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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
世界のハマダ編
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サラリーマン、揺れる。

ロナウ国内の移動は1度野営の機会があったり、その際に熊みたいなのが出て追い払うというハプニングはあったが、ワットさんの言った通り特に問題は無かった。


熊は夕食中だったにも関わらず目ざとく接近に気付いたハンターが笛を鳴らすと、すぐに森へと帰って行った。

多分あの笛も魔道具だったんだろう。熊よけの鈴みたいに音が鳴るだけなら、接近は防げても既に接触した獣を退けるような効果は無いだろうし。


俺がぼーっとそんな事を考えながら遠くを見つめていたのには理由がある。ロナウ北東部の港から船に乗ったのだが、凄まじく揺れるのだ。

何度も釣り船に乗ったが酔ったことなんて無かったのに、こんなに酷い船酔いになるとは…。ちなみに、今朝の朝食は既に海へ放出済みである。


なんか揺れ方がおかしいんだよな、この船。

最初は帆船に乗るのが初めてだからかとも思ったが、船の後部から駆動音みたいなものが聞こえるのだ。

魔道具か何かも推進力として使っているのだと思うが、それが悪さをしてこの縦揺れが産まれている気がする。


青い顔をしたまま甲板の端に座っていると、ガストンさんが水を持って来てくれた。社長、すまねぇ…。

「ヤマダ、そろそろ昼飯だが食えそうか?」

「ダメそうです…。向こうの世界ではあまり酔わなかったんですけどね…。」

「″混合船″の揺れは独特だからなぁ。ゲイルも使い物にならなそうだったが、何日かすりゃ身体も慣れるさ。飯が食えなくても水は飲んどけよ。」

吐いてばっかじゃ脱水症状とかになりそうだから、水は取っているが、取った分だけ出してる気はする。


何日かすれば身体が慣れるというが、こんなの何日もやってたら衰弱死してしまうぞ…。



そう思っていた程に酷かった船酔いだが、ガストンさんの言った通り船旅4日目には何事も無かったかの様に慣れていた。人体の適応能力ってのは本当に侮れないものだ。

最初の2日は水と果実水で命を繋いでいたというのに、昨日には揺れる感覚はあるものの吐くほどでは無くなり久々に食事もとれていた。


一昨日までは二度と船…というか″混合船″とやらには乗るものかと思っていたが、落ち着いてみると潮風を楽しむ余裕も出てくるのだから不思議なものだ。


船室から現れたトトさんに挨拶をすると、俺が目的だった様で話しかけられた。

「ヤマダさん、どうですか身体の調子は。」

「もう大丈夫そうです。ご心配おかけしました。」

「ははは、最初は大体皆そうなるものですよ。ところでヤマダさん、鉱石祭から帰った後で構わないのですが、ウチの商会で鉱石素材の勉強をしてみませんか?」

「勉強…とはどういう事で?」

「ガント商会は主に植物素材と鉱石を扱う商会です。特に私の担当する鉱石の事をもっと知って頂ければ、今後の取り引きが増えそうでしょう?ハンナさんとゲイルさんにも同じ話を持ち掛けたら、ヤマダさんは鉱石を10種類も知らないんじゃないかと言うじゃないですか。」

えーと、つまりなんだ。社外研修か?

いや、違うな。無料みたいだし営業も含まれるから、展示会の方が近いか。


「今のところは鉱石祭の後の予定も決まってないので、ガストンさんに相談してみます。」

「あぁ、ガストンさんからは既に許可を頂きましたよ。本人が行く気があるなら構わない、と。」

既にしっかりと外堀を埋められてるじゃねぇか。

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