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ヴァルタニア戦記  作者: sk
叛徒討伐編 ヴァルタニア歴325~326年
14/32

第14話 決戦の地、ナリープ

アウストは激怒していた。

頼みの綱が切れてしまったという事実からすぐにでも逃げ出したいと思えるほどだった。

ディアスが敗走したことで通路を開け渡されてしまい、もはやナリープに位置する本拠地「ティラスト城」は裸になっていた。

もはや、自身が人頭に立たなければならないほどに人材が各地方でことごとく討ち取られていた。

なぜだ!なぜだ?

アウストは今までの道のりを振り返っていた。

かつての赤日隊は少なくとも烏合の衆であり、宗教じみた活動をする団体だった。

貧しかったアウストは、その司教であるネイプと親子の契りを結び10年もの間、その座を奪うべく待っていた。

そして、ついに2年前ネイプを毒殺することに成功した。もともと体が弱っていたために、その死は怪しまれることもなかった。

そして、俺は司教になり烏合の衆を武装集団に変えることに成功した。

全ては皇室という毒物を、排除すべく立ち上がる人々を先導しようとした結果だった。

しかし、今ではこのザマだ。

自分も欲に冒されて、ただの畜生にまで落ちた。

だが、そんな自分でも戦い、そして命を散らすことで世界を変えることができるかもしれないとおもっていた。


「だが、ただでは死なんぞ」


アウストはそうして、決戦を迎えようとしていた。

時に、ヴァルタニア歴326年5月のことであった。


そして、討伐軍の総数は既に万を越えようとしていた。

朝廷にとっても赤日隊の影は大きくなっているように感じられていた。

そして、来るべき決戦を迎えるべくベイルたちは日々の準備に忙しくしていた。


「これは、ベイル殿!」


ベイルが剣を磨いている時に、フォーレが声をかけていた。


「おぉ、フォーレ将軍」


互いに再会を喜んだものの、心の中では互いに腹の探り合いが始まろうとしていた。


「良い剣だな」


フォーレはベイルの磨いていた剣を見てそう呟いていた。

そして、フォーレは思わず思惑に駆られた。形からしてあれは、依然として行方不明となっている国剣ヴェイル•カサターンではないのか?

そんなことを思ったが、フォーレは表情を取り繕っていた。


「えぇ、半年も前に母に託されたものです。大切に扱うのは当然ですよ」


ベイルはそう答えていた。


「良い母を持ったものだな」


「えぇ、だからこそ母を殺した赤日隊は許せないのです」


ベイルは固くそう答えていた。


「それも相待って私は、義勇軍を立ち上げて今日まで至るわけです」


ベイルは自身の決意の表れを言葉に載せていた。


すると、フォーレは思わず出てきた質問を投げかけていた。


「今思えばあの豪傑、ディン•バーレイルなる者は処断しなかったようですね」


その質問に対してベイルは笑っていた。


「あいつは染まりやすい奴っていうことが初対面でわかりましたから」


ベイルは軽々しくそう答えていた。


その表情といい言動といい、フォーレは思わずぞっとしていた。

これほど脅威を抱かずとも、こうも心の芯を冷たくするような人間には出食わすこと自体がフォーレにとって新鮮な気持ちであった。


「なるほど」


フォーレはそう答える術しかなかった。




「ですが、そういった奴らとも別れが近いとなると悲しくはなりますね」


ベイルはそう話していた。


「別れが近いと?」


「えぇ、この戦い、いわば復讐が終われば私に戦う意味はありません。故郷へと帰ろうと思います」


ベイルはそう答えていた。

しかし、内心ではその思いとフリオスと語り合った大義の話が脳内にこびりついていたことも否めなかった。

どちらも、どちらの思惑に浸っていた時、辺りが騒がしくなり始めていた。兵たちがことごとく礼を施している。

ベイルやフォーレもそれに倣ったが、ベイルにとってはその対象の男を見て思わず目を見開いた。

それは、荒々しい様子を受ける武将であることはわかりきっていた。

しばらくして、その男はこちらには見向きもせずにその場を立ち去っていた。


「将軍、あのお方は一体何者ですか?」


ベイルはフォーレに対して、そう質問していた。


「あれは、ハーレイ•キシルヴァ将軍だ。皇帝の右腕とも言えるお方だ」


「ヴェロニカ3世の、側近というわけですか」


ベイルはそううなづいていた。

しかし、キシルヴァからは味方から発せられる特有の雰囲気はなく、どちらかといえば敵と対峙した時のような印象を感じざるを得なかった。



「ティラスト城は丸裸!貴様たち、戦いの終わりはもう近いぞ!」


キシルヴァは出撃直前に部隊全体に発破をかけていた。


「叛徒共を討ち砕いた暁には、恩賞を賜るぞ!」


その声に対して兵たちは雄叫びをあげていた。

そして,キシルヴァの前進という言葉を皮切りとして、兵たちは進軍を開始していた。

ベイルらもまた、この乱戦に身を委ねていた。

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