29 詐欺及び老女殺害事件
七十五歳の山本和江(仮名)は子宝に恵まれて、闘病生活がありながらも、幸せな余生を過ごしていた。
子育てに追われた生活は大変であったが、三人の子供を全員大学に進学させることができたので、人生に満足していたのだった。
夫は杖を必要とする身体で、夫婦二人での生活を心配されていたが、末っ子家族が近所に住んでいるので、住み慣れた家で暮らすことを続けたのであった。
たくさんの孫にも恵まれて、成長を見守るのを楽しみにしていたのだが、特殊詐欺被害に遭ってしまったのだった。
「ババが力になるからね」
子供たちからは詐欺被害に遭わないようにと忠告を受けていて、本人も大丈夫と言っていたのだが、孫の声を判別できずに詐欺に遭ったのだった。
警察と弁護士を装った詐欺グループを信じ込んで、現金を騙し取られる最中に、心臓発作を起こして亡くなった。
これだけ広く特殊詐欺が認識されていても、被害が後を絶たないというのが現実だ。手口も巧妙化しており、最近はコンビニで電子マネーカードを購入させる手口が大流行している。
反社会的グループの資金源でもあるので、自分を守るのではなく、戦う意識で最新の情報を周囲と共有しなければならないのである。