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機械仕掛けの情報屋 〜異世界の大好きなお師匠様〜  作者: ビオラン
婚約者を探して

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24/41

付き合う?

「僕と付き合ってくれないか?」ですって?聞き間違いでしょうか?


 予想外です。まさかそんな発言が出てくるとは。あまりの展開に目が泳いでしまいました。それに段々と脈拍数と体温の上昇を感じます。

 いや、ダメです。私はお師匠様一筋。お師匠様以外にドキドキなんてしてはいけません。でもレイバーはお師匠様と顔がそっくりで、なんだかお師匠様にいわれている気分です。私は思わず深呼吸しました。


 すると、その様子を面白そうに見ていたレイバーは、あろうことか吹き出しました。

「ははっ」

「!?」

「あはは。ごめんごめん、僕"に"付き合ってくれないかの間違いだね」

「……?!」

「ちょっとからかっただけさ。君が師匠一筋なのは有名だからね。クラートさんだっけ? に勝てるとは思ってもいないさ。安心したまえ」


 なんて人でしょうか。最低です。お師匠様一筋の私を試すなんて。

 お師匠様と同じような顔でも、性格は全くの逆です。怒りで私は思わずぷくりと頬を膨らませ、そっぽを向きました。

 すると、レイバーは少し楽しそうに私の顔を覗き込みました。

「フィリー。君、そんな顔もできるじゃん」

「え?」

「いつもどこか一線を引いていて、近寄り難いオーラをしているからね。本当はどんな人なのか知りたかったんだ。通称機械仕掛けの情報屋って言うから、人間味を忘れた人なのかと思ったよ」

「私は確かに、自分の感情に疎いところもありますがこれでも大昔よりは感情的且つ素直になりましたよ」

「そのようだね」


 私は少し不貞腐れながらも、チラッとレイバーに目線を戻しました。

 目が合うと、レイバーは微笑みます。

「機嫌を損ねさせてごめんね。では、君がさらに不機嫌になる前に本題に移ろうか。」


 すると、座り直して、改まったように話し始めました。

「僕は君と仲間になりたいんだ」

「……仲間ですか?」

「前に君と使命が一緒と言ったのは覚えているかい?」

「……はい。言ってましたね」


 私が首を傾げます。


「では、先ずいい物を見せてあげよう。手のひらを広げてごらん」

 レイバーは私の手を覆うように、握っていた手をそっと放しました。

私はそっと手を開き……中にある物を見て、思わず息を飲みました。

「……!!」


 入っていたのは指輪……それもただの指輪ではありません。

 見覚えのある星と羽の装飾が施されていました。

 これは、見間違うはずがありません。お師匠さまを攫った竜がつけていた首輪の柄と同じものでした。


「これは……! どうして?」

「うん、やっぱり君はこれを知っているようだね」

「もしや、何かこの柄について、ご存知なんですか?」

 私が勢いよく乗り出すと、レイバーは少し私を落ち着かせるようになだめました。

「残念ながら、僕はこの柄について詳細は知らないんだ」

「そう……ですか」


 一瞬期待した自分に落胆しました。


「そんなに気を落とすとは、この柄が余程君にとって重大なんだね。それで確信したよ。やはり、僕と君は気が合いそうだ」

「どういうことでしょうか? それに何故詳細をしらないのに、この指輪をお持ちなのですか?」


「落ち着いて。順を追って話すよ。実は、……僕は人探しをしているんだ」

「……人探しを?」

「うん。僕の一族を陥れた犯人を捜しにね」

「まぁ!」


「いきなりこんな話、驚くのも無理ないよね。少し辛いが聞いてくれ」

 私は頷きました。レイバーは話を続けます。


「実は、僕は別の領地の貴族なんだ」

「……貴族だったのですか?!」

「そう。経営者の家系で、昔はね、それはそれは順風満帆な人生だったよ。しかしある日、突如一家が襲撃されたんだ。僕は偶然留守にしていたんだけど、帰ったら酷い有様だったよ」

「それはお気の毒に」

「で、僕は悔しくてね。いつかそいつに復讐してやりたいと思ったんだ。未だその犯人は分からないんだが、幸いにも一つだけ現場に手がかりが残されたんだ。それがこの指輪さ。恐らく何かのはずみで犯人が落としたんだろう」

「では、これはその時の犯人の物?」

「だと踏んでいる。そして、僕は調べた結果この領地が関係しているところまで突き止めたんだ。そこで、僕は旅商人としてこの領地に潜入し、犯人の手がかりを掴もうとしているわけさ」

「では、元々他領の貴族だった方が、犯人の手がかりを探すためだけにこの商売をされているのですね?」

「ああ。元々貴族で手広い商売をしていたから、貴族のお客様にも好評でね。金にがめつい性分だということであまり怪しまれていない」

「そうだったのですね」


「……でだ。そんな中君と出会ったんだ。どうやら指輪と同じような柄に執着している人物がいるとね」

「どうして」

「同じさっきのミラージュの話、悪いけど聞かせてもらったよ。君があの貴族の指輪に反応し、その上星と羽の柄なんてとんでもない言葉を発しのに僕はとても驚いた。と、共にとても嬉しかったんだ。これは希望が持てたとね」


「聞いていらしたのですね」


「情報屋の君がこの柄を探していると知った時、渡りに船だと思ったよ。元々、この街一番の情報屋と聞いたから依頼する予定だったんだ。だからミラージュのことで恩を売ったり、あと街で少し探りを入れたりしてみた。貴族と関わりが欲しそうだったから目的が一緒だと仄めかして、懐柔するつもりでもいた。でも、そんなことしなくても、僕らは探すものが一緒だったんだ」

だから、少し鋭い質問が多かったのですね。


「噂によると、君は大切な師匠を探しているんだろ? しかも敬愛、いや、最愛の。君が依頼以外で個人的に執着して探し回るとすればその師匠のクラートくらいしか思いつかない」

「……」


「ひよっとして、この柄に君の師匠の件も絡んでいるんじゃないかい?……それが本当なら、僕と君は同じ謎を追っている。おそらく同じ使命を持っていると同然なんだ。それも執着するくらいに大きいね」


 まさかここまで読まれるとは思いませんでした。

「大丈夫、君のことは秘密にするし、僕としてもこのことはバレたくない。それに君に協力してもらう必要がある。裏切りようがない。」


 確かに、この方にとって私に手の内を明かすメリットは協力するから以外ありえません。

「だから、僕と仲間になってくれないか?」


 レイバーからスッと手が差し出されました。

 確かに、首輪の柄を秘密を探るには一人だと限界があります。何故なら、私一人で解決できそうな問題であれば、既に解決しているはずなのですから。この期に及んでまだ解決できてないのは、おそらく私の限界を示しているとも受け取れます。

 大変悔しいことではありますが、ここはこの方と手を組んでみるのも手かもしれません。この方の情報を知っていれば、状況が傾いた時、何か対処できることも増えるでしょうしね。


 私は差し出された手にそっと手を乗せました。

「はい。私も自分の限界を感じておりました。できる限りご協力いたしましょう」


 レイバーは嬉しそうに手を握ると、握手をするように上下に手をゆすりました。そして、少し控えめですが好奇心に満ちた目で私に言いました。


「では、仲間の証として、もしよかったら、君のことを話してほしい。凡そは見当がついているが、推測の領域と事実は一緒にしていてはいけないからね」


 それはそうです。

「では、お近づきの印に私の話をいたしましょう」


 私は、大好きなお師匠さまとの素晴らしい思い出、そして事件でお仕事が行方不明になり、星のマークが鍵であることを話しました。

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