第17話 皇帝ヴェロニカ
ベイルたちは、その歓声を遠目に眺めていた。
その胸中には思う節が多くあった。
「結局、俺たちに大将首は届かなかったか」
アリアスはそう呟いていた。兄夫婦をやられたために始まった戦いはこんな形で終わりを告げていた。
「まぁ、戦いは終わったんだ、それだけでも,良しと思わないとな」
ベイルは、そう慰めていた。
しかし、ベイル自身もまた心の中に秘めた大義というものが何なのかさえ、分からなかった。
そこだけが、心配しているところであった。
「それなら、義勇軍も解散かぁ…」
ディンが全身血塗られながらそう悲しく呟いていた。
「解散とは言っても、形式上だけだ。また会えるぜ?」
アリアスがそう答えていたが、空虚だった。
「おおーい」
すると、前方からパーシヴァルの姿が見えていた。
その姿を見て取り敢えずの、活発さを全員が取り戻していた。
「四人揃ったな、よく生き残ったな」
ベイルはそうしみじみと感じていた。
「兄貴、これからどうする?」
ディンの声を聞いて、ベイルはふと笑っていた。
「アルタバーナに行って、支援活動…かな」
それに対して、ディンも拍子抜けだった。
「な?なんで、支援活動なんかに?」
「俺はあまり戦いたくない、少しくらい人の役に立つことをしたいんだ」
その言葉にパーシヴァルは感激した。
「流石、ベイル殿」
すると、四騎の中で徐々に義勇軍の面々が増えてきていた。
「隊長、俺も連れてくれ」
「俺も、俺も!」
そうして、それ以外の面々もあつまってきていた。
「そうか、そうか…お前たちも一緒に行くか」
ベイルはそう苦笑しながらも、王都へ向けて馬を走らせていた。
なんだか、夢を見ていたような気がする。
ベイルはそう思わずにいられなかった。
しかし、これは現実でありそれを度々再確認していた。
そうして、ベイル一行は王都へ向かって行った。
そして、1ヶ月が過ぎていた。
ベイルたちは、ようやく家屋をまとめて一息つくようになって行った。
それもこれも、全て王都に住む人々が居たためだった。
彼らはベイルたちに対して非常に良い待遇をしてくれていた。
ベイルは、その恩に報いるためにも王都の復興作業を手伝っていた。
そして、肉体労働をして疲れているところにどこかの騎士が自分の方へ走っていた。
「誰です?」
ベイルはそう尋ねていた。
「アステッド殿、明日の祝議にご参加くださいますようフォーレ将軍から伝達をいただきました」
そう言うのを聞いて、ベイルは思わず疲れが飛んでいた。
「私が…?正規軍でもないのに?」
そう呟いてはいたものの、このまま欠席するわけにもいけないのでベイルは明日のために身支度を整えていた。
翌日、ベイルはアリアスたちに見送られながら王宮へと足を運んでいた。
王宮の庭園だけでも目を見開くほどに豪華であり、思わず目が眩んでいた。
少し休んでいたところ、フォーレが近づいていた。
「気分がすぐれぬようですな、まぁ、初めてなら仕方ありませんよ」
フォーレは思わず笑っていた。
「なんかこう、煌びやかと言うか自分に対して縁にもないことなので…」
ベイルはありのままを口に出していた。
「なるほどな」
そうして、ベイルはフォーレ一行らと共に宮殿内部に入っていた。
ここでも、またベイルはその豪華さや華やかさに目を奪われていた。
装飾品の数々が、帝室の権威を知らしめているような気をしていた。
ベイルはそうして、フォーレと共に話しながら祝議を楽しんでいた。
すると、楽器の合唱が聞こえ始めてくると、人々は皆静まり返っていた。
「何事でしょうか?」
ベイルはそう尋ねていた。
「皇帝陛下がここにくるんだよ」
そうして、ベイルは固唾を飲んで皇帝の到着を期待していた。
すると、しばらくして「皇帝陛下入場!」という響きと共に皇帝陛下が入ってきていた。
しかし、ベイルはその皇帝に対して思わず失望を感じてしまっていた。
腹は肥えて、足取りはおぼつかなく髭も手入れしてないのか伸び放題だった。
なんと!これが我がヴァルタニアの血の末路とでも言うのか!?
ベイルは表には決して出しはしないものの、そう感嘆せざるには得なかった。
その微妙な表情の変化に対してフォーレは思わず好感を覚えていた。
この男は、他の奴らと違って陛下を傀儡として見ていない。むしろ、この国の命運を案じている。
久しく、自身との理想が高いことを再確認していた。
「ほっほっほ、皆の衆楽しんでおるか?」
ヴェロニカの声は想像以上に大人びていた。容姿からは想像はできないが、やはり王族の末裔ということもあって声が通っていた。
「そこでだ、我自ら褒美を授けたい者がおるのだが、言っても良いかのう?」
その声に対して、人々は歓声でその選択を支持していた。
「ならば、まずはキシルヴァを新たに正式な騎士軍の隊長に任ずるぞ」
その声に対して周りはおお、という声が聞こえてきていた。
キシルヴァがとうとう、軍事上における最高権力を手にしたためであったからだ。
そして、数人ほどが呼ばれて褒美を授かっていた。
そして、
「フリント•フォーレ、そなたにスペリア州の州令に任じる」
そうして、褒美は終わりを告げていた。
祝議も終わりに差し掛かろうとしていたころ、ベイルはフォーレに
「おめでとうございます」
と祝福の声を述べていた。
すると、フォーレは何か思いついたかのようにベイルに声をかけていた。




