サラリーマン、再び出向が決まる。
新婚旅行から帰り、1ヶ月が過ぎた。
帰った直後にべナの就職の話が出て、少しばたばたしたが、それももう落ち着いた。
14歳の少女はちゃんと働けるだろうかと心配になって、休日にこっそり工房を見に行った事もあるが、ハンナさんの指示に従ってきびきびと動く姿はそれなりに様になっていた。
店の窓から少女の姿をじいっと見つめる怪しいおじさんをしていた訳だが、安心してほしい。
彼女は俺の義妹だ。
俺は親子丼が好きでよく食べたが、姉妹丼には興味は無いし、ロリコンでも無い。大丈夫だ。
そんな事をしていた翌日、ガストンさんに呼び出された。
俺は開口一番に弁解した。
「違うんです。俺は悪い事はやってないんです。」
「? 何を言ってるんだお前は。何かやったのか?」
「いえ、やってないです。」
違ったらしい。
変な汗は出ていたが、その件じゃないなら良かった。
「バース商会から倉庫整理の手伝いを頼まれたんだが、請け負わないか?」
「バース、商会…?」
「何で知らないんだよ。この街じゃ1番デカい商会だぞ。」
依頼が来たルートは単純だった。
ガストンさんは昨日、レジを大量購入してくれたバース商会長と飲みに行ったそうだ。その際にバース商会長が愚痴を漏らした。バース商会では倉庫に勤務していた熟練の商会員が引退した事で、入出庫にかかる時間が大幅に増えた、と。
「えーと、それでスミナ商会が協力する。ってのはまだいいとして、何で俺なんですかね…。」
「ガロンの奴がレジにえらく感動してな。開発者がウチにいると自慢したら、頼むから倉庫整理に貸してくれと言われたんだ。」
あんたら仲良いな。商会長同士ってあまり仲良くないものかと思ってたが。
というか自慢するんじゃない。正式な開発者はハンナさんだろ。
「いや、まあ100歩譲って経緯は良しとしましょう。でも、倉庫整理ってなんですか。力には自信無いんですが。」
「とにかく素材の出し入れに時間がかからなくなる様に倉庫を改良したいんだとさ。お前は知恵を貸すだけだ。上手くいけばガロンが謝礼をたっぷりくれるだろうさ。」
美味そうな人参をぶら下げるのはやめてくれたまえ。
「ふぅー…。分かりました。やれるだけはやってみます。」
結婚と旅行で貯金を大量に消費した俺は、あっさりとその人参に食らいついたのだった。




