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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
スミナ商会勤務編
16/123

サラリーマン、上司の技術に驚く。上司も電卓に驚く。

レジーナさんは小さな袋を取り出すと、それを机の上でひっくり返す。すると中から6色のおはじきがザラザラと出てくる。各色のおはじきを2×5列に並べると、左手でレシートを持ち、右手をおはじきにかざす。

『さて、やるかね。』

レジーナさんがレシートを見ながら右手を空中でブラインドタッチの様に動かすと、指の動きに合わせておはじきの色が変わる。

その動きを数分繰り返すと手を止めて言った。

『5号店の衣料品は53500コル。アンタの計算は合ってるよ。』

早いな。

というかそんなことより、あの動きは…完全にソロバンだよな。

各色のおはじきがなぜ「9個」ではなく「10個」なのかという疑問はさておき。

『早いですねぇ。自分の世界でも似た道具を使って計算する人が居ました。魔法が無い世界なので、指で石を押して動かしていましたが。』

『ほーう、その道具を見てみたかったもんだね。アンタ、その道具を自分用に作ったりしないのかい?』

『えーと、それはですね…。似た様な方法を使っているレジーナさんなら分かりそうですが、その道具は使うのにも技術が必要でして、慣れないとメモしながら暗算した方が早いんですよね。俺は上手く扱う技術を持っていないので。』

小学校の算数の時間にソロバンを使って足し算をする時間があったが、ソロバンを適当にはじきながら暗算してたのはいい思い出だ。

『そっちの板を扱う技術はあるってことかい?』

『あー、<電卓>は扱う技術があまり要らないんですよ。もちろん慣れた人の方が圧倒的に早いですけど、不慣れな人でもそこそこ扱えるので、こっちが主流になっちゃいましたね。』

『アタシでもすぐ使えるってことかい?』

『書いてあるのが異世界の数字ですが、こちらの数字と照らし合わせれば使えますよ。』

手帳の数字早見表をメモしてあるページを見せつつ、使い方を説明する。

レジーナさんがぽちぽちと人差し指で電卓のボタンを押していく。


『アンタ、こりゃすごいね。何がどうなってんだい。』

『俺も原理にはあまり詳しく無いんですけどね。例えばレジーナさんの魔道具が「5」を表示しているときに「7」を足すと12、つまり「1繰り上げと2」ですよね。1桁の足し算は100通りなので、入力の組合せに対して決まった結果を表示するようにしてあって、これを全ての桁でやっているだけだと思いますよ。』

ふんふん、と聞きながら電卓を振るレジーナさん。

いや、中に石とかは入って無いですよ。記憶素子とかが似た様な役割をしているんだろうけど。


『ちっとお願いなんだが、今度の休みにでも娘にコレを見せて同じ説明をしてやってもらえないかい?』

『構わないですけど、何かあるんですか?』

『娘はハンナってんだけど、魔道具工房をやってんのさ。似た様な魔道具を作れないかと思ってね。アタシの計算方法は繊細な魔素操作が要るし、アンタも察した通り習得まで時間がかかんのさ。その点、これならエルクだってすぐ使えるだろ?』

『いいですよ。ちなみになんですが…休みっていつですか?』

ポカンとした顔で呆れたレジーナさんに教えてもらうと、シフト制?みたいで共有のカレンダーに休みを記入するらしい。休みは4日働くと1日、つまり月に6日だな。…こっちのカレンダーはひと月40日だったけど。

休みは基本的にレジーナさんとエルクが被ってなければいいらしい。

店舗も行商も毎日売り上げはあるだろうし、誰かは居る様にしてるんだろう。


レジーナさんに合わせて3日後を次の休みとして記入すると仕事に戻った。

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