第28話 策謀青年
そして、時は戻る。
「私は、このような機会をずっと待っていたのです。恥ずかしいのですが、私はそのような活動を自ら率先してしようとも思わない若輩の身です。ですが、私にはやらなければならないことが多くあります。その為には、フォーレ将軍の配下に加わりたいのです。どうか、どうか…」
ベイルはそう言って人目も気にせずに嗚咽を漏らしていた。
その余りにも献身な姿にフォーレも涙を浮かべて手を差し伸べた。
「アステッド殿、顔をあげてくれ。そのような誠の志、俺こそ其方の力が欲しい」
そうして、ベイルはフォーレたち反キシルヴァ連合軍へと加盟を果たしていた。
「何?フリオスが俺を叛徒と呼んだのか?」
キシルヴァは怒気を混ざらせながら部下たちにそう告げていた。
「あの老いぼれめ…一度一戦を交えてもよいと考えていたが、早まったな」
キシルヴァはそう告げると、今すぐにでも出撃の用意をしようとしていた。
しかし、それをユリウスは止めようとしていた。
「キシルヴァ様、それはいけません」
「なんだと、我らの軍が弱いとでもいうのか?」
キシルヴァはそう問い詰めたが、ユリウスは首を横に張っていた。
「違います、侮れない敵が多いのですよ。フリオスのような老練な者や、フォーレのような勇将たちがあります」
「ならば、どうすれば良いのか?」
キシルヴァはユリウスの意見に好意的だったが、それでも聞かざるを得なかった。
「利害が一致している強者をこちら側に連れてくればいいんですよ」
「それは願ってもない事だが、一体その例が適用される者をお前は知っているのか?」
キシルヴァはそう質問していた。
「私は一人その人物を知っております。必ず解き明かして見せましょう」
ユリウスはそういって一礼すると、王宮を後にしていた。
「また、きたのか?俺は何を言われても加勢はせんぞ」
ディアスはそう突き放すような態度をユリウスに向かって行っていた。
「いいえ、私は辞めませんよ。この乱世で生きる中で最強と言っても過言ではないのは貴方くらいだ。ここで燻らせるのは勿体無い」
ユリウスはそう告げていた。
「そこまで言ってくれるのは悪い気はしないが、俺はもうごめんだね」
ディアスはそう立って、畑作業に戻ろうとしていた。
「皇帝陛下を害する役目をあなたにあげようと思いまして?」
ユリウスは耳元でそう呟いていた。
ディアスはその瞬間、胸が躍っていた。
「何…?」
ディアスはその瞬間、暗い光が胸の奥をあっためるような感触があった。
「お前言っていることが、分かってるのか?」
ディアスはそう呟くしか無かった。
「そうです。これは取引ですよ。私たちは貴方という傑物を味方にできる。そして、あなたはキシルヴァ様が大事を成し遂げた後にその皇帝陛下を葬る機会を与えてあげますが…いかがでしょう?」
ユリウスはそう答えていた。
だが、ユリウスは内心そのような策を思いついた自分に対して恐怖を感じざるを得なかった。
確かにヴェロニカ陛下に問題があるのは承知。
しかし、その感情を使ってでの手引きは心なしか拒絶するような心を感じていた。
しばらくして、ディアスはその答えを口に出していた。
「分かった。俺はお前たちの味方になろう」
「それは、どうもありがとうございます」
ユリウスは大事を成し遂げ、帰路につこうとしていた。
「待て」
ディアスはそうユリウスを引き留めていた。
ユリウスがその行動に戸惑っていると、ディアスが口を開いていた。
「お前、上とあまり噛み合ってないだろ?」
ユリウスはその瞬間、胸を刺すような衝撃を覚えていた。
まさしく、家族を人質に取られているのであるから。
「なっ」
「俺から言えることではないが…行く当ても無くなったらベイル•アステッドを頼れ」
ディアスはそう続けていた。
「まだ、30手前の青年なんだが…これがまぁ、人徳の良さというかいいやつなんだ」
かと言って、俺にはそりは合わないけどな。
そうして、二人は別れユリウスはその場を後にしアルタバーナへと帰路につこうとしていた。
「ベイル…アステッドか」
ユリウスはその響きだけで、既に興味をそそられていた。




