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第6話:低姿勢なドラゴン

 なぜか呆れた様子のアリア。


「俺、何か変なこと言ったか?」


「い、いえ……問題ないです!」


 ふむ、問題ないならいいか。


「その依頼、受けさせてくれ」


 ◇


 ということで、一時間ほどかけて討伐対象の竜たちがいるらしいクレスト渓谷までやってきた。


 崖と崖の間に挟まれた川の近くにいるという話だったのだが……。


「どこにも見当たりませんね」


「そうだな。地図ではここになってるんだろ?」


「はい、間違いないです」


 俺が地図を見ると些細なことで破いてしまうため、案内はアリアに任せている。


 そもそも、地図を確認するまでもなく地理に関してはおおよそ把握しているため、これだけだだっ広い場所なら間違えようがない。


「お散歩に行っちゃったんですかね?」


「まあ、そんなところだろうな。見てくれ、茂みの中に巣がある」


 鳥の巣のように植物のツタなどが絡んだ物体。無論、大きさは普通の鳥の巣とは比べ物にならないのだが。


「え、これ巣なんですか!?」


「多分な」


「ということは、ここに戻ってくるんですね!」


「だと思うけど、問題はいつ戻ってくるかだ」


「気長に待つしかありませんね……」


「そうでもないぞ」


「え?」


 俺は、空に向けて左手を向けた。


「ちょっと耳を塞いでおいてくれ」


「な、何をするのですか……?」


「ここからそう離れた場所にはいないはずだから――」


 『小火球』!


 ドガアアアアアアアアアアンンンンッッ!!!!


 地上を破壊しないよう空高く『小火球』が上がったところで爆発させたのだった。


 轟音とともに爆風が渓谷中に降り注ぐ。


 草木が大きく揺れ動くほどの衝撃に気付かない者はいないだろう。


「これで戻ってくるはずだ」


「パ、パワープレイすぎますよ……!」


「ま、ひたすら待つよりはいいだろ?」


 そんな話をしていたところ、俺の習い通り大きな影が空を覆った。


「グルルルルルルル……」


「グオオオオオオオ……」


 空から大きな竜の鳴き声が聞こえたかと思うと、巣の近くにドスン! と舞い降りた。


 獰猛な牙を見せ、二体の竜は俺たちを睨んできた。


「ようやくお出ましだな」


「ひ、ひいいいいいい……想像の百倍くらいやばいです!」


 そこまでビビらなくても……。


 五年前に戦ったあの黒竜と比べれば、目の前の竜から感じる魔力の大きさなどたかが知れている。


 とはいえ、仕方のないことなのかもしれない。


 話によればアリアはCランクの冒険者らしい。このくらいの相手と戦うのは初めてなのだろう。


「アリア、ドラゴンっていうのは実はそんなに強くないんだ。ほら」


 そう言いながら、俺は『小火球』を二体の竜のうちの一体にぶつける。


 衝突し――


 ドガアアアアアアアアアアンンンンッッ!!!!


 と爆発による轟音が鳴り響いた。


 ドラゴンはほとんど燃え尽きてしまったものの、辛うじて回収できそうな残骸は残っている。


 俺一人なら消滅させてしまっていたことは間違いないので、アリアによる弱体化の恩恵は本当に大きい。


「な? 簡単だろ?」


「ミナトが規格外なだけですよ!?」


「そ、それは否めないが……」


 とはいえ、この程度の魔物なら近いうちにアリアにも倒せるようになるはずだ。


 多分……だが。


「さて、あと一体片づけて――ん?」


 左手を残った一体のドラゴンに向けたところ、なぜかドラゴンは焦った様子で両手を上げていた。


 ドラゴンに手は存在しないのだが、前脚を全力で空に掲げて抵抗の意思なしを示す様は、人が両手を上げて降参したかのような格好だった。


 それから。


「や、やめて! 降伏する! 降伏するから許して! あなた様には適いませんわ! ど、どうか命だけは……!」


 ものすごく低姿勢で謝罪してきたのだった。


「ド、ドラゴンが喋りました!?」


「え? お前喋れるのか?」


 言葉を話せるドラゴンは、五年前に遭遇して以来だ。


「は、話そうと思えば話せる竜は多いのですわ! 私以外にも!」


 そうなのか。


 確かに、出会ってすぐに倒してしまうことが多かったので、話せるかどうか確認したことはなかったな……。


「ご、ご慈悲を! な、なんでもしますわ! あっ、靴底舐めてもいいですわよ!!」


 このドラゴン、どれだけプライドがないんだ……?


 なお、俺は靴底を舐められても嬉しくないのでその提案に効果はないのだが。


「……と言われてもな。俺たちはギルドからお前たちを退治するよう依頼を受けて来てるんだ」


「そこをなんとかですわ!」


「無理なものは無理だ。今回放置して、また暴れたら取り返しがつかない。冒険者を襲ったと聞いているぞ」


「そ、それ私じゃないですの! あなた様が倒したそこのやつ! こいつが襲った! 私は辞めた方がいいって止めたのに……!」


 本当かよ……?


 どちらにせよ、証明する手立てがない以上はこいつが人間に敵意を見せない保証はどこにもない。


「気持ちはよーく分かったが――」


「ま、待って! 契約! 主従契約! それならいいですわよね!?」


「主従契約だと……?」


「私、あなた様に生涯の忠誠を誓いますわ! その代わりに殺さないでほしいですの! 一生のお願いですの!」


 うるうると涙をこぼしながらお願いしてくるドラゴン。


 なんだか、これではいじめをしているような気分になってしまう……。


「その主従契約とやらをすれば人間を襲わなくなるのか?」


「その通りですわ! あなた様の命令に忠実に従うようになりますの」


 なるほど、僕みたいなものか。


「私、あなた様のペットになりますの! ペロペロ~ってしますの!」


「ペロペロはいらんが……まあ、そこまでするなら殺す理由はないな」


 この依頼の趣旨は冒険者を襲う脅威を取り除くことなので、俺の指示に忠実に従うようになるのなら、殺さずとも目的は達成したことになる。


「ほっ……良かったですの。じゃあ、さっそく契約をしますわ! 私の頭に手を置いてほしいですの」


「ちょっとでも変なことしたら殺すからな?」


「ひっ……わ、わかってますの……!」 

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