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ヴァルタニア戦記  作者: sk
傀儡愚弄編 ヴァルタニア歴330~335年
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第19話 憂い

ヴァルタニア歴330年。

赤日隊討伐からすでに四年という月日が流れていた。その間、大きな戦いもなく人々は久々に羽を伸ばした生活を送り続けていた。

しかし、それは動乱渦巻く伏竜が姿を見せる最後の期間でもあった…


「こらぁ!また、ここで遊んで!」


ディンが群会議中にも関わらず、侵入してきた子供達の相手をしていた。


「虎髭おじちゃん!あそぼー」


ディンはそう言われるのが満更でもなかったが、その油断を機に子供達が四方へ走っていた。


「おい!待てよ!」


ディンは逃げ回る子供達相手に右往左往していた。

その様子を遠目から見ていたベイルは思わず苦笑していた。


ベイルも既に27歳となっていた。若き時の盛んな時代は幕を閉じ、段々と落ち着きを見せ始めていた。

ベイルは統治した今までの4年間は、ラピドールにとって最も平和な時代であった。

それもそのはず、ベイルは人望が厚くまた人々の気持ちを最優先にしていた。

しかし、それがどうも役人たちにとっては不服らしく何度も検察が来るほどであった。


「ベイル、流石に税率を少しは上げないと。この予算的にもなかなかきついぞ」


アリアスが出費率と出資率の割合を見てそう言っていた。


「ベイル殿、それは私も賛成だ。これ以上はいくら民たちのことが気がかりでも、財政をこう疎かにしてしまえば行き詰まってくるぞ」


ベイルもそのことについては言われなくても分かりきっていた。

しかし、今日の会議もまた明確な決まり事さえできずに解散していた。


ベイルはまた1人で自宅へと戻っていた。そして、すれ違う人々に挨拶を交わしてようやく、一息をついていた。

ベイルは服装を着替える中で、腰に帯刀しているヴェイル•カサターンに目がいっていた。

俺は、皇帝の末裔。そう、皇帝の末裔なんだよな…

思わず苦笑いをしていた。

自分の立場を笑っていてはバチが当たる。

だが、自身としてこのまま群令としての責務を全うするだけの人生も中々に、自身のためにもあまりいい思いをしないでいた。


「四年前から考えていた、俺の大義…か」


ベイルは、思わずそう呟いていた。

また、この問題に直面することになるとは思いもよらなかった。


「なんでかなぁ…」


ベイルはただ、そう静かに呟いていた。

いわば、何か"動き"が欲しかったのである。



翌日、ベイルはまた群議会へと向かっていた。

今日は、王宮における観察官が来訪する日でもあった。

ベイルは身支度を整えて、アリアスらを連れて入群所のそばに立っていた。

すると、辺りから20騎ほどの観察官たちがその姿を表し始めていた。


「長旅、お疲れ様です」


ベイルは、その観察団の筆頭であるローンにそう述べていた。


「ふん、口だけは立派なものだな」


ローンは鼻で笑っていた。

日常茶飯事だった。ベイル自体が身分の低い人間であったがために、何かと馬鹿にされていたがベイルは無視を貫き通していた。

無論アリアスやディン、パーシヴァルにとっては腹の居どころが悪かった。


「なんでまた、兄貴があんなこと言われなきゃいけねぇんだよ?」


ディンは少し離れた場所でそう呟いて、顔を赤く染めていた。


「いかん、ディン。ベイル殿の評価を下げてしまっては」


パーシヴァルの厚い手がその進行を止めていた。

しかし、パーシヴァルもまた心の内には激情を秘めていた。


「フォーレ州令には、気に入られているそうだがわしは厳しく観察するからな」


ローンはそう答えていた。

ベイルは笑みを取り繕っていたが、思わずその口端が思わずぴりついていた。

ベイルもかなり、抑制しているのである。

そして、ベイルとローンたちは街を巡察し始めていた。

しかし、ローンは巡回をするたびに不愉快な表情になっていた。

ベイルはその表情を疑問に思い、思わず質問していた。

すると、ローンはそんなこともわからぬかと鼻で笑ったような目でこちら側を見つめていた。


「臭いのう…これだから、低身分の奴らは…」


ローンはただそう答えていた。

その回答に対して、いくら人徳といえ心の優しいベイルも雷が落ちようとしていた。

こんな人々が、こんな人物が、この国を支配する重鎮たちとでも言うのか!?

四年もの間、耐えていたが今日はどうにも我慢できなかった。


「ローン殿、それは大きな間違いでございます。街のみんなは、生きるために汗を流し命を紡いでおります。それのどこが、臭いと?」


ベイルの質問に対して、ローンは冷ややかに笑っていた。


「其方も低身分のくせによく言うわい。そうだな、我々とこいつらとじゃ天と地ほどの差がある」


「それは一体何とおっしゃるのか?若輩の身では分かり得ません」


ベイルはそう皮肉を込めて言ったのが功を奏したのか、観察官も黙りこみ二日間の観察のうちの1日目が終わりそうになっていた。



「兄貴、あんな糞野郎の言いなりでいいのかよ!」


ディンが巡察を終えたベイルに対してそう口に出していた。


「そうだ、ベイル。そろそろ俺たちも我慢の限界だ」


アリアスもそえ答えていた。


「アリアス、ディン。こう言う人たちはこう言う考え方しかできないんだ。そう、これはあの人たちが悪いわけじゃない。この…」


ベイルはそう言っておきながら、言葉を紡ぐのをやめていた。

国が、何だって俺は言いたかったのか!?

ベイルは心に目覚める感情が何なのか形容しづらかった。

観察団

群に主に派遣される、観察団。基本的には王宮の内政官が派遣されその街の問題点や改善点を見つけて報告するのが主な任務である。

しかし、今では身分の違いからかその内政官たちの横暴が激しくなっている。

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