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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
漫遊編
34/123

サラリーマン、身の上話を聞く。

それから聞いた話は、まあまあ重かった。


レイナさんは24歳で、13歳の妹と10歳の弟がいるそうだ。


母親は9年前に病気で亡くなった。

ハンターをしていた父親は、3人の子供の世話をしながら狩りを続けた。

レイナさんも当時1歳だった弟の世話を手伝ったが、父親が狩りに出られる時間は以前よりは減る。

短時間で稼げる危険な森へと狩場を移した父親は、1年後に狩りに出たまま行方不明になった。


両親の遺したお金とレイナさんの内職で食い繋ぐも、1年と持たない。

容姿に自信のあったレイナさんは17歳にして、働いて返していくことを条件に娼館からまとまったお金を借りた。

今は妹も弟も幼く短時間の勤務しかできないが、2人が大きくなれば長時間のお客さんも取って少しずつ返そう、と。


しかし長時間働ける様になっても魔素の薄い体質もあり、なかなか客が取れなかった。リピーターがいないのだ。

大きくなった妹と弟は手が掛からなくなった代わりに食べる量も増えた。当然だ。


レイナさんは新たな勤め先を探し、昼は父親と付き合いのあった素材屋でも働き始めた。

夜は娼館へ行き、客が付いていない時間は娼館のソファーで眠った。


そんな生活を始めるとようやく借金が少しずつ減り始めたが、気付けばもう20代も中盤だ。

娼館で働ける歳の内に借金を完済できるのかも怪しい。


妹と弟には借金のことは言ってなかったが、妹はもうそろそろ働ける歳だ。

背負わせたくはなかったが、どこかで働き始めたら返済を手伝ってもらう必要があるかもしれない。


そんなとき、初めてリピーターとなった俺から「大きな臨時収入があった」と聞く。

すがってみたくもなるだろう。


「ちなみに残りの借金はいくらだい?」

「300万と少し、です。」


払える額だ。だが、それでいいのか。

考えても答えは出ない。


いいだろう、出たとこ勝負だ。


「分かった。君を娼館から身請けしよう。ただし、一つだけ条件がある。俺は君の笑顔が好きだ。笑って過ごす日々を送って欲しいと思う。俺もそのための努力はするから、必要なことがあれば遠慮無しに教えてくれ。」

「分かり、ました…。あり、がとう、ございます。」

彼女はほっとしたのか、そう言って俺の胸でしばらく泣いた。


そして、落ち着いた頃に言った。

「お言葉に甘えて遠慮無くひとつだけ。今日は少し汗臭いです。汗を流してから来てくれた方が嬉しかったです。」

「なるほど。努力しよう。」

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