表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの情報屋 〜異世界の大好きなお師匠様〜  作者: ビオラン
お城の部屋にて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/41

招待状

 以降、私は弟子の立場を利用して何回か例の貴族の拠点に伺いました。


 レイバーは見た目こそ似ているものの、声が違うのでいつかバレてしまう恐れがあるため、お留守番です。


 その点、私は弟子なので一人でおつかいに来ているとでも説明がつくため行動は余り制限されず都合が良いのです。


 今日もお師匠さまの失踪の手がかりを掴むべく部屋に訪れ、棚の整理をしているところでした。


 ーートントントン


 急に城に繋がる方のドアがノックされました。

 初めてのことです。


 誰でしょうか?


 警戒しつつそっとドアを開けると、入り口の前には一人の紳士が立っていました。綺麗に整えられた白髪と髭、それに片眼鏡をかけており、年配の方の様です。


「これはこれはごきげんよう。君が噂のクラート氏の弟子、フィリーさんですか? 」

 紳士は私の顔を見るなり、大変丁寧にお辞儀をしてこう言いました。

 この落ち着き具合から見たところ、直接害を与える様子はなさそうです。これは、純粋なお客様かもしれません。

 私は慌ててレイバーに教えてもらったように貴族の令嬢がするお辞儀をしました。


「ごきげんうるわしゅう。いかにも、わたくしがフィリーにございます」

「おお素晴らしい。クラート氏から聞いていたが立派なお弟子さんだ」

 どうやらお師匠さまをご存知のようです。これは失礼が無いようにしなければなりませんね。


 すると紳士は少し部屋の中を覗くとこう続けました。

「時にフィリーさん、今日はクラート氏はいらしてないのだろうか?」

「……は、はい。今後は私が代わり来ることになりまして」

「そうか、それはご苦労なことだ。なに、私はただの伝達係でね。今日ここに来たのは君たちにこれを届けに来ただけなんだ」


 そう言うと、紳士は私に一通の手紙を差し出しました。

「手紙……ですか?」

「ああ。ただの手紙ではなく、招待状だがね」

「招待状?」


「実は、ここにクラート氏と君が訪れたとの通達があったんだが、その際に領主が喜んでね。ぜひ茶会に招待したいとのことらしいんだ。勿論君も同伴でね」

「まあ……!」

 なんてことでしょう。私達がここに通っている旨が領主に知られてしまっていたようです。その上、領主直々の招待まで来てしまうとは……それもお師匠さま本人に向けてとあっては一大事です。

 通常ならば大変光栄なことであるはずなのに、素直に喜べません。


「ちなみにですが……予定が合わないなどあった場合は……?」

「私は手紙を届けに来ただけなので、なんとも。でも、領主の招待だからほぼ強制参加なんですがね」

 少しはにかみながらおっしゃいました。

 笑いながら話す案件ではありません。それは是が非でも来いということなのですね。


「では、私はこれにて失礼するよ」


 そう言うと紳士は、呼び止める暇も与えず、風のごとく颯爽と廊下の先に消えていきました。


 ……大変なことになりました。


 私は慌てて扉を閉めると、部屋で手紙を開封しました。


 手紙には、先ほどの紳士の発言通りの内容が書かれています。

 先ず、お師匠さまのクラートが生還できていた喜びの言葉。そして、今後主催される茶会について。あの時……竜の件の無理無体な依頼の詫びと労いの意を込めて、茶会に招待したいとの旨がしたためられていました。それも、お師匠さまと私の名が連ねて。


 さて、どうしましょうか。


 恐らく、貴族街と平民街を繋ぐ秘密の入り口にいた管理人が貴族絡みの方で、私達がここに通っているのを貴族側に報告しているのでしょう。あの方はレイバーのことをすっかりお師匠さまと勘違いしていました。だとすると、お師匠さまが生還したと思われても仕方ありません。

 でも、実際にはお師匠さまがお戻りになったわけではありませんから、招待状をいただいてもお師匠さまをお連れすることは不可能です。

 顔の似ているレイバーはいますが、顔だけではごまかしが出来ないかもしれませんし、どうしたことでしょうか。


 急ぎ、平民街のレイバーにこの件を伝えました。

「という訳なのですが、どうしましょう……」


 すると、レイバーは少し考える素振りをしたのも束の間、私の焦る様子とは裏腹に決断をさらりと下しました。

「そんなの、参加すればいいじゃないか」


「まぁ! でもお師匠さまはいないのですよ?」

「代わりに、僕が行けばいい」

「え?! 」


「顔が瓜二つなんだろう? この顔を使わなくてどうする? 」

「で、ですが……絶対にバレてしまいますよ?」

「大丈夫だって。それに、領主命令では行かざるを得ないんだろう?」

「それはそうですが……」

「なら、行く以外の選択肢はないはずだ。何とかしよう」


 そう言うと、レイバーはそそくさと準備を始めました。

 私が苦り切った顔をしているのを気にも留めていないようです。


 以降何度も説得を試みましたが、レイバーは行くの一点張りで聞きません。むしろ「案がある」と言って仕方ないので、私も渋々準備を始めました。

 私としてはリスクを最小限に抑えたいので他の方法を探したいのですがね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ