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9.魔法大国の祠

 セフィスの話は、アーシャにとってかなり刺激的だった。

 そのため、会話が自然と盛り上がる。


「魔力とかって目には見えないのよね? なんでわかるの?」


「魔素や魔力を測定する道具があるんですよ。僕の場合、生まれた時に測って、全くなかったんです。それから魔素ですけれど、北の草原は魔素が薄いそうなんですよね」


 そういえば、こちらの国から来た兵士がそんなことを言っていた気もする。蛮族の過ごす土地はやはり野蛮だ、とかなんとか。

 これはそのことを言っているのかもしれないけど、まだ謎は解けない。


「えーと……マソ? ってのが薄いとどうなるの?」


「魔法の発動がやりづらいそうなんです」


「……なんで?」


 子どものように「なんでなんで?」と聞いてしまうが、セフィスは嫌な顔一つせず答えてくれる。


「魔法というのは、人間の魔力とその土地にある魔素が揃わないと発動しない、らしいです。なので、魔素が薄いとより多くの魔力が必要になるそうです」


「あ、わかった! 魔法って荷物を魔力と魔素の二人で運んでるわけだ。なのに魔素がサボってると、その分魔力の負担が増えるから大変ってことよね?」


「そんな感じです! なるほど。そうやって説明すると万人にわかりやすいですね」


 どうやら合っていたらしい。わかりやすいと言われてアーシャも気分が良くなる。


「セフィスの説明もわかりやすくて助かるわ。それに、この国が魔法が発達して、草原で魔法が使われない理由もこれでわかった。なんでもかんでも出来るってワケじゃないのね」


「そうですね。他にも色々制約があるようなので、なんでもってことにはならないと思います。魔素が豊富なこの国でも難しいことは多々あるって聞いてますから」


 未知なモノである魔法について、少し知ることができた。この国では当然のように使える技術である、ということもわかった。

 故に、セフィスの境遇が物凄く気になってしまう。


「そんな魔法国家で、良く生きてこられたわね」


 草原で魔法なしでも生きていけるよう独自の生活様式が発達したのと同様、魔法が使いやすいこの国は魔法に特化したのだろう。そんな中で彼は、魔法が使えない人間としてこれまで過ごしてきたのだ。

 草原で言えば、体が弱いとか、筋力がつかないとか、そういう感じか。草原で生まれた命でも、やはり適性がなければ長くは生きていけない。

 セフィスは適性がないこの土地で、本当に良く生きてこられたと思う。


「一応生きていけるようにとお役目をもらいましたから」


「お役目? 仕事ってこと?」


「そうなんです。僕は祠の管理を任されていて、それで一応お給金をもらって生活しているって感じですね」


「ああ、そうか。仕事をして対価を得るのね」


 草原では皆がそれぞれ得意なことを活かして一族のために動き、不得意を補い合うような関係だ。なので給金という概念があまりなかった。


「正確に言うと、祠の世話をすることにより衣食住を保証してもらってるっていう感じでしょうか」


「……本当にそれ保証してもらってる?」


 見たところ衣服はかなりくたびれているし、こんなにガリガリで食が満たされているとは思えない。住に関しては判断できないけれど、前者二つがこんな状態なのだから推して知るべし。


「えぇとまあ……死なない程度には。でも、仕方がないんです。僕に余分に持たせてしまうと、その……」


「……あ、わかった。盗られるのか。国で一番偉い人がいる場所なのに治安最悪じゃないの」


 言いづらそうにモゴモゴしているセフィスの様子で察してしまった。

 力なき者はどうしても奪われる運命にある。こんなにひょろひょろガリガリであれば、力任せに奪うことなど造作もないだろう。なにせ彼には筋力もなければ、この国に必須と言われる魔力もないということなのだから。


「それにしても祠って? この国も何かを祀ってるってこと?」


 祠、と言われて思いつくのは、草原のピーインを祀る場所だ。ピーインがこの草原を守ってくれていると草原の民は信じ、ピーインを祀っている。ピーインが空を飛び回っていた時代には貢物を置いていた場所なんだそうな。

 翻ってこの国は、そんな風に信仰するような対象がいるのだろうか? と疑問に思う。


「確かに信仰や祀る、という気持ちはこの国にはあまりない、ですね。だからこそ僕が掃除などの手入れをしているんですけれど」


「あ、なるほど」


「アーシャさんが探している納屋の、もっと外壁側にあるんです。森に近いところ、と言えばいいですかね。そこで、大きな岩を祀っています」


「岩? 土の魔法の化身とか?」


「ごめんなさい、実はその岩がなんなのかまでは知らないんですよね。ただ、研究者の方がたまにいらっしゃって魔力を測定したりはしているのですけど……とにかく「大事にしろ」「綺麗にしろ」と言われているので、僕の仕事はそこの掃除と番人なんです」


「……それって、ちゃんと人が住めるような建物なの?」


「ええと……納屋よりは……」


 言葉を濁されたことから察するに、そちらもそこまでまともではないのだろう。というか、あの納屋は普通の人間であれば住まいとしては利用しないだろうし。そこと比べる時点で本当に程度が知れる。


「魔法の知識の恩返しになんとかできればいいんだけどね。私もあんまり良い立場じゃないから」


「あ、そんなのは全然いいんです。僕はあの草原から姫君が来るって聞いて、運が良ければお話できるかなって思っただけなんです」


「話?」


「その……本当にただ話してみたかったんです。僕と同じく魔法を使わない人と。魔法を使わない人はどんな風に過ごしているんだろうって考えていたから」


「なるほどね。で、どうだった? 実際に話してみて」


「そうですね……すごく強いんだなって。自由なんだなって思いました。だって僕、あの窓を開けて外に出る、なんて考えもしなかったですから。それに厨房にご飯を取りに行ったんでしょ? 僕にもそのくらいの強さがあったらなって思いました」


 セフィスはとても嬉しそうに話す。おそらく、まともに話せる人間は数少ないのだろう。


「まず先に力をつけないと、ご飯を取りに行くことも難しいんじゃないかな」


「そうなんですよね。でもまあ、やりようはあるかもしれませんし」


 アーシャにとってもセフィスは久々にまともに話せる人間だ。しかも、彼の知識はアーシャにないもので、話を聞くだけでも楽しい。


「役立たずと蛮族が何をくっちゃべってるんだか」


 そんな楽しい気分に水を差す、不快な声が突然響いた。


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