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ヴァルタニア戦記  作者: sk
傀儡愚弄編 ヴァルタニア歴330~335年
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第26話 ほんの小さな幸せに

濡れた服を乾かす中で、その旅路はとりあえずの終わりを見せていた。


「っしゅん!まずい、風邪でも引いたかな?」


ベイルは川の水がまだ乾いてないのか、身震いしていた。すると、アレフシアが暖かい飲み物を持ってきてくれていた。


「ほら、風引くよ」


「あ、ありがとう…寒くてさ」


ベイルはそうしてそれを飲もうとするが、逆に熱すぎて咳き込んでしまっていた。

その様子を見てアレフシアは笑っていた。


「熱かったの?」


「まぁ、まぁだね…」


二人はまた笑っていた。最近になってここまで笑ったのはいつぶりだろうか?と二人とも思っていた。

そして、二人はまた王都への旅順を巡ろうとしていた。


「王都に行ってどこに行くの?」


ベイルはそう尋ねていた。


すると、彼女の表情が強張っていた。ベイルは、何か心の脆い場所に当たってしまったと考えて、思わず何もいうことが出来なかった。


「まぁ、前も言ったでしょう?自分のなすべき事がわかったから…向かってるの」


下手はアレフシアの言う言葉を聞いて、また何か言おうとしたが、思いの外口は開かなかった。


そして、その長い1日もまた終わり就寝につこうとしていた。

近くの宿舎へと止まろうとする最中で、ベイルはアレフシアがものを落としていることに気がついていた。


「落としたよ」


ベイルはそうしてそれに対して手を伸ばしていた。

すると、ベイルはそれに刻まれた紋章に対して違和感を覚えていた。


「フェイロスの紋章…?」


ベイル自身も、勉学ができる人間ではないもののその紋章は知っていた。ベイル自身が、ヴェイルのもつ王章を持つために、他国の紋章も知っていた。

それは、まさしくフェイロス王家のものである事が分かっていた。


すると、アレフシアはさっとそれを取っていた。何かに怯えるようにも感じられていた。


「それどうしたんだい?」


ベイルはあまりにも変貌した姿であった為に、ベイルはそう聞かざるを得なかった。


「見たの?」


アレフシアはそう静かに呟くだけだった。


「うん、見たよ」


ベイルの言った言葉に対して、アレフシアは泣きそうになっていた。

ベイルは初心である。その為、何をしたら良いか分からずどぎまぎしていた。


「そう…あなたの見た通り。私はフェイロスの王家の人間よ」


アレフシアはそう断言した。

アレフシアにとってそれは、辛いものだった。

アレフシアにとって初めて好意を持った人に対して、嘘をつきたくはなかった。

ベイルはそう聞いていて笑っていた。


「それがどうした?」


「え?」


予想外な答えに対して、アレフシアは思わずそう発していた。


「王家がどうとか関係ないだろ?」


ベイルはそう淡々と述べていた。


「実はさ、俺も皇帝ヴェイルの血を引いてるんだ。だけどさ、こんな感じだぜ?」


ベイルは笑っていた。


「それでさ、俺は思ったわけだよ。王族も平民も関係ないってことにさ」


ベイルは,そう断言していた。

その言葉に心底ありえないとまで思っていたアレフシアだが、心を入れ替え始めようとしていた。


「えぇ、そう。あなたのような人が少しでも多くいたら、こうはならなかったのにね…」


アレフシアの意味深な言葉に対して、ベイルは戸惑ったような表情を浮かべていた。


「じゃあ、今日のことはお互いの秘密ね」


そうして、アレフシアはその場を去っていた。


「明日で、王都に着くわ。旅も終わりね」


振り向きざまにそう答えたっきり、ベイルの言うことには耳を傾けてはくれなかった。

ベイルは、ただそこに立っているだけしかなかった。

ベイルは、自分の放った言動に対して思わず自問自答していた。

フェイロスは、己に取って憎いものであったことは違いない。

父を失わせた元凶とも言える存在に対して、母に心配をかけた事へと二つがベイルの心にはありありと敷き詰められていた。

だが、実際はどうだろう?

憎いのは国であって、人々は己と変わらないものだと言うことにどうして気がつくことが出来なかったんだろう?

ベイルはそう疑問に疑問を重ねていたが、ふと心の中が晴れたような気がしていた。

己の為すべき大義の意味が心なしか理解できたような気がしていたためであった。

そんな思いを込めながら、ベイルは自室に戻り明日への王都に心を向けて眠りについていた。




そして、悲劇が始まる。

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