サラリーマン、くたくたになる。
鉱石祭の初日、謎のおじいさんがレジの実演をしてから、それはもう大変だった。
実演を見ていた人から「私も」「俺も」と、実際に使ってみたいという人が続出したのだ。
予備に持って来ていた分も引っ張り出して、レジが4台。それでも足らず、販売分のジテンも6台をサンプル用におろした。
合計10台の電卓をテーブル代わりの木箱に並べると、よく分からない内に聴衆参加型のタイムアタックになっていた。
急遽手書きで増産した実演用の帳票サンプルを10名が持ったら、よーいどんだ。
3回目ぐらいには、「計算には自信がある」という商人が暗算で参加したりもした。
もはや魔道具の実演ですら無い。いや、暗算との比較にはなるから催しとしては良いけども。
ちなみに「第3回集計レース」は、その商人のぶっちぎり優勝だった。あのおっさん、暗算クソ早いよ…。
そんな感じで当初予定していたものとは様変わりしてしまったブースだが、盛り上がりは凄かった。
悪ノリしたガストンさんが「各回の優勝者を集めて夕方に頂上決戦をする。」とか言い始めたのも、聴衆をさらにヒートアップさせた。上位3名には商品としてジテンが1台ずつ渡されるのだが、そのお値段は18万コル。日本で言えば大型テレビぐらいの値段だろうか、買えない値段でもないが、タダで貰えるなら嬉しいという所だ。
集計レースをしてる最中から次の回の参加希望者が来るものだから、俺は別のブースへ魔道具の買い付けに出ていたスミナ商会員も引っ張り出して行列整理だ。
帳票サンプルの集計結果を記憶されても困るので、ゲイルさんとメアリには裏で何パターンかの帳票サンプルを量産して貰った。
もはや何のイベント会場だよ、という有様だったが、そのおかげでジテンは売れに売れた。
本日分として用意していた80台は、サンプル用と景品用にした9台を除いて昼過ぎには完売だ。
もはや昼飯を取る余裕もないままブースに来た人を回し続け、ようやく夕方になった頃、決勝戦を見に訪れた人は100人近かった。しかも怪しいおっさんが「誰が優勝するか」を賭ける胴元を始めたせいで、観客の盛り上がりはいよいよ手が付けられないものになった。
決勝戦の最中には「ピーター!今月の給料はお前にかかっている!頑張ってくれぇ!」などの声が飛び交っていた。いや、ピーターさんはお前が賭けに突っ込んだ給料のために頑張りはしないだろうよ。
決勝戦が終わると歓喜を上げる人や崩れ落ちる人など、ひどく明暗の分かれる結果となった。
しばらく行ってないのだが、レース終了直後の競馬場で良く見た光景である。
まあそんなものはどうでもよろしいので、上位3名にお祝いの言葉と共にジテンを進呈して、さっさとブースを閉めた。
各員が疲労困憊で座り込む中、ガストンさんだけは高らかに笑った。
「がっはっは!昼過ぎに完売だぞ。笑いが止まらんな!明日も頼むぞ!」
まあ今日だけで俺の給料3年分以上の売り上げをたたき出しているのだから、そりゃ商会長としては笑いが止まらんのだろう。
だが、そんなんどうでもいいぐらいに疲れた。
昼飯も食って無かったし、俺はさっさと飯食って宿で寝るとしよう。




