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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
世界のハマダ編
89/123

サラリーマン、開会式に出席する。

鉱石祭の開会はカレルの中央にあるセイゼル広場にて、参加者だけでなく見学や仕入れ目的の人達なども集まる中で盛大に行われた。


「皆様、この度は鉱石祭にご来場頂きありがとうございます。イナリア商会長を勤めるリグリアと申します。」

あれがイナリア商会長なのか。

ガストンさんやガロンさんの様に、活力が満ち溢れた感じはしない普通のおじさんに見える。ランポートでも最大の商会と聞いていたので、少し意外だ。


「開会の前に簡単に歴史の紹介を致します。何度か来られた方は退屈でしょうがご容赦ください。皆様もご存知の通り、鉱石素材というのは生物性の素材に比べて機能が単純です。一昔前は魔道具といえば動物素材が当たり前、使っても植物素材がせいぜいというものでした。」

俺がこの世界で最初にお世話になったヒタギ石の翻訳指輪なんて、その最たるものだろう。生物の機能をそのまま魔道具として使っているからだろうが、光るだけの共鳴石との違いは酷い。値段も言わずもがなだ。


「しかし、それぞれの機能が単純でも組み合わせれば複雑な事もできる。そういった魔道具を繋ぎ合わせれば、もっと凄い物もできる。そう語った初代商会長は、取引のある魔道具工房から職人を集めて技術交流の場を作った。それがこの鉱石祭の始まりであると伝えられています。」

随分と先進的な考え方をする人だったのだろう。

ともすると、飯の種である技術や知識を失いかねない交流会を作るというのは聞くほど簡単ではないはずだ。


「今回の選定品も、どれも素晴らしい機能を持つ魔道具ばかりです。職人同士で技術交流をするのも良いでしょう。商人の方は製品を持ち帰って売るのも良いでしょう。この場に集まった皆様には、是非とも鉱石素材を更に大きく羽ばたかせて頂きたいと思います。それでは、鉱石祭の開会を宣言致します!」

宣言と同時に聴衆の間にわあっと歓声と拍手が広まった。

初代商会長から確たる理念を持って続けられてきた、由緒あるお祭りなんだな。もっと軽いイメージがあったが、しっかり気を引き締めて挑もう。



「ヤマダ、会場設営に行くぞ。」

「はーい。」

開会式も終わり、広場に集まった人々が散り散りになると、とうとう本番に向けた準備だ。

俺たちは明日から3日間、連続で担当となっている。

ブースは3日間同じ場所を使えるので、販売や実演に使うテーブル代わりの木箱等はそのまま置いておける。


イナリア商会から指定されたブースに着くと、ガストンさんの指揮のもと、スミナ商会員達は販売カウンターを設置して手順を確認していく。


「ハンナさん、俺たちは人が来たらレジとジテンの実演をしていればいいんですよね?何か準備とか要ります?」

「あんまり無いかなぁ。説明しながら実演用の帳票を集計してもらうから、椅子とテーブル代わりにそこの木箱に布を掛けておいて。職人とか詳しく聞きたいって人は私が奥のスペースで対応するから、そっちに案内してね。」

通販番組みたいに「面倒な計算も、これを使えばほら!あっという間に出来ちゃいます!」とまではやらなくていいだろうが、そんなイメージでいいか。


ちなみにこの実演、魔道具が使えない俺の時はメアリに手伝ってもらい、交代要員のゲイルさんは1人でやる。


今更だけど、魔道具が使えない魔道具職人ってなんなんだろうな。根本的な話をすれば、魔道具職人ですら無いんだけども。

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