第18話 故郷へ
「其方に、ある地方の群令を任せてもよろしいかな?」
フォーレはベイルに対してそう答えていた。
「私なんかでよろしいんですか?」
ベイルは思わず聞き返していた。何かしらの冗談の類だと思っていたが、その瞳には固く決心しているような影を帯びていた。
「其方にその、地方のラピドールという場所がある。そこに其方を派遣したいのだが…」
ラピドール!
ベイルはなんだか懐かしい気分さえ覚えていた。振り返ればあくまで半年ほどしか経ってないものの、死戦を潜り抜けていたためか、思わず笑みを浮かべていた。
「そこは、私の出身地です。謹んで承りたく存じます!」
ベイルは思わずそう答えていた。
しかし、そのほとぼりが思わず冷めていた。
「となると、私の仲間たちはどうなるんでしょうか?できれば、私との同行を許可していただけないでしょうか?」
ベイルはそう尋ねていた。
「そこまで畏まらなくて結構ですよ。もちろん、どうぞ」
フォーレはそう言ったために、ベイルは嬉しくなって仲間の元へと帰路へつこうとしていた。
「全く、仲間思いな男よ…」
フォーレはベイルの背中を見てそう呟いていた。
「だからこそ、お前を遠くに置かなければならないんだ」
ベイルは馬を走らせて、荷造りをしているアリアスたちの元に走っていた。
そこで自身がラピドールの群令に任じられたことを話していた。
「兄貴、やったな!」
ディンが思わず肩組みをしてきていた。
「いや、そういう単純な話でもなさそうだぜ」
アリアスが冷静にそう告げていた。
「ラピドールの群令になったことが、なにかまずいのか?」
ベイルがそう聞き返していた。
「いや、そうじゃない。俺たちにとっては栄転そのもの…のように見せかけている」
アリアスの言葉を継ぐようにパーシヴァルも口を開いていた。
「フォーレ将軍の意図的な隔離か」
それに対してアリアスはうなづいていた。
しかし、そんなことを言っていてもあくまで目測程度であり決定的なことではなかった。
「あくまで、これは俺たちの予想に過ぎない。それに、俺はラピドールの人たちと久々に会いたいしな」
ベイルがそう言うと、変に気難しくなるのではなくこの任をまっとうしようと言う思いがだんだんと高まってきていた。
翌日、ベイルは正式にラピドール群令に任命され元々率いていた1000騎ほどの兵に加えて新たに、もう1000騎ほどの兵を携えて故郷のラピドールへの移動を開始していた。
その移動中の最中で、ベイルはフォーレと出会っていた。
「これからは私とも会うことが多くなるな」
フォーレはそう口にしていた。
「えぇ、若輩の身ながらお世話になります」
そうして、ベイルたちは10日ほどをかけてようやくラピドールの群令として入群を果たしていた。
「ベイルだ!」
「アステッド群令だ!」
かつて、自分たちと親しい関係であった人々は快く出迎えてくれていた。
「あなたになら、任せられる」
そう言ってベイルは多くの人々に対して挨拶を繰り返していた。
そして、初めて訪れていたディンやパーシヴァルは当初、その雰囲気に馴染めていなかった。
「オーキスさんよ、兄貴は中々に慕われているな」
それにうなづくように
「そうだな、ディン。これからは彼の人望を傷つけないようにしていかなくてはな」
「おい、それって俺のことか?」
ディンの答えに対して、パーシヴァルは笑っていてディンもまた笑っていた。
すると、何やら怖いと思っていた人々もその快活な笑みを見て、歓迎の意を表していた。
そして、しばらくののちにベイルは旧自宅へと向かっていた。
家に入ると、損壊はそのままてわ埃をかぶっていた。
そひて、奥の庭へ向かうとそこには小さなお墓が立っていた。
「みんな…」
ラピドールの人々の待遇に感極まったのちに、ベイルはその相手である母に対して手を合わせていた。
あなたの仇を直接討つことは叶いませんでしたが、取り敢えずの天下泰平は近そうです。お母さん、俺を見ていてくれ
そうしていると、なにやら強風が辺りを包み込んでいた。
それは、一際激しいものだったがすぐに収まっていた。
「まだ、風が吹き荒れている…」
ベイルはそう呟くしかなかった。この風が厄災を吹き去ってくれたのか、それとも新たなる動乱の種を撒き散らしに来たのかは理解できなかった。
ヴァルタニア歴326年、時はまだ停滞する事を知らないでいた。地表から出た英雄たちは、まだ表に出ていない英雄たちの存在をまだ知らない。
~叛徒討伐編 完~
第1部は無事完結いたしました。これで、物語構想の10分の1にも満ちていません笑。とても長く、そしてややこしい(自分も含めて)物語になっていきますが、ぜひベイルたちの活躍を見届けてやってください。第2部は3日後に更新します。




