サラリーマン、顔合わせをする。
エルク、カインに事情を説明した後は、結局昨晩はずっと話をしていて一睡もしてなかったのもあり、2時間ほど仮眠を取った。
当然の様にそのまま仕事に行ったレイナさんはもっと疲れているだろうし、家を見るのは後日でも良かった気がする。
軽く水浴びだけ済ませて素材屋へ向かうと、御一行は既に待っていた。
「すみません、遅くなりました。行きましょうか。」
「ふーん、あなたがヤマダさんね。あたしはべナ。今日はあなたが姉さんに相応しい男か見極めてあげるわ。」
この子が妹か。見極められた結果がNGであれば「ハイ、解散」となるのだろうか。
とんだ結婚詐欺だ。いや、身請けの話は知らんだろうけど。
「あー、うん。よろしくね。相応しい男ではありたいと思ってはいるよ。」
「こらべナ!お姉ちゃんはもう結婚するって決めてるんだから、そういう事を言わないの!」
うーん、歳下だからかあまりイメージが無かったが、こうしてみるとレイナさんはお姉ちゃんしてるんだなぁ。
「なあ、それよりオレ腹減ったんだけど。早く飯食いに行こうよ。今日はコイツのおごりなんだろ?」
弟くんか。まあ一理あるな。
とりあえず移動するとしよう。
ちなみに弟は名をイルと言うらしい。
3人を連れて来た店は、以前レジーナさんに教えてもらったちょっと上品そうな卵料理の店だ。
今日は真面目な話をするだろうからとここを選んだが、わんぱくな子供2人連れでもある。ビアガーデンのバーナードで焼肉とかの方が良かっただろうか。
「すげー!高そうな店じゃん!ホントにここ入るのか!?」
イルが食いついてくれて良かった。実はそんなに高い店ではないけど。
とりあえずレジーナさんが頼んでたオススメコースを頼んで席に着く。
「さて、料理が来るまでに改めて自己紹介でも。俺はヤマダ ハヤトだ。お姉さんと結婚させて貰う事になったからよろしくね。」
「ハヤト…?」
レイナさんが不思議な顔をしていた。そういえばこちらの世界では苗字を持ってる人は見た事が無いな。
「うーんと、俺が居た世界では家族が持つ名前と個人が持つ名前があって、前者がヤマダで後者がハヤトだ。だから、俺の母さんと父さんもヤマダだったんだよ。」
「不思議な文化だったんですね。それなら私もハヤトさんと呼んだ方がいいですか?」
日本だったら君も山田レイナになるだろうしね。
そうしてもらうか。
「うん、それでお願いしようかな。」
「なーなー、飯来たみたいだぜ。早く食おうよ。」
おっと、もう料理が来たか。
「そうだね。冷めない内に食べようか。」
それからは食事をしながら色々な話をした。
俺の世界のこと、今の仕事のこと、レイナさんとの出会いのこと。
イルは異世界の食事のことに興味津々だった。特に揚げ物の話では目をキラキラさせながら「飯にそんなに油を使うなんて、ハヤトは金持ちだったんだな!」何て言うもんだから、地球では油は割と安かったことを説明した。
べナは俺の仕事のことを熱心に聞いたかと思うと「悪い人じゃ無さそうだし、スミナ商会勤務なら姉さんを任せても大丈夫そうね。」なんて言っていた。
ちなみに昨夜、というか今朝レイナさんと生活費の話をした時に聞いたのだが、大きい所の商会員はそこそこ高給取りらしく、それも俺に話を切り出す一因でもあったらしい。
確かに俺1人が普通に暮らす分には給料の6,7割は貯金に回せるぐらいだ。給料が安い訳もない。本当にガストンさんには感謝しかないな、電卓が売れて商会が儲かってくれるといいが。
お互いに知らない事も多く、話は尽きないがご飯も食べ終わったので家を見に行く事にした。




