サラリーマン、魔道具を試作する。
工房に試作を依頼した翌朝、俺は「今日はネルソンさんと倉庫のエリア分けでも相談しておくかなぁ。」なんて考えながら、バース商会の事務所へ出社した。
「おはようございまーす。」
「おう、ヤマダ。今日は工房へ行って、試作を手伝ってきてくれ。完成したら知らせに来い。すぐに配達員に取りに行かせる。」
「えぇ…、マジですか。」
俺の倉庫案に乗り気なのは嬉しいが、ホントに出来るだけ早くどうにかしたいんだな。
という事で、半日も経たずに再びハンナ魔道具工房へやって来てしまった。
「あれ、ハヤト?また仕事の話?」
「いや、今日は工房の雑用係として派遣されたんだ。」
「???」
そりゃ、べナもそんな顔にもなるだろう。
俺だってこうなるとは思っていなかった。
「いや…、そりゃヤマダくんなら共鳴石の事は分かってるし、助かるけどね…。」
ハンナさんの苦笑い、昨日も見たよ。
「まあ、いいか。ポール作りをお願いしようかな。そこの木材は魔素を通すやつだから、それを使ってね。共鳴石は余ってるやつを出しといたから、木材の先端に穴を空けて埋めればいいかな。ポールは何本ぐらい欲しいの?」
「試作なら10本もあれば十分ですよ。色分けのテスト用に塗料も借りますね。」
「うん、好きに使ってー。私は魔素を流す魔道具を作っておくね。床材はゲイルが買いに行ってるから、もうちょっとで戻ると思うよ。」
ゲイルさん、居ないと思ったらおつかいに出されていたのか。
申し訳ねぇ。
戻ったゲイルさんと3人で作ると、試作品は3時間程で仕上がった。
上部に3つのボタンが付いた、子供ぐらいの大きさの柱が1本。
傘ぐらいの長さと太さで、先端の四方には親指大の共鳴石が埋め込まれたポールが9本。スタンドマイクの様な足もある。
そして、50cm×2mぐらいの木板が20枚ほど。
べナをチラリと見ると、黙々とレジを組み立てていた。
へぇ、もう製品作りを任されているんだな。
「こんなもんでいいのかな?」
「え?あ、はい。大丈夫ですよ。完成したら急ぎで持って来る様に言われてるので、バース商会に行って運べる人を呼んで来ますね。」
「お客さんに取りに来させる訳にも行かないし、ウチで運ぶよ。お客さんに試作の手伝いを寄越されてる時点で、何を今更って感じではあるけど。」
納品までがお仕事か。
スミナ商会とは親戚が経営してるのもあって、多少緩いやり取りだったが、バース商会はそうじゃないもんな。
まあ、そういう事ならとべナも加えて4人で試作品をバース商会へと運ぶ事となった。
床材は俺では数枚しか持てなかったので、ハンナさん夫妻が10枚ずつ持った。そしてべナはひょいと入力用の柱を抱えた。当然、俺に残されたのは1番軽いポールが9本だった。
この世界の人、力強いよね。
ハンナさんに負けただけで無く、べナにまで気を遣われた節があるのは悲しい事だけども。
結局バース商会に着いたのは昼前で、午前中に納品が終わってしまった。




