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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
コンサルタント編
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妻、妊娠中に想いを馳せる。

最近は本当に楽な生活を送っていると自分でも思う。


思えば、これまでの人生は中々に辛い日々だった。

お父さん、お母さんと3人で楽しく暮らした日々や、妹と弟が産まれて楽しそうに笑う両親はあっという間に失われてしまった。


病気で弱っていくお母さんや、あちこちと薬を探して疲れて帰ってくるお父さん、お母さんが亡くなった後に徐々に傷が増える様になったお父さん、そんな2人の顔ばかりが頭に浮かぶ日々が続いた。

それでも私は挫けるわけにはいかなかった。ベナとイルの生活は私にかかっていたのだ。


それからは誰かに謝っていた記憶ばかりだ。

払えなかった家賃を待ってもらったとき、家でできる内職を何とかやらせてもらったとき、娼館にお金を借りたとき、お客さんが私の魔素が薄くてがっかりしたとき、仕事の日にまだ7歳だったべナにイルのご飯を作ってもらうとき、素材屋の仕事中に疲れて居眠りをしてしまったとき、そんな記憶がいくらでも思い浮かぶ。


素材屋でハヤトさんに声をかけたのだって、ただの営業だった。

素材屋でニコニコと店番をしていると声を掛けてくる人は結構居るのだ。そういう人はちょっとでも稼ぎの足しにするために夜の店にも誘った。誰も2回目は来てくれやしないが、1回だけでも稼ぎにはなる。自分でも嫌な女だとは思うが、なりふり構っている余裕なんて無かった。


ハヤトさんが娼館に来たときだって、別に期待はしていなかった。「どうせ2回目は無いんだけどなぁ。」と思いながらも、ハヤトさんがあまりに嬉しそうな顔をするものだから、ちょっと頑張った。

次の日に起きたハヤトさんから、満足そうな顔でお礼を言われた。私はお金を貰ってその分の仕事をしただけなのに変な人だ。落とし人だからかしらと思った。でも、嬉しかった。


翌月にはハヤトさんが友人二人を連れて店へ来た。しかも、代金はハヤトさん持ちだ。意外だった。

「またお金が貯まったら来てくれるといいな。」とは思っていたが、1ヶ月でそんなに稼げるほどハンナさんのお店が流行っているとも思っていなかったから。


聞けば、ハヤトさんは実はスミナ商会員で、大きな仕事を終わらせて多額の特別手当てを貰ったのだと言う。


逆転のチャンスはここしかないと思った。

いつになったら完済できるか分からない借金を細々と返していくより、この人の愛人をする方がよっぽどマシだと思った。

べナとイルが独り立ちするまでもう少しだ、その間の食費ぐらいは出してくれそうな人だし、という下心もあって、身請けを持ち掛けた。


私の身の上話を聞いて少し悩んだハヤトさんだったが、あっさりと私の身請けを了承した。

ほっとしたのも束の間、そこからは急に全てが好転してしまって、今でも夢を見ているんじゃないかと思う事がある。


私は愛人じゃなく妻になっていたし、食費だけでも貰おうと思っていたべナとイルは一緒に住んでいるし、家具や服も買って貰った。

外国に旅行へ連れて行ってくれたと思えば、高価な指輪を買ってくれた。そして、気付けば子どもができた。


そうすると、ひとつ心配なことができた。

結婚して半年近くが経っても未だに若干鼻の下を伸ばしながら、嬉しそうに私を求めてくれていたハヤトさんの夜の相手がしばらくできなくなるのだ。

積極的に浮気をする様な人ではないが、ハヤトさんは稼ぎが良いのに割とお金に無頓着だし、他人に優しい。余所で悪い女に引っ掛からないか心配にもなるというものだ。

まあそんな心配も、今となってはただの杞憂のまま終わってくれそうだが。


先々月にはお腹も大きくなってきたので、とうとう素材屋の仕事を辞めた。ハヤトさんが「まだ働いてて大丈夫なの…?」と、心配そうな顔をするものだから、予定より10日早く辞める事にしたのだ。


もうちょっとで子どもが産まれる頃だが、バース商会の人とハンナさんに色々聞いたというハヤトさんが産婆さんの手配から必要な布の用意まで、ほとんど全部やってくれた。

最近は家事もイルがやってくれるから、本当にやる事がない。今までやったこともないのに、庭で花の苗を育て始めてしまったくらいだ。


ハヤトさんは来月には仕事でランポートに行くと言うが、出産が間に合うといいなぁ。そろそろだと思うんだけども。

べナとイルにも我が子の様に良くしてくれているハヤトさんのことだ、きっとこの子が産まれたら喜んでくれるだろうから。

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