サラリーマン、義妹の就活を手伝う。
旅行の片付けを済ませ、長期休暇の残りをのんびりと過ごしていたある日、ベナに相談を持ち掛けられた。
「ハヤト、話があるんだけどいいかしら?」
「いいよ。どうしたんだ、改まって。」
「そろそろ私も働き口を探そうかと思うんだけど、スミナ商会で人手を必要としていたりしないかしら。」
就活の話だった。というかちょっと待て。
「えっ、ベナって今いくつだっけ。そんな歳から働くもんなのか?」
「こないだ14になったわ。14なら見習いで働き始める子も普通にいるわよ。」
レイナさんもそのぐらいの歳で内職をしていたとは言っていたが、それは事情が事情だしな…。
「働くことが悪いとは言わないが、もうちょっと大きくなってからでもいいんじゃないかい?」
日本人的な感覚ではあるが、俺はそう思うんだ。
「嫌よ。ただでさえ今まで姉さんにおんぶにだっこだったんだもの。これ以上甘える気はないわ。」
おう…、一刀両断だ…。
「そこまで言うなら、とりあえず商会に聞いてみるよ…。」
その日、仕事から帰ったレイナさんにこっそり相談したら「ちょっと早いですけど、そんなものですよ。」と言われた。
まあ、この世界は高校やら大学があるわけじゃない。
家であと3,4年家事手伝いをしたって何が変わるわけでも無いか。
よし、ここは俺のコネで働き口を見つけてやろうではないか。義兄さんに任せておけ。
と意気込んで、翌日に商会長室へ突撃してみた。
「うーん、人手かぁ。足りないのは行商部隊ぐらいなんだが、こないだジャンが怪我をしたのもあるし、女子供はちょっとなぁ…。」
ベナ、すまん。義兄さんは駄目だったよ。
「働き口なんだが、スミナ商会じゃないと駄目なのか?」
「いや、そんなことは無いと思いますけど…。」
「だったら良いところがあるじゃないかよ。」
あー、なるほど…。
その日の午後にベナを連れて訪れたのは、ガストンさんから提案された働き口、ハンナ魔道具工房だ。
確かに「そろそろ人を雇おうかな。」って言ってたなぁ。
「こんにちはー。」
「あ、ヤマダくん。久しぶりだね。今日はどうしたの?」
「ハンナさん、お久しぶりです。突然なんですが相談がありまして。ここで見習いを雇う気は無いですかね?義妹のベナが働き口を探してまして…。」
「ベナです。精一杯頑張りますので、ぜひお願いします。」
「あー、そう言えばヤマダくんはレイナちゃんと結婚したんだっけ。てことはその妹さんか。構わないけど、試しに働いてもらって駄目そうなら断るよ?」
試用期間か。そりゃそうだろう、ハンナさんだって遊びで工房を経営しているわけじゃない。
「ええ。もちろんそれで構いませんので、続けるのが厳しそうなら正直に言って下さい。ベナもそれでいいかい?」
「はい。よろしくお願いします。」
「じゃあ3日後から来てもらっていいかな?急ぎの注文があって、明日と明後日は手が離せないんだよね。」
ほう、急ぎの注文とな。
「それってもしかして"レジ"ですか?売れ行きはどうなんですかね?」
「どうなんてもんじゃないよ。ここ3ヶ月近くレジしか作ってないんだから。もう"ハンナデンタク工房"に名前を変えようかと思っちゃうよね。」
ひえっ、そんだけ作ってるのにまだ急ぎの注文が来るほど売れてるのか。
「それはお疲れ様…いや、おめでとうございます?」
「まあ、喜ばしい事ではあるんだけどね…。でも、ヤマダくんは知らなかったんだね。結構色んな商会で話題みたいだよ。」
結婚したりとかで全然気にしてなかったが、売れ行き好調なら良かったな。
「魔道具の訪問販売は別枠になってて、俺が集計している所には売り上げの数字が来ないですからねぇ。っと、話は戻りますがベナの事、よろしくお願いします。」
ということで、ベナの就活は俺の元出向先へのコネ入社であっさりと決まった。




