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ヴァルタニア戦記  作者: sk
傀儡愚弄編 ヴァルタニア歴330~335年
30/32

第29話 己が叛徒

ベイルはフォーレ軍における一部隊の指揮官として登用されていた。率いるのは、義勇軍時代の一千騎と比べてやや多いほどであった。

しかし、新参者のベイルがどんなやつなのかと部隊はざわつきを見せ始めていた。


「私がベイル•アステッドです。今年で29になる若輩ですが、よろしくお願いしたい」


その声を聞いた途端に、部隊の人々は自然とその人物に敬愛の色を見せ始めていた。


フォーレはその様子を見て、大した者だと感服する反面、内心では少しの恐怖を感じていた。

あそこまで、人の信頼を勝ち取ることができるのならば戦う時には厄介になるだろう…

しかし、ベイルと面と面を合わせる時にはそんな感情はおくびにも出さないのであった。


ヴァルタニア歴332年。王宮から一つの状が発布されていた。


「叛徒たちを討て」と。


その意味は双方の陣営において反応が真逆と言っても過言では無かった。

キシルヴァたち王宮派閥は、この発布によって大義名分のもとで武力を正当に行使できる。

しかし、連合軍では事態が異なる。いわば、王宮指名の逆賊として、印象は良くなくなることが目に見えていた。


「おそらく、キシルヴァが皇帝陛下に告げ口したのだろう…国に蔓延る害獣め!」


フォーレはそうして、作戦机を叩いていた。


「冷静さを欠くな、フォーレ」


フリオスがそう答えてもいた。


「ですな。だが、俺たちにも何か大義名分とやらを手に入れられればいいんですけどね…」


偉丈夫、ゲイルがそう言って悩んでいた。


「それは難しいな…」


フリオスはそう言って笑うしか無かった。

ベイルはその様子を見ながらも、かつての仲間たちを恋しく思い出していた。

彼らは一体、何をしているのか?と



「我らに出兵せよと?」


アリアスはそう答えていた。

ラピドール統治から6年。既にその場所に慣れ親しんでいた彼らは動揺を隠さないでいた。


「なんでまた、俺たちが呼ばれるんだ?」


ディンが思わずそう答えていた。


「おそらく、キシルヴァ殿には味方という味方がいないんだ。そして、私たちが呼ばれた。まだ若く、戦功もある我らに」


パーシヴァルはそう自分の見解を述べていた。

アリアスはその言動に同調しながらも、この命令を受託するか悩んでいた。


「ここだけの話だ。キシルヴァ殿のことを、俺はどうも好きになれん。なんなら、まだフォーレ将軍についた方が得策と考えるが…」


アリアスの意見に対して、三人はうなづいていたが一筋縄では行かない現実を思い出し思わず誰も話せなかった。


「俺には…子供がいるんだ。裏切ったりしたら…殺されちまうかもしれねぇ…」


ディンはそう話していた。

既にアリアスは30歳。ディンは28歳、パーシヴァルは39歳にまで歳を重ねていた。

あの時のベイルがいた、若き時代からは少しばかり時がたち身を固める準備をしていたのだった。

ディンの発言を聞いて、二人も家に残してきた家内たちのことを考えていた。

そして、アリアスたちは泣く泣く連合討伐軍に名を連ねていたのだった。



「え!アリアスたちが!」


ベイルはその知らせを聞いて懐かしさと運命の残酷さに打ちひしがれていた。

討伐軍の先頭部隊として、アリアス、ディン、パーシヴァルの名があった。

フォーレは驚くベイルを呼び私室へと足を運ばせていた。


「其方の仲間は非常に強いと聞く。ディアスとひけを取らないというが…?」


フォーレの意見に対してベイルまた顔を引き攣らせるしか無かった。


「これでは、我々統率の難しい連合軍にとって大きな壁になること違いない。なんとかしてこちら側に、戻せないか?」


ベイルはそう聞いて口を開いていた。


「元来、彼らは仲間思いな性格の奴らです。おそらく、ラピドールに残してきた家族たちの安否を気にしているのでしょう」


「それは、たしかにな」


「さすれば、その家族たちを助ければ彼らはこちらの味方になるでしょう」


ベイルの意見を聞くと、フォーレはフリオスに頼みラピドールに向けて兵を放った。


「間に合うと..いいんだがな」


ベイルはそう呟くしか無かった。



キシルヴァ派、総勢120万

反キシルヴァ連合軍、総勢90万

若干の有利をもってこの内戦は、しばらくの睨み合いが続いていた。

しかし、ここで事件が勃発する。


ユリウス•メイスの脱走である。

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