サラリーマン、再び魔道具職人をする。
それからは再び魔道具職人となって働く日々だった。
毎日毎日、木を削っては共鳴石を埋め込みポールを作る。
前と違って、どこで誰が使うか分かっているというのはちょっとやる気が出る。
ネルソンさんが木のささくれで怪我をしない様に、特別丁寧にやすりをかけた。本来なら誰に売る物であっても、職人としては同じ様に作るべきなのは分かっているが、生憎俺は職人じゃない。多少の贔屓ぐらい許されるだろう。
日本では日曜大工なんてほとんどやった事は無かったのに、今は木工職人だ。人間案外何でもできるもんだな、と考えながら作業をしていると、来客があった。
「こんにちは。ガント商会で鉱石部門を担当しておりますトトと申します。工房主さんはいらっしゃいますかね?」
「あ、はい。呼んで来ますので少々お待ち下さい。」
商会から直接、鉱石の売り込みとかに来たのだろうか。
俺より少し上ぐらいの年齢に見える、細身の男性だ。
「ハンナさーん、ガント商会のトトさんが来られてますよ。」
「はーい。ガント商会?なんだろう?」
ま、どの道俺には関係無い話だ。
納期まで残り15日、黙々とポールを作り続けよう。
と、せっせと作業をしていたのだが、10分後には俺とゲイルさんは何やら慌てるハンナさんに応接用のテーブルに呼び出された。
「ゲイル、凄いよ!ウチに鉱石祭のお声が掛かったんだ!」
「えっ、ウチにか!そりゃ凄いじゃないか!」
きゃいきゃいと喜ぶ2人を見れば、喜ばしい事なのは分かる。
だが俺からすると、どう喜ばしいのかわからず、困惑するばかりだ。
2人が落ち着く頃合を待って、ようやく口を挟む事ができた。
「あの…、鉱石祭って何ですかね…?」
答えてくれたのは、それまでニコニコ顔で2人を見ていたトトさんだった。
「鉱石祭をご存知でないとは。失礼ですが、見習いの方ですかな?」
すいません、見習いですら無いです。
期間限定のアルバイトみたいなもんです。
「あ、紹介が遅れてすみませんでした。こちらがゲイル、私の夫で工房員です。こっちはヤマダさん、工房員ではないのですがレジの共同開発者で、今は臨時で手伝って貰ってるんです。」
「なんと、こちらの方がヤマダさんでしたか!失礼しました。鉱石祭については私から説明しましょう。」
それからトトさんが説明してくれた訳だが、鉱石祭は東大陸のランポートで年に1回開催されるお祭りらしい。
鉱石が豊富に採れるランポートでは、お祭り中に鉱石を使った魔道具の品評会及び即売会が開かれるのだが、中々にハイレベルな争いが繰り広げられるのだとか。
もちろん魔道具職人としては呼ばれるだけで名誉な事だが、アスツールで鉱石の仕入れを一手に担うガント商会としては是非参加して欲しい、と。
「へぇー、凄いじゃないですか。良かったですね、ハンナさん。」
「何を他人事みたいに言ってるんだよ。選定品がレジだし、ヤマダくんも行くんだからね?」
「え?」
そうなの?
「即売会もあるんだから、行くなら当然スミナ商会も同行するよ。それならヤマダくんが面子に入らない訳ないでしょ?」
あー、なるほど…。
まあ半年以上先の話らしいし、また今度ガストンさんに会った時にでも相談しとくか。




