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機械仕掛けの情報屋 〜異世界の大好きなお師匠様〜  作者: ビオラン
お師匠さまの情報を探しに

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私の存在自体が不思議

私用で今月だけ更新回数が少なくなります。ご了承ください。

「ねえ、さっきのどう思う?」


 アトリア貴族室に戻ると、レイバーが口を開きました。


「奇妙としか……」

「だよね。だって昨日の今日だよ? 忘れるにしても早くないかい?」

「ええ。それは私も思いました。しかも、皆さんのことは覚えているのに、竜のことだけ思い出せないなんて」


「そこだよね。竜についてだけ抜けている。そんなに竜のことだけポッカリと忘れるなんてあるのかい?」

「思い出そうとしてくださいましたが、それでも出てきませんでしたね。無理させてしまったみたいでした。頭痛は大丈夫だったのでしょうか……」


 すると、レイバーは急に私の顔を指差しました。


「ああ、それだ。僕はそれも気になったんだよ」


「……それ?」


「頭痛だ。あまりにタイミングが良すぎないか?」


「うーん、そう言われれば、思い出すときに痛みを訴えていましたね。頭を使いすぎたとか? いえ、でもそんな程度で……」

「そう。その程度で頭痛はあまり考えられないだろう。それに頭痛持ちでもないときた」

「ええ。急でしたね」


「僕は君達のやり取りを観察していて、気づいたことがあるんだ。杞憂だといいのだけど。……竜のことや、昨日の上への報告内容を思い出した時に頭痛を言い出したように見えたんだ」

「そのタイミングで? でも先ほど記憶を思い出す程度なら頭痛など起こりにくいとおっしゃったではないですか」


「ああ。矛盾しているね。それに、この程度であの酷い頭痛を起こすなら、君の脳内事典なんて大変なことになりそうではないか」

 たしかに、私の脳内事典なら、いつも頭痛になっていてもおかしくないです。

「では、この頭痛に何かあると?」


 レイバーは少し逡巡すると、椅子にドカッと座りました。


「僕は思うんだ、記憶が消えてるんじゃないかって」


「…………え?」


 私は予想外の発言に驚いて、手に持っていた本を落としてしまいました。


「どういうことです?」


「これは僕の仮説だ。隊長は竜やその後の何かの記憶そのものが無くなってしまったのではないか?だから、その記憶を思い出そうとすると頭痛が起きるんじゃないかって」


「記憶が無くなる?」


「ああ。記憶が何かのはずみで消えたか、……それとも消されたか」


「消された……って……そんなことがありえるのでしょうか?」


「なんで?」

「現実的に不可能じゃ……」


 すると、レイバーは少し笑みを浮かべて、手をひらひらとさせながら話しました。


「だって、考えてごらんよ。竜が実在したんだよ? 架空の存在だというものがありえてしまう世界だ。君は竜を信じるんだろ?」


「え、ええ。だってこの目で見たんですもの」


「それに、君の存在自体が、記憶に関する不思議の一つじゃないか。だって君のように脳内事典として、膨大な記憶を保持できる存在がいる」


「たしかにそうですが」


「だから、記憶について何かしら、僕たちが想像できないようなことが起こる可能性も無きにしも非ずってところなんだよ」


 言っていることは分かります。不可能ではあることも、もしかしたらあり得てしまう恐ろしさがあります。


「で、では、ドミニク隊長は意図的に記憶を消された可能性があるのも視野に入れた方が良いと?」

「ああ。憶測でしかないけど。……思い出そうとすると消えた記憶のせいで頭痛がするというのもあながちな違いではないかもしれないね」


「ドミニク隊長は隊長をするくらい有能な方なので、竜だけピンポイントで忘れるのは逆に難しいと思います」

「ああ、そうなると、さらに記憶を消された線が濃厚になってくるね」


「ではどうして」まで言い、私は黙りました。


 そんなの……


「知られたらまずい情報だったんだろうね」

 レイバーが先に答えました。


 やはり……

 私は自分が息を飲む音が聞こえたように感じました。


「そう思うよね」

「昨日、隊長が報告した内容のどれかが問題だったということですね」

「ああ。記憶が無い部分から推測するに、どうも竜に関する話がタブーだったのだろう。」


「ええ、そう思います」


 ここで、私は先程の別のやり取りを思い出しました。


「そういえば、宰相のサイモンさんは竜の話をご存知ではありませんでした! 狼煙が挙がったので、何かしら報告は来ていると思ったのですが」

「確かにそうだね。領地境の治安にも影響するから、竜の話が報告に挙がっているはずだ」

「と、いうことは……サイモンさんに話が届く前に、竜の話が止められた? ということは考えられませんか?」


「そうか、兵士たちの報告は基本的に、上官から上官に報告がされる。サイモンさんの前で報告が止まっているから、サイモンさんには届いてなんだ」

「先ほどの話から、サイモンさんは昨日の領地境でのトラブルは知っていました。境界警備隊からの報告自体は届いているので、竜の話だけが届いていないことになりますね」

「でかした、言われてみればそうだ。だから、ドミニク隊長と宰相のサイモンさんの間で何かがあったと考える必要がありそうだ」


 私は急いで部屋にある黄色のレバーを引きました。沢山の歯車が動き出し、壁に大きな本棚が出現します。


 私はこの中から、貴族の階級に関する資料集を取り出しました。


 境界警備隊の上官にあたるポジションを探します。5人ほど該当しそうですが、これはお師匠さまの時代の古いデータなので、人物名は参考にできないでしょう。


「一応、ドミニク隊長隊長とサイモンさんの間に当たる方々は、探し出すことは出来そうですね」


「うん、もしかするとこの人達が竜について何かを知っている可能性があるね。……いやそれ以上に竜について関りがあるかもしれない」

「竜について関り……」


 とまで言った上で、私は気づきました。


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