られていた。

人並みを半ば力づくで押して行った。周りからは不快な声が後を絶たなかったが、そんなことは関係なかった。

見上げるような形となっているが、アレフシアは鮮やかな着物を着ていて、とても美しかったが表情は心なしか暗いような感じがしてならなかった。

その姿を見てベイルは彼女をここから連れ出したくなる衝動を必死に抑えていた。

ここでも、また己の非力さに涙を見せることしかできなかった。

そして、思わずベイルとアレフシアの視線は止まった。

ベイルはただ、唖然とするしかなかった。

彼女は驚いた瞳にうっすらと涙を浮かべていた。

その様子に一声上げようとした瞬間に、ベイルを名指しで追ってきた兵たちが後を絶たなかった。


「アステッドさん、急ぎましょう」


ユリウスはベイルの手を掴みそのまま引き離していた。


“ベイル!”


彼女の声にならない声だけが、ベイルの脳裏に鮮明と流れ込んできていた。

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