第2話 王都炎上
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アルタバーナは、炎に包まれていた。
あちらこちらで家屋は炎上して、瓦解し逃げ惑う人々に対して、赤い太陽を想起させるはちまきをまいた赤日隊の剣先が無惨にも、その人々の命を奪い去っていった。
アルタバーナに近づくに連れて、その声は一際大きく感じざるを得なかった。
ベイルとアリアスはその声を1人でも多く止めたくて、急いでアルタバーナへと入っていった。
入門所もまた、人1人いないような奇妙な静かさを感じていた。
「本当に酷い奴らだ」
ベイルはそう呟くしかなかった。
しかし、アリアスは完全に我を失っていた。
「ここには…俺の兄さん夫婦がいんだよ…」
いつになく、アリアスが暗い調子でそう呟いていた。
そうだった…ここにはアリアスの兄さんたちがいたんだった。
「取り敢えず、アルタバーナに行こう。そう悲観すんなよ」
ベイルはそう言いつつも内心、心配していた。
宿舎を出て、馬に跨りながら二人は王都へと向かっていた。
まだ、近いとは言えない距離にも関わらず炎の手がすぐそばにあるのでは無いのかと思うほど熱く感じていた。
「こんなに、熱いなんて…」
ベイルは、馬に跨りながらそう呟いていた。
二人は、そうこうして王都へと辿り着いていた。
そこはまるで地獄のような惨状にあった。
辺り一面は家屋が倒壊し、火の海を作っている。
そして、馬に跨りながら日の丸の入ったバンダナをつけた男たちが逃げ惑う人々を女子供関わらず切り刻んでいた。
「これが…赤日隊か!」
ベイルは、思わず大声でそう答えてしまっていた。
あまりにも腑の煮え繰り返るほどの憎悪に駆られていた。
その声に釣られて、獲物を狙っていた視線はベイルに向けられていた。
「何だ貴様は?」
その一人は、そう答えていた。血で塗られた剣先が怪しく光り輝いていた。
「何なんだ、あんたら!」
アリアスは、そう大声をあげていた。
アリアスは、兄夫婦の身を案じており心身ともに疲れ切っていた。
その姿を見て、そのうちの一人が薄ら笑いを浮かべながら声を発していた。
「お前、アリアス•ハルバードか?」
その男がそう述べていた。
アリアスは多少、出鼻を挫かれながらもうなづいていた。
すると、その男は血のついた麻袋を放り投げていた。
「開けてみろ」
その男が促したために、アリアスは目の前にある麻袋の縄を解いた。
生肉の腐る不快な香りが鼻腔を包んだ矢先に、アリアスは入っているものに驚愕を禁じ得なかった。
「あ…あぁ…」
アリアスは、見た途端に麻袋を遠くに放り投げていた。
「アリアス!」
ベイルは、友人の突然の変容に不安になりその麻袋の中を見ていた。
「!」
ベイルは吐き気を催していた。
それは、アリアスの兄夫婦だった。
身体中をバラバラに砕かれて、正気のない唯一限界をとどめている顔だけがこちらを眺めていた。
「襲うときにうるさかったんでな。男はすぐ殺した。だが、女の方は俺たちでじっくり楽しんだ後に殺したぜ…」
その声に賛同するかのような、残酷な笑い声が辺り一面を覆い尽くしていた。
「貴様ら!貴様ら!」
急に堪忍袋が切れたかのように、アリアスはその男に向かって殴りかかろうとしていた。
しかし、相手は馬に跨っていた。
その渾身の一撃は馬のしなやかな動作によっていとも簡単に跳ね除けられてしまっていた。
「鈍臭ぇんだよ!」
馬にまたがる男たちは、刃の付いていない柄の部分でアリアスを叩き始めていた。
「やめろ!」
ベイルも居ても立っても居られなくなりその攻撃をやめさせようとしたが、ベイル自身もその一撃を喰らってしまっていた。
しかも、当たりどころが悪くベイルは意識を失ってしまっていた。
そして、目が覚めると火に囲まれていた。
隣をふと見ると、ボロ雑巾のように痛めつけられたアリアスの姿があった。
ベイルは、すぐそばに駆け寄って体を持ち上げていた。
「アリアス、無事か?」
ベイルは、そう質問していた。
「大丈夫に見えるか?大丈夫なわけないだろ!」
アリアスは、思わず激昂してしまっていた。
そのことにすぐ、アリアスは気が付き自己嫌悪に駆られていた。
「…すまない、気が触れてて」
「お前の仕打ちを考えれば、そうなるのが至極当然だ。そうやって謝るな、らしくない」
ベイルはそうやってニコッと笑っていた。
それが精一杯の空気を緩ませる方法だと思ったからだった。
「お前みたいな奴が国を持てば、俺たちはいい暮らしをできるのにな」
アリアスはそう答えていた。
「いや、俺じゃだめだ。お前みたいに、学もなければ身体能力も今ひとつだよ」
ベイルは、そう答えて互いに謙遜しあった。
そして、二人は辺り一面をもう一度眺めていた。
「酷いものだな…」
ベイルは、そう静かに呟くことしかできなかった。
その隣ではさっきまで燻っていた憎悪が蘇ったかのように、アリアスを包み込んでいた。
「赤日隊め…奴らの悪業はもうたくさんだ」
アリアスは、そう言って拳を握りしめていた。
「俺は義勇軍を作りたい。兄たちの仇を取りたい。それにはお前の人徳が必要なんだ」
突然、何を言い出したのかとおもいベイルは苦笑した。
「アリアス、さっき見ただろ。俺たちに義勇軍なんて夢みたいな話だ。それに、俺の人徳だってお前と大層ないだろ?」
ベイルはそう心のうちを漏らしていた。
「違う、違う。俺と違って、お前は仁徳を持ってる。人に好印象を抱かせるな」
アリアスは、そう言ってのけた。
「何を根拠に言ってるんだよ?」
「何となくって話さ…」
そうして、二人は帰路についていた。
それは、紛れもないまでに重く心の荒んだ帰路であった。
後に聞いた話では、王都は三日に渡り炎上していたという。
赤日隊
ヴァルタニア歴324年ごろから帝国内で略奪行為を繰り返す武装集団。額に赤い日の丸のついた鉢巻きを巻いていることからそう呼ばれている。
日の丸の由来は、創造者のネイプによれば「赤き太陽の差す世界で人間のあるべき姿を追求する心の現れ」として記されている。
しかし、ネイプの死後の後継者に残虐なアウストに代が変わったことでその教えの意味を変えて私服を肥やす残虐組織に変貌してしまった。




