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異能者たちの最終決戦  作者: さけおにぎり
二章 異能力者との邂逅
8/40

実行

 8


翌日、彼はさっそく朝から昨晩の思い付きを実行した。いつもどおりを装いながら、東都は教室を入ると、まず紗耶香がいるか確認した。


(まだ、来ていないか…)


はやる気持ちを抑える。なぜか彼はやる気がみなぎっていた。

ホームルームまで10分を切っている。間もなく来るだろうと、彼は自分の席にカバンを置くとそのまま紗耶香の席の後ろあたりで待機する事にした。

窓の桟に背を持たれながら携帯をいじって暇をつぶしている風を演じながら、神経は彼女が入ってくるロッカー側の戸の出入りに集中していた。


(ここにいれば必ずあいつの視界に入る。どんな反応をするかな?)


間もなく紗耶香がやってくる。いつものように彼女は友達に「おはよ」とにこやかに挨拶を交わしながら入ってきた。東都は緊張で身をこわばらせた。

紗耶香が陽気に教室にやってくると、その視界に待ち受けていたものは今泉東都のビンビンのアソコであった。彼女は一瞬表情を曇らせる。

男の全裸を見慣れている紗耶香であるが、さすがに朝っぱらからあんなものを見せられるのはいくらなんでも気分がよいものではない。


(朝・か・ら・こいつはぁ…)


と紗耶香は心の中でこぶしを握りながら憤った。


(四六時中さかりやがって!)


殺気立つ紗耶香。

一方、東都は彼女のわずかな間の反応を見て取り、なぜか勝ち誇った様子だ。


(…間違いない。紗耶香は知っている。てゆうか、見えてるといってもいいくらいだ…)


敏感に彼女の変化を読み取ったが、彼女の腹の底からフツフツと湧き出る殺意には鈍感であった。彼はどちらかと言えば鈍感といえる。基本的に彼が何かの事象に気づいたとしても、その理解はこのように50%に留まってしまう。その結果、色々と誤解と混乱を生む。つまり天然だ。

こうして何かしらの手ごたえを感じた東都は、さらに調子に乗ってゆくことになる。


 次は、美術室で実行された。

 いくつかの班にわかれ、各机に置かれたデッサン用の石膏像を囲んで、各自思い思いの角度からデッサンしてゆく。

東都は机の高さがちょうど自分のアレより数センチ下なのを発見した。彼はおもむろに立ち上がり紗耶香がいるグループの机に行き、ちょうど彼女の視線の対角線上にいるクラスメイトに声をかけた。


「どう?」


「…まあまあ」


あまり話すことのないクラスメイトなので話は広がらない。

貧血気味の癖によく鼻血を出すヤツだ。


「こっちの像のほうが描きやすそうだな」


「…どれもおなじだよ」


「あれっ?そうだっけ…」


という風にごまかしながら彼は紗耶香の視界の中でうろちょろしていた。さて、このような今泉東都による『嫌がらせ』の中で紗耶香が集中を失うのは当然であった。石膏像の輪郭線は震度計のようにガクガクと波打ち、目は黒く塗りつぶされ、口は顔からはみ出していた。

東都はそのピカソ的なデッサンをちらりと見ることができた。

彼は確信した。


(これはもう間違いない。紗耶香は知っている。このズボンの下で常に勃起しているものを)


こう結論を下すと、ではなぜ知ったのかという疑問につながった。

ここをつきとめないと、他の人間にも知られてしまうかもしれないと彼は考えた。今回は比較的に安全な紗耶香だったが、次はそうとも限らない。最悪、吉田にでも気づかれたら一気にスキャンダルは広がるだろう。

小刻みにプルプルと震える紗耶香をよそに、東都は紗耶香と石膏像の延長線上に立ちながら、このように考えをめぐらしていた。やはり東都は鈍感である。


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