#1 人類消失
今日から「情酌と自然」という連載小説を始めます。宜しくお願い致します。
二〇二三年四月一日一二時〇〇分、人類は消えた。ただ、五人を除いて――。
* * *
それは一瞬だった。時計の短針と長針が丁度、十二を指したときのことだった。
私の周囲にいた「人類」は消えてしまったのである。先程まで町を歩いていた、貴婦人も、幼児も、自転車で都心を駆け抜ける配達員も、突然存在がなかったかのように、いなくなったのだ。
疑念よりも恐怖が私を包み込む。先程まで目の前にあったありふれた日常は、一瞬にして奪われたのである。皆はどこへ? 夢か? どうなっているんだ......。
昼休みが他よりも三十分早く始まる私の会社の社員は、昼休みを満喫している最中であった。私も、コンビニで昼食を買ったため、会社に帰るところだった。
夢であってくれ! そう思ったが、一向にそれが冷める気配はなかったのだ。私は焦り、会社へと走る。頼む、会社には人がいてくれ......! その思いでいっぱいだった。
会社に着いた。だが、社内を見渡しても人影は見当たらなかった。夢でもない。おかしい。私は更に恐怖して、その場で崩れ落ちた。
私の頭がおかしくなったのか? 幻覚でも見ているのか? しかし、これは現実であるということはなぜか手にとるようにわかった。
そうだ......! 私はふと思い浮かんだ。家族はいるのか? 友人は? 人が消えたのはここだけなのか? そう疑問(名案)が並び立ったのである。助けが取れるかもしれない! 希望が見えた。
私はまず警察に電話した。人が消えたのがここだけなら繋がるはずだ。しかし、警察は繋がらなかった。おかしいと思って色々な日本各地の団体に電話をしたが、どこにも繋がらなかった。皮肉なことにもこれでこの「人が消える」という現象は大規模なものだということが証明されてしまったのだ。
頼む、家族だけはあってくれ。そう思いながら、神に祈るような気持ちで電話をかけた。だが、誰一人として、繋がらなかったのである。家族まで消えてしまったのか? 私は絶望した。
これではこの世界にたった一人、自分だけが取り残されていることになる。もう無意味であることは十分にわかっていたが最後の希望として友人も片っ端から電話をかけた。
電話帳に載っている友人は電話を掛けているが十人掛けても繋がらない。今は四月で温かいはずなのに私は悪寒で凍えた。
もう、だめだ。そう思った。私がたまたま残っているだけで他の人類は消えてしまったのだろう。私はもう希望も何もなしに、掛ける順番としては十一人目の友人に電話を掛けた。
電話を掛け始めて十秒。カチャッと音が鳴った。
――友人は電話に出たのである......!
読んでいただきありがとうございます。ぜひ次回も宜しくお願い致します。




