第25話 再会はいつも
時は遡って2年前。ベイルはラピドール群令の身を追われて一人荒野をかけていた。
「ひとりぼっちもたまには、いいな…」
ベイルはそう答えながらも、外の寒さには慣れることが出来ずに近くの家に泊めてもらうことにしていた。
その家に住む人たちは皆、なぜか高貴さを感じ取れるほどに品があった。
「まぁ、アステッドさんじゃないですか」
人々はその来訪に歓迎の色を見せていたが、ベイルは心底から喜べるような状態でもなかった。
しかし、その家の人もまた深くまで問い詰めるようなことはせずに寝床を丁寧に作ってくれていた。
すると、その隣に人がいた。
既に眠っているが、女性であることは間違いなかった。
「この人は…どうしたんですか?」
ベイルは人々に向けてそう尋ねていた。
「気にすることはありませんよ、さ、さおやすみなさいませ」
すると、戸を閉じられてしまっていた。
ベイルも28にもなる青年である。その女性の顔を見たくなってしまい、こっそりその場へと近づいていた。
その顔を見るや否や、ベイルは驚いていた。
「君は!?」
その声に対して女性もまた瞳を開けていた。
「お母様…どうかなさったの…?」
寝ぼけていたが、目の前に映る男の姿を見て目が覚めていた。
「アレフシア…?」
「ベイル…?」
二人はお互いの名前を呼んでいた。
それは、四年前に心を通わせた間柄であった為であった。ともかくとして、二人はその再会を喜んでいた。
「久しぶりだな…見た感じ、四年前とは随分と見違えたな」
ベイルはそう答えていた。
「生きていたのね…お互いに」
アレフシアもまたそう呟いていた。
二人はそうして、笑っていた。
照れ隠しするかのように初々しかった。
すると、アレフシアはベイルに対して質問していた。
「群令ともあろう、人が何でここに?」
「それは…言えないかな…」
ベイルの意見を聞くと、アレフシアは含み笑いを浮かべていた。
「お互いに重いものを抱えているのね」
その言葉に対してベイルは心底同情していた。
「俺はそうだけど、君もそうなんだな…だけど、四年前から君は変わってないよ」
アレフシアはその言葉を聞くと、嬉しいようなそぶりを見せたが、すぐに目を伏せていた。
「それは、あなたの感想でしょ?私はあの時ほど綺麗じゃないのよ…」
アレフシアの暗い部分を垣間見たかのような気がしていて、ベイルは笑っていた。
「いや…君は綺麗だよ?四年前に俺が…」
「私が?」
ベイルは奥手であるばっかりに、その言葉の先を紡ぐことは難しかった。
その様子に対して、アレフシアは笑いを堪えきれなかった。
「…何がおかしいんだよ?」
「あなた、私よりも4歳上の割にはあまり成長していないな、と思って」
「…20半ばも過ぎてにもなって、まだ俺は変わってないのか?」
ベイルは少し傷ついたように見えた。
「違う、違う。あなたの心は何も変わってないってこと。ほんとにまた、会えて嬉しい…」
アレフシアとベイルはお互いに胸が熱くなっていた。
しかし、アレフシアはその心を必死に抑えようとしていた。
既に、夜が明けかけようとしていた。
「じゃあ、私行くわ。王都に行かなきゃいけないの」
アレフシアはそう言ってベイルに別れを告げていた。
遠くなる背中を見つめて、ベイルは思わず引き止めていた。
「俺も一緒に行ってもいいかな?」
ベイルの答えに対して、アレフシアははにかんでいた。
「良いわ…でもお別れは必ずね」
そうして、ベイルの喜んでその旅路に着いて行こうとしていた。
翌日、ベイルはアレフシアに同行すべくラピドールを後にした。
ベイルの脳裏にはラピドールに残してきた仲間たちのことで埋まっていた。
「俺は、必ずお前たちの元に戻ってくるからな…」
ベイルは独りそう呟いていた。
すると、アレフシアが馬を近づけさせていた。
「馬も扱えるんだな…」
ベイルはアレフシアの馬術にも一眼置いていた。
「褒めても何もないわよ、それ」
そうして、アレフシアは馬を走らせていた。
ベイルも負けじと、馬を走らせていた。
それに追いつこうとアレフシアの従卒たちが、不慣れな馬を走らせていた。
ベイルとアレフシアは、笑みを浮かべながら人一人居ない、草道を走っていた。
二人とも一歩も譲らず、とても白熱していた。
しかし、アレフシアの馬の足が引っかかってしまいアレフシアは飛ばされてしまった。
それに対して、ベイルは馬から飛び降りてアレフシアを空中で抱え込んでいた。
しかし、その落下地点は川だったために二人は水飛沫を挙げて落下していた。
遅く追いかけていた、従卒たちはその音に対して蒼白な顔になったが、二人の様子に対して笑みを浮かべるしかなかった。
ベイルとアレフシアはお互いにずぶ濡れな顔を見つめて笑い合っていた。
この時だけは、お互いに辛いことを思い出さずにいられていた。




