義弟、料理に励む。
オレはイル。
家の″ダイドコロ″を任されている。
ハヤトが言うにはキッチンの意味で、それを任されているのは家族の食を管理する大事な役目らしい。
姉ちゃんとべナも料理をするから、1人でやっている訳じゃないけど。
朝飯と弁当は姉ちゃん、昼飯はオレ、夕飯はオレとべナ、というのが最近の分担だ。
ハヤトとべナは弁当を持って行くから、昼は姉ちゃんと2人分だけだけど、1人で全部作るのは楽しい。
夕飯をべナと作っていると、隣のカインが仕事の後に色々教えてくれることがよくある。
カインは料理の事を色々知っていて、臭み消しの葉やダシが取れるキノコ、肉の筋の取り方なんかを教えてくれた。
夕飯はウチと隣が交互に作って皆で食べるから、2日に1回はカインの料理を食べるけど、同じ料理でも俺のとは全然違って本当に美味しい。
ハヤトとエルクはどっちの料理も「うまいな。」と言って食べるから、味にはあまり敏感じゃないみたいだ。
美味しそうに食べてくれるから、悪い気はしないけど。
逆にカインは「下処理が微妙だ。茹でた後冷やして無いだろう。」とか、ズバっと言ってくる。大体は当たってるので、それはそれで助かるが、どういう舌をしているんだろう。
前は義務的にやっていた料理だったが、最近は作るのが楽しくなってきた。
カインに助言を貰ってどんどん上手くなってるから、ってのもあるけど、色んな食材が使える様になったのもあると思う。
姉ちゃんがハヤトと結婚するまで、ウチはかなり貧乏だった。
毎日疲れて帰って来る姉ちゃんにとても文句なんか言えないが、安い食材しか買えなくていつも同じ様な料理だった。
オレにとって料理は「いかに安い食材を食えるものにするか」だった。
そんな物を食べて楽しい食事になるはずもない。
それが今じゃ「いかに美味いものを作るために食材を選ぶか」だ。
最近は姉ちゃんとべナも楽しそうに食事をするし、作るのが楽しくもなる。
ハヤトからは自分用の包丁を買って貰ったりもした。
かなり良いのを買ってくれたみたいで「ちゃんと研いで手入れすれば10年は使える。」と、カインに言われた。
それだけ期待されているのかとも思ったけど、ハヤトは金持ちだから、あまり値段を気にしてなかったのかもしれない。
こないだも「誕生日パーティをするぞ!」とか言って、1匹で何食か食べれる値段のホージンをバケツいっぱいに買って来てたし。めちゃくちゃ美味かったけど。
俺でも名前を知ってるスミナ商会やバース商会の商会長とよく仕事の話をすると言ってるし、給料いいんだろうな。
ハヤトは頭が良いから、それも当然かもしれないけど。
異世界の人だからか力は全然無いけど、怒った所を見た事無いぐらい優しいし、姉ちゃんの旦那がこの人で本当に良かったと思う。




