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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
ハンナ魔道具工房出向編
29/123

サラリーマン、自販機を作る。

午前中にエルク先生の語学研修が終わると、社員食堂で昼飯を食って工房勤務だ。

最近はもう普段もあまり指輪を使わないし、語学研修ではあまり使わない単語を教えて貰うぐらいだ。

あと50日弱でスミナ商会で勤務半年となるので、語学研修はその日までだ。


ハンナ魔道具工房に着くと、素材も揃ったので、試作の話になっていた。

ハンナさんとゲイルさんは「どのぐらいのサイズだと使いやすいか」を話し合っている様だ。

ちょっと気になったので聞いてみた。

「うーん、試作品って何を目的として作るんですかね。」

「そりゃあ考えた作りで意図した通りに動くか確認するためでしょ?」

「それだけならサイズなんてどうでもいいですよね?」

「そうだけど…、あんまり大きかったり小さかったりしたら、使う人が不便じゃない。」

「それです。使う人って役人さんとか行商人とか商会員ですよね?なら、とりあえず一番作りやすいサイズで作ったものを見せて、ガストンさんとレジーナさんに意見を貰ってみませんか?」

試作は雑でいい。ってのが俺の考えだ。

試作品の完成度を高めても、どうせ意見収集の段階で手直しが発生する。

だから試作品は最低限の機能だけ備えていて、完成品がイメージできる物であれば十分だ。


それにガストンさんは顧客でありエンドユーザーでもある。レジーナさんもエンドユーザーだ。

製品化に向けて、試作品を見せて意見を貰わない手はないだろう。


結局、それでやってみようかという話になった。

そうと決まればそんなに日数は掛からない。


試作品は3桁版にする事になった。

桁の繰り上げの処理が出来る事が確認できれば十分だ。

共鳴石は3つに割り、形も整えずそのままで使う。光ってるのが分かればそれでいい。

インプットのボタンも適当だ。その辺にある素材を不揃いでもいいから適当に並べてペンで数字を書く。

製品版ではボタン、カレアの牙、共鳴石を回路のように金属で繋ぐそうだが、試作品に耐久性は要らない。取り回しがしやすく、値段も安い植物の蔓で代用した。時間が経てば枯れるだろうけど別にいい。

テープでベタベタと貼り合わせた子供の工作の様な不格好さがある。


石がデカい、ボタンもデカい、蔓も太いとあって筐体もバカでかくなる。

しかしデカい分、中身もいじりやすく、試作品は10日ほどで完成した。


人の身長ぐらいある長細い箱の上部には、頭から胸ぐらいの位置にボタンと共鳴石が3つの行に分かれて配置されている。

1行目には、0から9の数字が書かれた10個のボタンを縦に5個×2列に並べたものを1桁として、それが横に3桁分並ぶ。

2行目も同様だ。

3行目もほぼ同様だが、ボタンの代わりに共鳴石が配置され、1番左に「1」と書かれた桁上げ用の共鳴石を加えた。数字を足して1000を越えるならこれが光る。


「まさか10日で出来るとは思わなかったよ…。確かに不格好だし大き過ぎるけど、動作に問題無い事は確認できたし、物のイメージは伝わるかな。試作品の名前は何にする?」

「俺が名前を付けていいんですか?それなら"自販機"で。」

サイズもそうだし、缶やペットボトルの見本が並ぶであろう位置に数字のボタンが並んでいるのも、そこはかとなく自販機っぽく見える。古い旅館とかにある商品が6個ぐらいしか無いスリムなタイプのやつだ。

「"ジハンキ"か。何か響きがいいね。」

そ、そうかな?

褒められると適当に名前を付けたのが申し訳なくなるな。

由来は秘密にしておこう。

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