第30話 相見える
「ユリウス•メイスが脱走しただと!?」
キシルヴァはその報告を聞いて思わずたじろいでいた。
3日前に遡る。
ユリウスは職務を終えて家に着いていた。
「お帰りなさい」
ユリウスの妻であるミリアがそう答えていた。
「ただいま、ミリア」
ユリウスはそう言って微笑んでいた。
そして、二人は夕食をとっている中でミリアは夫の顔を見て思わず質問していた。
「どうかしたの?キシルヴァさんに使えてから、顔が優れないわね…」
ミリアの言動は的を着いていた。
ユリウスはそれに対して、思わず動揺を隠さないでいた。
「…この際、言ってしまおうか。俺はもう、キシルヴァ殿に使えるのは身が持たないと思っている」
そうすると、ユリウスは涙を浮かべていた。
「キシルヴァ殿の考えは俺と合わないんだ。このヴァルタニアにおいて、陛下よりも陛下らしい。俺はそれが許せないんだよ」
ユリウスはそこまで言うと項垂れていた。
「あなた…そこまで,思い詰めていたなんて…」
ミリアもまたどうしようもなくなってしまい、ただ静かに泣くしか無かった。
「やはり、其方もいくのか?」
フォーレは王都へ向かうベイルを見ていた。
「はい…どのような兵力を持っているのか偵察に当たりたく」
ベイルはそう言っていくらかの兵を連れて出発を果たしていた。
少しでも多くの任務をこなして信頼を得ようとしていたのだった。
そして、フォーレはその姿を見ながら内心少なからぬ脅威を感じ取っていた。
奴は、やはり俺に並々ならぬものを感じるな…
ベイルは、王都についていた。1ヶ月ほどの長旅であったがそれまでに開戦はまだしていなかった。
「ここか…」
ベイルにとってこの場所は感慨深いものがあった。
アリアスの兄夫婦が惨殺されたことで、そして自身の母が死んだことによって自身は乱世に飛び込んでいたのだ。
しかし、その旅から既に6年が過ぎようとしていた。
いまだに地盤すら持っていないために、ベイルはため息を着いていた。
そう思いながらもベイルは、王宮を見ながら兵力の確認や調査をしていた。
ベイル自体は、まだ何の影響力もなかったがかつての仲間たちの伝聞も合間ってベイル自体は好印象で迎えられていた。
しかし、その騒ぎに対してその場を偵察していたある騎士たちに捕まってしまっていた。
ベイルは、騒ぎを起こすことも出来ずに仕方なく連行されていた。
「其方か…何やら民に関心を持たせていた男は」
聞き取りとして、その相手にはユリウスが呼ばれていた。元来の彼は、この職である。
「いや、其方に対して不審な思いを煩わせたのであれば申し訳ない」
米はそう慇懃に答えていた。
ユリウスはその誠実さに感心していた。
「やけに、親切だな。名は?」
「私はベイル•アステッド。年は29です」
その言葉を聞いて、ユリウスは驚きを隠さないでいた。
「其方か?6年前、義勇軍を率いてエルドレイを落としたのは?」
「えぇ、そうですがこの通り。小汚い30半ばの男にしかすぎません」
ベイルは、そう言ってハハと笑っていた。
その行動に対しての誠実さと、表裏のない姿に対してユリウスは自身の使えるキシルヴァの影と重ねていた。
「いえ、あなたには人徳と言うものがあると聞きました」
「はい、そこは私が持っている他者よりは秀でている唯一のものです。ですが、それ以外は友人たちに助けてもらっているばかりで…」
ユリウスはその清廉な態度に涙を浮かべていた。
「待機兵たちを下がらせよ」
ユリウスの号令で、兵たちはいなくなり二人だけとなった。
「実は、私はあなたを試していたのです。かつて、ディアスによって言われた貴方の本心を見ようと画策していました」
ベイルはその姿を見て息を呑んでいた。
「一体、どうなされました?」
「わたしは常に人による君主を探していましたが、今はっきりとわかりました。貴方に着いていきたいと、思ったのです」
「!」
ベイルはその言葉を聞いて涙を浮かべていた。
あぁ、天よ。俺には、まだ見捨てられちゃいないと
「俺はそんな立派じゃない。だけど、其方の言う通りだ。俺にとっての大義がなんなのかはわからないが、このキシルヴァだけは討たねばなるまい。一時は叛徒としての、汚名に耐えることになるが…それでも俺に着いていくか?」
ベイルの言葉に対して、ユリウスは檻の鍵を解いていた。
「もちろんでございます。ぜひ、若輩のわたしを連れて行ってください」
そうして、二人は手を取った。
ベイルは、アリアス、パーシヴァル、ディンに次ぐ新たな剣を持った。
後に六神将と呼ばれる者たちのうち、五人が出揃っていた。




