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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
ハンナ魔道具工房出向編
24/123

サラリーマン、くたびれる。

ハンナ魔道具工房に出向してから50日が過ぎた。


最初の10日は3人でひたすらカレアの牙を削った。

まずは工房の共鳴石の内、最も低い魔素で光る石を選び、光る魔素量を「1マナ」とした。

後は何十本もの牙を円柱状に削りながら、1マナが流れる太さに調節した。

牙を5本束ねて魔素を流せば5マナが流れる。


試作する電卓はインプットの数字と同じマナをアウトプットへ流す仕組みだ。

例えば「5+3」なら、インプットAから5マナ、インプットBから3マナ、合計8マナがアウトプットへと流れる。

アウトプットに並べる8番目の共鳴石は、8マナが注がれると光る石を使えばいい。

ただし、その石は0~7、9~17マナが流れた時に光ってはいけないし、18マナでも光らなきゃいけない。

1桁の足し算のアウトプットは0~18なので、19マナ以上を流すと光るかどうかはどうでもいい。


それ以降の40日は必要なパターンの共鳴石を探し続けている。

まずはソーヤさんの素材屋で共鳴石の原石の塊を買ってくる。

原石を砕いて共鳴石を取り出すと、こぶし大に割り、魔素を素手で注いで大まかに光る範囲を見る。

使えそうな石があれば、牙を通して正確な量の魔素を流して必要な石か確認する。


作業自体は単純だ。

ただただ、必要なパターンの共鳴石が揃うまで繰り返すだけだ。

気分的にはソシャゲの「ガチャ」を回しているのに近い。

アウトプット用のSSR共鳴石が全11種類揃うまで回し続けるガチャだ。

買い物カゴぐらいの原石で大体20連のガチャが回せる。SSR排出率は大体1%だ。天井は無いし、被りもあるぞ。

ガチャの費用はスミナ商会から借りてぶん回しだ。後戻りはできない。


毎日毎日同じ作業だし、何も得られない日がほとんどだ。

既に必要な11種の内8種は揃ったとはいえ、気も滅入る。


死んだ魚の様な目で原石を割り、記録をとっていた俺には心の支えとなる2つの癒しがあった。


1つ目は午前中の語学研修だ。

毎日違うことをできるというのが、そして日々成果が出るというのが、こんなにも嬉しいことだとは思っていなかった。

ちょっとずつ聞き取れる単語も増えて来て、片言だが指輪無しでも会話が出来るようになってきた。

買い物や外食も一人で行けるようになった。


2つ目は素材屋の看板娘だ。

工房へ出向して25日が経った頃、ソーヤさんの素材屋へ入荷分の原石を受け取りに行くと、すっごい美人さんが店番をしてた。

年の頃は20代中盤だろうか。指輪を渡して原石を受け取りに来たことを伝えると、にこりと笑って頷くと店の奥から原石を持って来てくれた。

精神状態の影響もあるだろうが、惚れそうだった。いや、惚れてたかもしれない。

「ほえぇー、ホント綺麗な人だなぁ…。」なんて考えで頭が一杯になっていると、苦笑された。

『あら、ありがとうございます。』

聞こえてるぅ!!

どこかに穴は無いか!?今すぐ入りたいんだ!

『レイナと言います。夜は「夜の都」って娼館でも働いているので、良かったら来て下さいね。』

『あ…はい。ヤマダ、です。よろしく…お願いします。』

テンパって言ったが、何を「よろしくお願い」するつもりなんだ。

いや、お店には絶対行こう。本人が営業してるんだから、知り合いが来ても困るということは無いんだろう。

仕事がひと段落したらここで予約を取ってから行こう。

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