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ヴァルタニア戦記  作者: sk
傀儡愚弄編 ヴァルタニア歴330~335年
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第21話 亡国姫君

舞台は、王都アルタバーナに移る。

ベイルたちの小さな事件の最中で、ある事件が起きていた。

それは、ヴェロニカ皇帝の結婚式が行われていた。

御年、65にもなる皇帝の相手はまだ23になったばかりの娘だった。

それがキシルヴァの娘だったのである。

宴会は大々的に執り行われ、表面上はその結婚を祝い尽くしていた。

しかし、臣下たちの間では奇妙な噂が立ち始めようとしていた。


「キシルヴァがまた勢力を伸ばしてしまう!」


そんな憂いを覚えていた。

現に四年前の赤日隊討伐による功績によって勢力を拡大したキシルヴァは宮廷内においても権力を握ろうとしていた。

そして、皇帝を含む皇族たちに娘たちを次々と嫁がせては姻戚関係を深めて行った。

その祝杯の最中で、スペリア州令のフォーレの姿もあった。今年で32になるフォーレもまたキシルヴァとは違う意味で将来を有望されている若き将軍であった。

夜も更けるころになると、祝杯は終わりを告げて各々が帰る支度をしていた。


「フォーレ将軍、お疲れ様です」


見ると、ケリィの姿があった。

迎えに来ていたのだった。


「2人の時はいいぞ、ケリィ」


フォーレはそう言うと、ケリィは肩を落とした。


「最近、疲れてるみたいだな」


ケリィの苦笑に、フォーレも苦笑で返していた。


「よく言うわ。キシルヴァの台頭が、むかつくだけだよ」


そうして、フォーレたちは馬車を用いて帰路へつこうとしていた。


「ところで、だ。ラピドールの件、不問にしたのはお前だろ?」


ケリィはそう確信をついた。


「あぁ、そうだよ。それで?」


「それで、じゃないだろ?いくら、痛ましいからって何で、ベイル•アステッドを庇うんだ?」


ケリィの問いかけに対してフォーレはわからないと答えていた。


「わからないって、お前…」


「いや、ベイル•アステッドをここで失わせるのは惜しいと思ったからな…」


フォーレは胸中にある思いを吐露していた。

ベイル•アステッド。若き青年。

しかし、その存在が大きく竜となって現れるのはまだ先の話である…



フォーレにとっては疲れた1日だった。

一刻も早く身支度を整えて、寝ようと思っていた。

しかし、そんな矢先に戸を叩く音が聞こえていた。

フォーレはこんな夜遅くに誰かと疑ったが、フォーレは戸を開いた。

そこには旧知の部下がいた。


「ユリウスか、どうしたこんな遅くに?」


フォーレは突然の来訪に驚いていた。


「実は折りいってのご相談があり夜分に来訪したまででございます」


「なるほど。だが、急を急ぐのか?俺はもう寝たいんだが…」


「…ファイロスの王女が5年ほど前に行方を経ったことをご存じですな?」


「あぁ、あの…。それでその者が一体どうしたんだ?」


フォーレは突然の話に対して疑問を覚えていた。

隣国フェイロスは、15年ほど前のセントニグス戦争において国力を浪費し今は国力復帰に進路を定めている。

その発展の最中において、その王女が脱走したことは事件の一つとして人々の記憶に残っていた。


「その姫君が、王都に入ったとの報告がありました」


ユリウスはその事実を述べていた。


「何?姫君がこの王都にいると申すのか?」


フォーレは事態の急転に驚いていた。

しかし、フォーレは冷静になっていた。


「だが、俺にとっては言って悪いが関係のない話ではある。それを急用と申したのだから何かあったのだろう?」


フォーレの言うことに対して、ユリウスは口を開いた。


「その娘と皇帝が近々結婚すると言います」


「フェイロスの姫君と!?」


それは隣国との争いの火種を少しでも減らせるような出来事だった。

しかし、ユリウスは顔を落とした。


「そう無闇に喜ぶ出来事でもありません。この後ろにはキシルヴァの姿がいます」


「キシルヴァがいるのか!」


フォーレは驚いていた。


「噂によれば、その姫君とは遠い血縁関係にあたるらしく」


フォーレはユリウスの言うことを聞いて、眠気が覚めてしまっていた。


「もはや、キシルヴァにはなす術もないのか…」


フォーレは天を仰いでいた。

フォーレ自身、野心家の節を持つ男である。

しかし、血縁だけは変えようにも変えられないものであった。

それを引き合いに出されてしまっては、どうにもしょうがなかった。


「まだ、慌てないでください。婚姻の前にキシルヴァの首を取ればいいのです」


ユリウスはそう答えていた。


「何?お主が策をお持ちか!」


フォーレは喜んでいた。

キシルヴァの台頭は、臣下にとっても甚だ目障りなものであった。


「はい。婚姻会の最中にある武演の際にそのまま殺して仕舞えばいいのです」


「なるほど、鳴門の会のようにか」


そうすれば事件性は少なく、自然に起きた事件というふうに画像ができやすくあっていた。


「それもそうだな。だが、こんな役回りを誰が引き受けてくれるだろうか?」


フォーレの憂いに対して、ユリウスは口を開いていた。


「1人います。優れた武を持つ男で、端正のとれた男が」


ユリウスはそう答えていた。


「その者は一体何と言う男か?」


フォーレがそう尋ねると、ユリウスは口を開いた。


「名をラグラン•ディアス。元赤日隊の武将です」


鳴門の会

古代中国紀元前期に起こった事件。項羽と劉邦が、中国の覇権を争う最中で、項羽が劉邦を呼び出し、武演の最中で暗殺を企んだ事件。しかし、竜の部下たちによってその惨劇は回避された。

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