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6 場所

 その日、占い師はニタニタしていた。それはインターネットの特定班が、世間を騒がせている問題の加害者として全く関係のない人物を晒して、それをネット民がアホみたいに拡散しているからだ。


(ざまっ)


 正義のつもりでやったことが、実は犯罪行為で、それがあまりにも滑稽だから痛快な気分になっているというわけだ。


 事件ですらない問題に勝手に首を突っ込んで罪を犯すのだから、当事者たちよりもよっぽど性質が悪い。


(自分は悪くない)


 当事者といっても、それすら占い師にとっては自分とは関係のないことだと考えていた。むしろ迷惑を被った被害者だと思っているくらいであった。


 問題を事件にしたのはマスコミだが、それも全ては被害者面で取材を受けた親がネタにしたのが悪い。


(自分は何も悪くない)


 知りもせずに、見てきたかのように勝手にペラペラと喋って、一方的に悪い印象を持たせようとした。それが占い師には許せなかった。


 全て相手が望んでやったことだった。もしも全部の会話が録音されていたら相手の方が悪いと分かるのに、それを証明できなくて歯痒い思いをしていた。


(自分は絶対に悪くない)


 だからゲームマスターの狼男にも反抗的な態度を見せたのだった。死んだ友達の名前を使って脅迫したのが許せなかったからだ。


 といっても最初は迷惑系動画の配信者によるイタズラだと思ったので、懲らしめるつもりで対応したのだが。


(自分は悪くない)


 第一、警察が動かなかった。誰も捕まっていないし、事情聴取を受けた者すらいない。それを事件と呼ぶには無理があった。


 それにも拘らずゲームに参加しようと思ったのは、単純にお金が欲しかったからであった。百億は嘘だと思ったけど、動画配信者ならば百万円くらいは貰えると思ったからだ。


(自分は犯罪者じゃない)


 だから、なんとなく勝てると思ったのだった。結局のところ死にたい人が死んで、生きたい人が生き残ったからだ。根拠はそれだけであった。


 場所は同じ道内の胆振いぶり地方。登別温泉や洞爺湖があるのは知っているけど、一度も訪れたことのない場所であった。


(ゲームをするだけ)


 そうは思っていても、遺書を残すのが決まりなので仕方なく書き残すのだった。それよりも問題は家を留守にする理由だった。


 結局、引っ越した友達に会いに行くということで家族を納得させることに成功したのだった。ちょうど街が騒がしかったのが幸いし、それで家人も理解を示したというわけだ。


(百万円で何を買おうかな?)


 苫小牧駅に降り立った時には、そのことばかり考えていたのだった。

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