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ヴァルタニア戦記  作者: sk
叛徒討伐編 ヴァルタニア歴325~326年
13/32

第13話 花を掴む

既に、ベイルたちが兵をあげてディンやパーシヴァルといった男たちと仲間になったりして既に半年が過ぎていた。

ベイルたちは、ナリープまでもうまた鼻の先になっていた。

その戦いへの戦意向上のために、街への外出許可が出ていた。


「兄貴、これ買ってくれよ」


ディンが、屋台でやたらに駄々をこねていた。


「おいおい、ディン。大人がないぞ」


パーシヴァルがそうなだめていた。


「まあまあ、賞金はたくさん頂いた。これくらいなら、いいぞ」


ベイルはそう言って、お金を持たせていた。

それを手に取ったや否や、目を輝かせてその屋台へと入っていった。


「全く、呆れた奴だな」


アリアスは思わず苦笑していた。


「だが、頼りになる奴だろ?」


ベイルはそう言って、アリアスやパーシヴァルはうなづいていた。


「しかし、まぁここの賑わいはすごいものだ」


パーシヴァルは人混み溢れる屋台を見回しながら、そう呟いていた。


「それはそうだ、ここは商業の街だ。人が集まってきやすい」


アリアスはそう答えていた。


これが、人々のあるべき姿なのかもな。

ベイルは胸中でそう呟いていた。


出撃前日の夜、ベイルらは酒場で飲んでいた。


「明日は勝つぞ!」


ベイルの叫びで、アリアス、ディン、パーシヴァルは杯を交わしていた。


「にしてもなぁ、アリアス。この戦いが終わったら、俺たちも離れ離れか」


ディンが思わず胸中を吐露していた。

その言葉について、辺りは思わず憂鬱としていた。

ベイルにとっても、頼りになる仲間たちと離れるのは心が痛かった。

それよりも、友人としてそれは悲しく感じざるを得なかった。


「死ななければ、どうということはないじゃないか」


パーシヴァルはそう場を和ませていた。


すると、酒場もだんだん騒がしくなってきていた。1人の来客によって集団リンチが始まろうとしていた。


「!」


ベイルらはその行動を抑止しようとしていた。


「やめろ、お前たち!」


ベイルはそう怒鳴っていた。

その行動に対して、数人は途端に殴りかかっていた。


「酔ってやがる!」


ディンも加勢しながらそう答えていた。

その間に、ベイルはその対象となっていた人物を助けるために外に出ていた。


しばらく走って、人目のつかないところまで来ていた。


「走らせてしまって申し訳ない。怪我などはしていないか?」


ベイルはそう質問していた。

すると、その人は被っていた羽織をあげていた。

髪は短く切り揃えられているが、美を感じさせる女性であった。


「私はアレフシア。先程はありがとう」


アレフシアはそう答えていた。


「いや、当然のことをしただけだ。そこまで言われる筋合いはないよ」


ベイルはそう答えていた。

そして、そのアレフシアの人となりを観察していた。全てにおいて、百姓であることはあり得ない。

そのようなもっと高貴な雰囲気を醸し出していた。


「…どこの誰かは聞かないけど、随分過酷だったんだね」


ベイルはそう答えていた。


「…そうなの」


アレフシアもそう答えるしかなかった。


「少しだけだけど、服を買うか?」


そう言うと、アレフシアは驚いた様子を浮かべていた。


「いいの?」


アレフシアはそう答えていた。


「そんな、心配すんなって」


ベイルはアレフシアの手を取って街へと降りていった。


ベイルにとっても、アレフシアにとっても街に降りていろんなものを見ていた時間は、久しぶりの休息をとれたような安心感があった。


「アレフシア!これ、君に似合うんじゃないかな?」


ベイルはそう大きな声を出してアレフシアにその服を重ね合わせて見ていた。


「めっちゃ、似合ってる!」


ベイルの表裏のない称賛の声にアレフシアは、顔を真っ赤にしていた。


「そんな簡単に褒めないで…恥ずかしい…」


「えっ!?えーと…?」


ベイルらの言動に対して街の人々は笑っていた。

ベイルもまた、顔を真っ赤にしてお互いにその顔を見合わせていた。

互いに胸の奥の奥をあっためるような感情が巻き起こり始めていた。


「綺麗だ…」


「素敵…」


お互いに自身の心臓の音で聞き取ることはできなかったものの、そう淡々と独り言を口に出していた。


そうして、互いに恥ずらいながらも日は落ちようとしていた。

「あっというまだったな」


ベイルは思わずそう呟いていた。


「そうね…」


アレフシアもまたそう答えていた。

新しく買った服は煌びやかに、彼女自身を照らしているように感じられていた。


「君は、このあとどうするんだい?」


ベイルはそう、質問していた。


「取り敢えず、私はこの街から出るわ。長居しても出る時に悲しくなるからね…」


アレフシアはそう悲しく答えていた。


「じゃあ、あまり会えなくなるかもな」


ベイルも心なしか悲しみを覚えていた。


「そんな事言わないでよ、事実だとしても」


アレフシアがそう答えていた。


「ごめん、そんなこと言わなくてもいいよな」


ベイルもそう答えていた。

しかし、互いに素性を知らない身同士であり、その誓いが確かなのかどうかは分からなかった。

ともかくとして、2人は賑わう街を背中にして別れていった。

その消えていく後ろ姿を懸命にベイルは目で追っていた。


「花を掴むか…麗しの花は手からこぼれ落ちたような気がするよ…」


ベイルはしみじみと感傷深くなっていた。


「兄貴!探したぜ!急に消えやがって!」


視線を変えると、ディンがそばに立っていた。


「お前らしくないな、どうした?」


アリアスはそう質問していた。


「心配しなくていいさ,ちょっと用事があったからな」


ベイルはそう短く呟くだけだった。

その態度に対して、一同は不思議と首を傾げたがその後休暇が終わるまで遊び尽くしていた。


そして、赤日隊本拠地,ナリープ攻略が始まろうとしていた。

ナリープ

ヒューリ州所属の郡の一つ。他の郡に比べて海に直面していることも相待って、商業や地方交流の中心地として華やかな発展を遂げている。

しかし、その反面失業した人々にとっては再び起き上がるのが難しく貧富の差が激しい地域としても知られている。

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