サラリーマン、共同開発を始める。
いざ通信機の共同開発が決まるとカジャさんは大慌てで宿へと戻って行った。とりあえず、有り金をはたいて1ヶ月ほど部屋を確保するらしい。
それでも手持ちが不安なのでキースの街に手紙を出して、お金と鉱石を追加で持って来させるとか言っていた。
俺だって10日や20日で開発が終わるとは思っていないが、あの人は自分の工房を放ったらかして、どれだけこの街に居るつもりなんだ…?
その後、工房に戻ったカジャさんを交えて当面の方針を話し合ったが、とりあえずは俺の提案した″魔素ファイバー″ケーブルを試作してみる事になった。
とりあえずそれで有効距離が伸びるか分からないと、使い物になるか分からないしな。
しかしそれは同時に100m以上のケーブルを作る事を意味する。
その地味な作業がしばらくは続くであろうことが分かっているからか、ハンナさんがひとつ大きく息を吐いた。
「細い筒ねぇ…。木材でも割って中身をくり抜いてからくっつける?」
「ハンナさん、それなんですがこっちの世界って柔らかめの金属をひも状にできたりしませんか?」
「どういう事?」
木材などをくり抜くのでは太すぎて邪魔だし、作る手間もかかりすぎる。少なくとも製品化できたとしても、街と街を繋ぐことなど夢のまた夢だろう。
そこで俺が考えたのはコイルだ。
針金があれば、それを細い棒に巻いてコイルが作れる。コイルの両端を引っ張って少し伸ばしたら、絶縁性の皮を巻く。これで擬似的なケーブルにはなるだろう。
木材と違って、ケーブルを途中で曲げたりもできるしな。
「なるほど…。多分鍛冶屋に頼めばやってくれると思う。チェインメイルとかを編む金属糸を柔らかい金属で作ってもらうだけだから。」
金属板とかも普通にあるし、そういう技術も有りそうだとは思っていたが大丈夫だったか。
「とりあえずそれで頼んでみるよ。カジャさん、開発費の負担なんですが、アスツールまで来て貰ってるのもあるのでウチが6割でどうかな?」
「構いませんよ。こちらは頼みに来た立場ですので、5割でもいいぐらいですけどね。ただ、支払いはキースの街からお金が届いてからにして頂きたいですね。」
「うん。時期は開発が終わってからまとめてで構わないですよ。」
そうか、共同開発だと経費負担割合の話もあるか。
完成したらしたで、利益の分配の話もあるんだろうけど、そこら辺は工房長同士で決めてくれるだろう。




