第22話 婚姻茶会
「ディアスとな?あの猛将をか?」
フォーレは驚いていた。
しかし、心の中では適任はその1人しかいないと思っていた。
そこで2人は別れて翌日にディアスのもとへと足を運んでいた。
ディアスはスペリア州の南部であるナリア州で農作業をしていた。
ディアスはその仕事がひと段落している最中で、何者かが近づいてくるのを感じ取っていた。
「其方は誰か?」
ディアスは日陰でそう尋ねていた。
「俺はフリント•フォーレ。スペリア州令だ」
「なるほど、最年少の州令が何の用だ?」
「事は急用を急ぐ、俺たちはある作戦を決行しようとしている」
フォーレの言うことに対して、ディアスは首を傾げた。
「作戦とな?一体どんな類いのものか?」
ディアスはそう尋ねていた。
「キシルヴァを殺す作戦だ」
フォーレの言うことに対して、ディアスは笑っていた。
「大言も程々にしろ。あの男ならともかく、お前に成功できるとは限らない」
「あの男とは?」
フォーレの尋ねに対して、ディアスの表情は少し緩んだ。
「四年前の赤日隊討伐の時に出会った若造だよ。若いのに義勇軍の旗頭だった。名前は確か…」
「それは、ベイル•アステッドのことか?」
その発言に対して、ディアスはうなづいていた。
「敵ながら対した男だと思ったよ。あれは伏竜だ。この乱世に飛び出そうとしている」
「…俺は違うとでも申すのか?」
フォーレの言う事に対して、ディアスは黙り込んでいたが、しばらくして口を開いていた。
「お前は蛇だ。蛇は飛べない」
ディアスの発言は、フォーレの自尊心を傷つけるのに十分であった。
「もういい、お前にようはないな」
そうして、ディアスは街を去っていた。
俺が、蛇だと?
ディアスは怒りのあまり、剣のつかを力一杯握りしめていた。
俺がアステッド以下の存在だなんて有り得ん。
血気盛んな、フォーレを尻目にケリィは宥めていた。
「そんな事言ったって、なにも解決はしないだろ?」
ケリィの言うことににも気がついて、フォーレは思わず目を伏せた。
「まぁ、俺たちだけでもできるさ。叛徒の助け分からずともな」
フォーレはそう呟いていた。
そして、婚姻が始まろうとしていた。
ヴァルタニア歴330年、11月のことである。
各将たちは、招集されておりその祝杯を挙げていた。
その最中に、一際若い男たちもいた。
それは、ラピドール群令のアリアスらであった。
「また、結婚か。この支出はどこから来ていると思っている…」
アリアスは内心そう思わざるを得なかった。
ディンやパーシヴァルもまた、そのような思いに囚われていた。
それよりも、三人の心残りなのはベイルであった。
既に別れて1年余りが過ぎようとしていた。音沙汰もなく活躍している噂すら耳にすることがないために不安は募っていた。
そこで、アリアスはフォーレの姿がないことにも気がついていた。
「フォーレ将軍は、一体何処にいるんだ?」
ディンが思わずそう、アリアスの声を代弁していた。
「何やら催しがあるらしいぞ」
パーシヴァルがそう答えていた。
「催し?」
「剣技を振る舞うだそうだ。陛下は好きだからな」
パーシヴァルの答えに対して、アリアスは釈然としたものを感じていた。
フォーレ将軍、何を考えている?
そんなことをアリアスが、思っているうちにフォーレらがその場に現れていた。
フォーレの姿はまさしく好漢そのものだった。
その美貌と長身は一際目立っていた。
「おぉ、フォーレ将軍ではないか」
そう言ったのは、ヴェロニカでもなくキシルヴァ自身だった。
「これは将軍閣下。今回のお宴、誠に楽しくさせていただいております」
フォーレは形式上だけは、丁寧に振る舞っていた。
「そこでです。いささか武演をお送りさせていただきたい」
フォーレがそう言うと、ヴェロニカは快く了承の意思を伝えていた
すると、武演が幕を開けた。
剣技の優美さと、繊細さが見る人の心を蝕んでいき、誰しもがその光景に見惚れていた。
しかし、アリアスはその光景に疑問を覚えていた。
何が何とは言えないものの、漠然とした不安を感じていた。
すると、アリアスはキシルヴァの方は目を向けていた。
そのキシルヴァの目の前に剣が何度にも渡り接近していた。それ事態は普通だが、心なしかその剣先が近づいているように感じられた。
アリアスは、その瞬間ハッと気がついた。
フォーレ将軍は、キシルヴァを暗殺しようとしているのか?
そのような策謀がここで繰り広げられるとは思えなかったが、段々とそのその直感が合っているように考えていた。
フォーレは内心、焦っていた。キシルヴァに想像以上に近づけさせてくれないのである。ディアスの代理のものとして呼んだ腹心の部下であるラーンは、途中参戦してきたキシルヴァの部下にその動きを足止められていた。
しかも、終わりが近づいているがためにラーンも急いでいた。
この作戦を考案した、ユリウスは武演の終了とともに頭を抱えていた。結局、作戦は失敗に終わりただの娯楽を提供しただけに過ぎなかった。
退壇するフォーレとラーンは、ユリウスと目が合い目を伏せていた。
ユリウスは心なしか申し訳ないと思っていた。
騙すような形になってしまって….
こうして、婚姻茶会暗殺未遂事件は幕を閉じた。




