31 強盗及び経営者殺害事件
五十五歳の中村幸雄(仮名)は気さくで朗らかな性格をしており、地域で有名な「店長さん」として愛されていた。
地場スーパーを経営しており、地域密着型で成功しているとして、定期的に取材を受けるほどのお店であった。
大型スーパーの出店によって最盛期よりも売り上げが落ちたものの、同時期に住民も増加したことで共存が可能となり、以降は安定した経営が続いたのだった。
一年に一回、本当に少額ではあるが、長期のアルバイトにも特別手当を手渡しするような、そんな従業員にとっても頼りになる経営者だった。
「みんなのおかげだから」
それが店長の口癖だったが、繁忙期に寝泊まりしている倉庫二階の仮眠部屋で死んでいるのが発見されたのだった。
店舗事務所は荒らされておらず、売上金は無事であったが、いつも店長が持ち歩いている手持ち金庫がなくなっているのが確認された。
他にも仮眠部屋に隠してあった予備のお金もなくなっているため、内部の犯行が疑われたが、犯人は見つからなかった。
その後は親族が経営を引き継いだが、従業員が犯行に関与しているという噂が一人歩きして、結局は閉店に追い込まれたのであった。