25 二日目 夜の襲撃
追放会議で二人のプレイヤーが処刑されたので、共に『人狼』だった場合は、残り七人で市民チームの完勝となる。
しかし九人制では『人狼』の凡ミスでもない限り滅多に起こることはなく、今回のリアル人狼ゲームでも奇跡は起こらないのであった。
「邪魔するぜ」
襲撃は丑三つ時に突然やってきた。
「やっぱりか」
ゲームマスターの白狼男が訪れたのは、マジメの監禁部屋だった。バスローブに着替えてベッドで本を読んでいたのだが、驚いた様子がないのは、ある程度は予想していたからなのかもしれない。
「リーダーが『人狼』だったわけか」
「それはもう、お前さんには関係のないことだ」
そこでマジメが虚空を見つめる。
「いや、リーダーのわけないか、リスクでしかないもんな」
死を目前にしても、ゲームの結果が気になるようである。
「じゃあ、誰だ?」
そこで獣の唸り声に気がついた。
「それは勘弁してくれ、それはないだろう」
いつの間にか、黒狼男が狼の群れを引き連れて入室していたのだった。
「お前のために本物の狼を用意してやったぞ」
サービスしたかのような口ぶりであった。
「頼む、普通に死なせてくれ」
白狼男が納得していない。
「人狼ゲームでは、これが普通じゃないのか?」
「なぁ」
そこで黒狼男が狼の群れに命じる。
「さぁ、食事の時間だ!」
号令と共に一斉に飛び掛かり、血まみれになりながらも、我先にと肉を引きちぎりながら貪り食らうのであった。
「やっぱり本物は違うな」
「迫力あるよな」
こうしてマジメは狼に食べられたのだった。
* * *
人狼チームの襲撃を受けたということは、この夜、『騎士』は味方を守ることができなかったということになる。ただし既に追放されている可能性があるため、『騎士』が存命しているかどうかは不明だ。
同様に『占い師』も確たる証拠がないため、存命しているかは不明である。もしも生き残っているならば、二人目を占っていることだろう。
現時点では『人狼』の人数も断定することはできない。しかし襲撃が行われたので、少なくとも一人いるのは確実だ。
残り六人となったが、そのことは『人狼』や『騎士』や『占い師』ですら分かっていない。結果を知るのは、翌日の会議で顔を合わせた時である。