サラリーマン、契約を取る。
ガロンさんにそのまま工房へと連行された俺は、とりあえずハンナさんに謝った。
「すみません、色々あって連れて来ちゃいました…。」
いや、正確には連れて来られたのだが。
「いや、それは構わないんだけど…この流れ、前もやったよね?」
仰る通りで。
前も急に連れて来られて、倉庫用の魔道具作る事になりましたね。
ただ、ひとつだけ言いたいのは、どちらも無理矢理連れて来られたのであって、俺に非はないという事だけは分かって欲しい。
「キサラの皮の在庫がそろそろ無くなりそうって呼び出されたんですが、作ってる魔道具の事を話したら、欲しいと言って連れてこられちゃいました…。」
「それでヤマダ、その魔道具はあれか?」
あれです。あれですから、掴んでる俺の左腕を離して下さい。
ハンナさんは「やれやれ…」といった感じだったが、販売自体には肯定的だった。
「うーん、まあ最初はどこかで実際に使ってもらうのが1番いいから、別にいいけどね…。カジャさーん!それでいいかなー!?」
いつの間にかガロンさんと魔道具について熱心に話し合っていたカジャさんは、もちろん構わないという反応だった。
「ガロンさん、カジャさんから聞いたと思いますけど、これ未完成なんですよ。事務所から街の中央までケーブルをひくなら、ケーブル長もまだまだ足りないですし。」
「そりゃあ完成してからで構わんが…、これでどうやって情報のやり取りをするんだ?今の所、光るだけなんだろう?」
「それはですね、電卓のパーツを流用するんですよ。」
入力側で「3」のボタンを押せば、出力側で「3」の石が光る。
そして0から9の数字を2つセットで文字を表す。
日本語であれば「1-5」が「お」、「2-2」が「き」ってなもんだろう。数字の組み合わせは100通りあるので、ロナウ語の文字70種には十分足りる。
余った30通りの組み合わせは、句読点や疑問符とか「通信終了」、「数字の入力開始」などの役割を持たせておけばいいだろう。
そんな説明をするとガロンさんは納得したのか、すぐに人員配置を考え始めてしまった。
「なるほどな…。という事は事務所にツウシンを受け取る奴が必要か。」
「多分入力も慣れた人の方が早いでしょうし、詰所で配達員から受け取った注文票を送信する専門の人が1人居ても良いかもしれませんねぇ。」
「確かにそうだな。ヤマダ、お前はまるでこの魔道具を使った事でもあるみたいだな。」
まあねぇ。メールの送受信なんかは毎日やってましたよ。
もちろん、16進数のUnicodeを文字に変換する作業をしてた訳ではないが。
「まあいい。とりあえず、ウチは街の中央にツウシン用の家を買っておくから、魔道具が出来次第入れてくれ。」
こうして、あれよあれよという間に製品第一号の納入先が決まったのだった。




