サラリーマン、来客の訪問を聞く。
今日の講義が終わると、見学から戻ったハンナさん夫妻と合流した俺はガント商会を後にした。
「ヤマダくん、どうだった?何か使えそうな素材とかあったかな。」
「そう言われても、今日は鉱石素材全体について教えて貰っただけなので、特には無いですねぇ。ハンナさんはどうだったんです?」
「あー、そっからなんだ!結構ちゃんと教えてくれるんだね。こっちは色々と面白そうな物を見せて貰ったよー。ヤマダくんも今週のどこかで見せてもらえるんじゃないかな?!
「へぇ、楽しみにしておきます。」
そんな風に午前中の出来事を話しながら、ハンナさん達と工房に戻るとどうやら来客があったらしい。困惑顔をしているべナから話を聞くと、魔道具の共同開発をしたいというおじさんが訪ねて来た、と。
共同開発?
「急にやって来て、凄い勢いでそんな事を言うんだから困っちゃって…。工房長は午前中は外出してるって伝えたら、また来るって言って帰っちゃったんだけど。」
「名前は聞いたの?」
「ええ。カジャさんって言ってたわ。」
「「カジャ?」」
ハンナさんと顔を見合せる。
俺が知ってる名でカジャと言えば、鉱石祭の最優秀賞を取った″カジャ魔道具工房″ぐらいしかない。どこの街にある工房かは分からないが、帰ってすぐアスツールへ出発したとかなのでは?俺達だってまだ帰って10日ちょっとだぞ?
カジャさんの名前を聞いて不思議な顔をしたのは俺だけだった様で、ハンナさんとゲイルさんは2人して腕を組んで、何とも言えない顔をしていた。
「いや、いくら何でも早すぎじゃない…?というか、本気だったのかぁ…。」
そう呟いたハンナさんは何か事情を知っている様だったので、教えて貰う事にした。多分、ゲイルさんも知っていたという事だろう。
「鉱石祭でさ、″魔伝機″を見せて貰ったじゃない?その時に、是非魔道具を共同開発しませんか?って言われたんだよね。ヤマダくんは受信側に居たから聞こえて無かっただろうけど。」
「それなら、その内に訪ねて来るのは分かってたって事ですか?」
「いや、なんて言うのかな…。機会があれば共同開発をしましょう、ってのはさ、一種の褒め言葉なんだよね。それだけあなたの作った魔道具は凄かったですよ、っていう。」
聞いてみれば、何となく事情が分かった。
単純に褒められて喜んでいたら、向こうは本当に共同開発をする気だったと。しかも何ヶ月後とかじゃなくて、すぐ来ちゃったよ、と。
「キースの街に工房があるって言ってたから近いんだけど、帰ってすぐにウチに向かったぐらいなんじゃないかな…。どうしようか…。」
キースの街はここから北に数日、俺も新婚旅行で行った事がある。
近いと言えば近いが、気軽に顔を出せる距離でもない。
割と本気で共同開発をする気で来ているのだろう。




