サラリーマン、おじいちゃんのストーカーをする。
誕生日パーティーの翌朝、朝の挨拶でバース商会の事務所へ顔を出した俺は、ガロンさんに呼び止められた。
「ヤマダ!タタンさんに話を通したら、今日でいいと言ってくれて、もう倉庫に来てるぞ!」
「えっ、もう来てくれたんですか!?分かりました、倉庫に行ってきます!」
倉庫に着くとスネイルさんが60~70歳ぐらいの男性と談笑していた。
「おはようございます。お待たせしたみたいですみません。そちらの方がタタンさんですか?」
「ええ、私がタタンです。なんでも私の仕事を見てみたいとか。」
「はい。スネイルさんと何が違うのか見せて頂きたくて…。」
「はっはっは。足も弱って来たとはいえ、まだまだひよっこのスネイルよりは良い仕事をして見せましょうかね。」
ひよっこ扱いされたスネイルさんは苦笑いだ。
しかし、言った相手がタタンさんだからだろう、不満げな表情ではなかった。
それから1日、付きっきりで仕事をする様子を見せて貰った訳だが、素人目で見ても明らかにおかしかった。
朝一番にタタンさんは散歩でもする様に、受注票も持たずにぐるっと倉庫内を回って歩いていた。
ざっと2周して入り口に戻り、受注票の束を眺めると、そこから数枚を抜き出す。
俺は「まとめて取りに行くから早いのか?」などと考えていたが、そんなものでは無かった。
そもそも、タタンさんは素材を探している様子が無かった。
1つの素材を取ってカバンに入れると、そのまま一直線に次の目的地に向かうのだ。
俺は昼前には堪えきれず、声を掛けてしまった。
もしや…
「タタンさんはどの素材がどこにあるか、全部覚えてたりするんですか?」
「大体は、ですな。基本的に倉庫内の素材は毎日1割も動かないので、朝に昨日と違う所を見て回るんですよ。今日は久々だったので、2周もしてしまいましたが。」
うっそだろ。
この倉庫、何百種類の素材が置かれてると思ってるんだ。
その後もタタンさんは最短距離で移動を続け、スネイルさんの倍以上の素材集めをこなした。
覚え違いがあったのか、途中で1度だけ向かった先に目的の素材が無い事もあった。しかし、それも別の注文用にスネイルさんが先に持って行っただけだと後から分かった。
スネイルさんが「別格ですよ。」と言った意味が分かった。
この人、瞬間記憶能力者か何かじゃないんだろうか。
ヤバすぎる。ちょっと鳥肌が立った。




