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2023年度

※期間限定の公開とします。


〈僕側の視点〉


今日は大学生になって初めての文化祭。

去年まではコロナがあって、高校生の時には文化祭なんて物を体験できずに終わってしまった。青春未経験の僕は、このキラキラとした文化祭に心弾ませていた。

とは言っても、大学ですぐに入った文芸部の出し物の店番しかしてないから、華やかさからは遠いかもしれない。


ちょうど文化祭の休憩時間でのこと。

僕は、自分の小説の挿絵を描いてもらっている友達と部室である四階の空き教室で窓の外を眺めていた時の事。

「うわー文化祭ってすごいね。こんなに外部から人が来るんだね!」

しげしげと外を見渡している自分に対して、友達はスマホをイジっていた。

「まーメインステージで、芸能人きてるから、それのファンとかなんじゃない?」

「なるほど…。これだけ人が居たら僕等が書いた小説も読まれるかな?って思ったんだけど…そうはいかないか……」

文化祭の我が部での出し物は部誌、入学してから七ヶ月間書き続けてきた物を一般公開することになっている。とは言っても、僕はそんなに小説を書き上げるスピードがないので、いままでネットにちょこちょこ上げてきていたものをそのまま転用したような形ではあるが、文化祭の出し物としていろんな人に読まれれば、感想札というものがあって、自分の作品に対するお便りがもらえるかもしれない!と心を弾ませているのだ。

「俺は挿絵しか描いてないけどね。……ん?」

ずっとスマホを覗いていた友達が何かに気づようだい。

「どうしたの?」

「ハッシュタグ…うちの大学トレンドに入ってる?!」

「……え?」

立ち上がって、僕のほうへやってきた友達のスマホには、たしかに僕等の大学名が記載されている。タップしてみると、そこには、一人のイケメンが写っていた。文化祭だし、イケメンが好きな女子が投稿したのかな?と思ってみたんだけど、どうやら違うみたいだ。

そのイケメンの容姿は、真っ黒い格好で悪目立ちしていた。明らかに怪しい雰囲気をかもしだし近寄り難い雰囲気なのに、目を奪われるほどの綺麗さを持っていた。大学のゲストの芸能人をはるかにこえたイケメンだった。

「それにしても、すごい格好だな……」

僕がもう一度、窓の外を見ると、ちょうど正門からその男が歩いてきているところだった。周りの女子からすごい注目されている。

僕は目が悪いので、四階の窓から少し身を乗り出して外を見た。

その僕の視線を感じたのか、その男は黒い帽子を取って顔を上げた。僕はばっちり目があってしまった。帽子をかぶりなおした男が、いま僕のいる校舎に入っていくのが見えた。

目があった時もなんだか、不敵な笑みを浮かべていたような気がする……。

「なんか、ネット見る限りだと、うちの大学の女子が『文芸部どこ?』って聞かれたって噂になってるけど」

どうやら、その人物はこの大学の文芸部を探しているらしかった。僕は、この怪しげな人物に少しばかり心当たりがあった。

「……………!!」

「どうした??」

友達の『男は文芸部を探している』という言葉に僕は、一目散に文芸部の出し物をしている場所に走った。

「(マズイ!あそこには、まだネットに上げてない作品が置いてあるのに!!」

文化祭の文芸部での出し物をしている教室は三階だ。さっき一階から彼が上がってきたとするのなら、僕のほうが出し物をしている教室には早くつける計算だ。

猛ダッシュをして、先輩達が店番をしている教室に息を切らせながらたどり着いた。

そこに、部誌を呼んでいる人は…一人もいなかった。心の中で「よかった、間に合った。」と、自分の作品が載っている部誌の前までやってきた。

そこに1枚のメモが挟まっているのが見える。


『拝読しました。68』


メモは部誌の自分の作品のところに挟まっていた。そこには、彼のHNである数字とコメントが記されている。

「(…まさか、先を越された?!」

相手の階段を上るスピードが物理的にありえない速度でやってきている計算になるが、僕はバクバクと動く心臓のまま、部活の先輩にこの教室に来た人物がいたかを聞いた。

「あの!いま、ココに真っ黒い格好をした男がきましたよね?!」

部長は、僕からの質問に首を傾げた。

「え?さっきまでそこに人はいたけど、高校生の制服を着た女の子だったよ?」

……まだ、彼はココに到着していない?いや、メモがあるのだから、間違いなくココにやってきたのだろう。でも、だとするなら僕よりも早く階段を駆け上がり、どこかで着ていた服装も着替えて部誌を読んでメモを残したことになる。

「あーやっぱりここにいた。一体、どうしたんだよ。いきなり走り出して」

そこへ数分遅れて友達が到着した。

「……いま、ココに来る間に高校生の制服を着た人とすれ違った??」

「高校生の制服を着てる人なんて文化祭なんだから、たくさんいるだろ?」

目立つ格好でやってきて、帰りは人混みに紛れるように着替えたのか?彼はいったい、何がしたいのか僕にはよく分からなかった。

僕は三階の文芸部の教室から、窓の外を見た。

そこには、この建物からちょうど出てきた高校生風の人物が、さっきの男と同じように僕に向かって顔を上げた。

そして、さっきと同じように不敵な笑みをこちらに浮かべる。まるで…「気づくの遅かったね」とでも言いたそうな顔をしていた。

間違いなく高校生に扮しているのは、さっきの黒ずくめの彼だ。

彼は、文化祭の目的が文芸部にしかなかったのか、そのまま帰っていってしまった。

いまから走っても彼が学校を出るまでに呼び止めることは不可能だろう。

彼とはネットの世界で知り合っただけの存在だから、連絡先を知らない。

でも、驚かせるためにわざわざ学校まで来たのなら話くらいしていったっていいのに。

とはいえ、僕も何を喋れば良いのか分からなくて、ただ焦りそうではある。

でも、いつも作品を読んでくれてありがとう。くらいは言えたかもしれない。

いや、違う……向こうが僕と喋りたくなかったんだ。きっと彼なら、僕が店番をしている時間を割り出すことなど造作もないことだっただろう。わざわざ僕に会わない時間を選んで来たんじゃ……?

はぁ…こうなってしまうと僕は、悪い事ばかりを考えてしまうという癖が出てきてしまう。

「どうした?知り合いでもいた?」

「ううん…。僕の勘違いだったみたい……」

僕は、彼からのメモをズボンのポケットに押し込むようにクシャッとしまった。

考えても答えが出ないような事で時間をとられては駄目だ。せっかく楽しい大学生活が始まったんだから文化祭を楽しまなくちゃ。


※部誌を読ませていただきました。2023/11/03

てゆーか…メモの裏まで確認しなよ(苦笑

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