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9 ゲーム開始前

 その日、騎士はとても落ち着いていた。狼男と通話した時も冷静だったし、家を出る時も自然だったし、ラブホテルの部屋に入ってからも表情一つ変えなかったのだった。


 部屋に入ってからは、食糧の詰まった段ボールを開けてみたけど、特に反応を見せることなく、ベッドに腰掛けて、固まったままじっとしているだけであった。


 しばらくしてからトイレに入って、その時に部屋のドアが開かずに監禁されたことに気づいたけれど、その時ですら取り乱すことなく、ベッドに座り直すだけであった。


「人狼ゲームの館へ、ようこそ」


 騎士が喋ったわけではない。


「全員、パソコンの前に移動するように」


 命じられたまま席を移すと、電源を入れたわけではないのに、モニターにはゲームマスターである狼男が映し出されているのだった。


「九人の参加者全員が予定通りに集まったので、まずはご協力に感謝したい」


 そこで初めて参加人数を知ったが、表情に変化は見られなかった。


「まぁ、まて、そう、一度に同時に喋られては話が進まない」


 他の部屋にいる参加者は声を上げたようだが、騎士は落ち着いた様子で見守っていた。


「部屋を出たければゲームに勝つしかない」


 監禁されたことに対して抗議している者がいるようである。


「黙れ!」


 騎士は大人しくしているので、他の者に向けられた言葉だ。


「勝ったら百億の大博打だ。それを元金なしで参加させてやるんだ、お前がすべきは抗議ではなく、感謝ではないのか?」


 ()()()()ではなく、()()なので、文句を言っているのは一人だけのようである。それからしばらく間が空いた。


「ああ、約束しよう。ただしだ、勝ったチーム全員に百億をくれてやるわけじゃないぞ? 人狼が一匹だった場合、一日目に追放されたら八百億も負担しなければならなくなるからな。当然、賞金は生き残った者たちで山分けだ。そこは譲れない」


 どうやら文句はないようだ。


「賞金か、支払方法は公営ギャンブルや株券などで購入先を指定しよう。言う事さえ聞けば百億キッチリ支払ってやろうじゃないか。まぁ、刑務所に入るような真似をしたら、後は知らんがな」


 お金の話でも、騎士は目の色を変えることはなかった。


「ハハッ、物分かりが良くてよろしい」


 素直なのは拉致されて監禁されたわけではなく、所詮は自分の足でノコノコとやって来た者たちだからだ。それは騎士も同じだが、何を考えているのかまでは不明だった。


「それでは早速ルールを説明しよう。ゲームは至ってシンプルだ。九人で人狼ゲームをして実際に殺し合ってもらうだけだからな。終了後に殺人罪に問われることもないので、安心してゲームを楽しんで頂きたい」


 淀みなく説明しているので、話を遮る者はいないようだ。


「言い忘れていたが、お前ら、人狼ゲームについてはちゃんと調べてきただろうな? いや、調べたといってもローカル・ルールが存在するから、認識が統一されていない可能性もあるな」


 そこで狼男が思案するが、誰かと話し合っている感じではなかった。


「よし、ルールそのものも諸君らに任せようではないか。『人狼』を何人にするのか、また、『占い師』や『騎士』の他に『裏切り者』や『霊媒師』を加えるかどうか、それを全員で話し合ってもらいたい」


 そこだけ騎士は熱心に耳を傾けている感じであった。


「本番は明日にするとして、今日は練習として何試合かテストするとしよう。どのようにルール決めるのか、それも含めて楽しませてもらおうじゃないか。それでは早速だが、全員の顔合わせをするとしよう」


 こうしてリアル人狼ゲームが始まったのだった。

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