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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
スミナ商会勤務編
17/123

サラリーマン、魔道具工房を訪ねる。

ここ2日間はあっという間だった。

午前の語学研修の内容は日替わりだが、生活のサイクルが確立したのも大きいのだろう。

朝飯を食って語学研修、社員食堂で昼飯を食べたら集計業務、家に帰ったら夕飯を食って水浴び。

夜はエルクやカインが暇ならだべりつつ言葉を覚える。二人とも用事があれば街中でも散歩してみるつもりだ。


今日は初の休日。

上司と一緒にお出掛けという、若者が聞けば嫌な顔をしそうな予定だが、職場で円滑な人間関係を作るのは大事だ。

職場ではまずは「味方を作る」、次に「敵を作らない様にする」というのが俺のモットーだ。

先輩の受け売りだが。


時刻は昼前。

スミナ商会本部前で待っていると、レジーナさんが現れた。

『すまない、待たせたみたいだね。』

『いえいえ、今来たところですよ。』

恋人同士の待ち合わせみたいな会話をする。相手の女性には40手前の娘が居るらしいが。

『休日に付き合わせちまってんだ。昼飯ぐらいおごるから娘んとこ行く前に食っていこうか。』

『では遠慮なくお言葉に甘えます。』


お昼はレジーナさん行きつけの卵料理の店でパンとオムレツを食べた。パンと言うよりはナンだったが。

料理は全体的に上品な味付けだったが、美味しかった。ガストンさんとレジーナさんは食の趣味が合わなそうだな。そういえば仕事中に聞いた話だが、レジーナさんの妹がガストンさんの奥さん、つまりレジーナさんはガストンさんの義姉だそうだ。そういやガストンさんを呼び捨てだったな。


『ここが娘のハンナがやってるハンナ魔道具工房だ。ま、職人は娘とその旦那だけなんだがね。』

おっと、着いたらしい。

中に入るとゴチャゴチャとした物の間から出て来たハンナさんに紹介して貰い、指輪を渡す。

『お休みの日にすみません。母さんが無理言ったんじゃないですか?』

『ま、そんなとこではあるさね。いい加減にハンナが一山当てればこんなおせっかいもいらないんだがね。工房が潰れやしないかと心配してんだよ。』

『家族が食べていけるぐらいの儲けは出てますぅ!』

ぷんぷんとむくれるハンナさん。なんだこの可愛い人妻は。

『あ、とりあえず座って下さい。飲み物でも持ってきますので。』


テーブルでハンナさんが入れて来てくれた果実水を飲みながら、電卓についてひと通り説明する。

もちろん原理については大分憶測が混じるが。

『うーん、なんとなくは分かるけどエキショウ?ってやつは絶対無理だよ?』

『そんなもん数が分かればいいんだから、アタシの石と同じで数字の数だけ光るとかでいいんだよ。』

『むー、それなら陽光石とかでいいけど…。結果を自動で出すってのは長石とかでいけるのかなぁ…。実際作ってみないとわかんないけど、いけなくもない、様な気もする…。』

『アンタ、デンタクが作れりゃ国に商会、行商人と、いくらでも売れる先はあるんだから、一山当てるならここだよ。』

えー…、娘さんの工房の将来がかかってる様な話なんすか。てっきり「ちょっと面白い魔道具をみせてやるよ」的なノリだと思って来てたんですが…。

『私も母さんの仕事は知ってるしそりゃ分かるんだけどね。とりあえず、今貰ってる注文が片付いたら試作はしてみるから。まだよく分かってない部分もあるし、試作しながらヤマダさんにまた話を聞けたらありがたいんですがどうですかね?』

『あー、まあ夜とか休日で予定の無いときならいいですよ。』

開発に失敗して、その費用が原因でレジーナさんの娘が路頭に迷うとか後味が悪すぎる。

出来ることは手伝うとしよう。

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